『読解民事訴訟法』 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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資格試験予備校アガルートアカデミーで司法試験・予備試験の講師をしている工藤北斗のブログです。司法試験・予備試験・法科大学院入試に関する情報を発信しています。時々弁理士試験・行政書士試験についても書いています。

読解民事訴訟法』(勅使河原和彦)

☆司法試験向き度→4/5点
☆予備試験向き度→3/5点
☆法科入試向き度→3/5点

民事訴訟法の重要テーマについて,解説した参考書。
受験生がつまづきがちな点や一般的な基本書であまり説明されていない点について重点的に解説をしている。
近時はこのようなコンセプトの書籍が増えてきており,受験生としては大きな学習の手助けになるのではないだろうか。他の科目の同様のコンセプトのものとして,例えば,『憲法論点教室』(曽我部真裕ほか編)『刑事訴訟法入門』(緑大輔)がある。

著者の大学や法科大学院での講義録のような叙述のテイストが採られており,はしがきにも書かれているが,授業で行った板書のような図表が多く用いられている。

難易度的には,一通り民事訴訟法を学習し終わった中級者以上向け。
例えば,Unit3で解説されている裁判上の自白の効力については,不要証効と拘束力が持ちだされるが,179条に書かれているのは前者のみである。
そうすると,当然後者との関係が問題となる。しかし,この点については,意外なほど一般的な基本書に書かれていないので,疑問に思っている受験生も多いことだろう。
もっとも,このような疑問はある程度学習が進んだ受験生が抱くものである。

雰囲気としては,『民事訴訟法重要問題とその解法』(杉山悦子)に近い。
ただ,同書が学説の議論を中心としているのに対し,本書はより原理的な部分での解説が多い(分野によっては学説の説明が多い箇所もあるが)。

惜しむらくは,具体的な事例が乏しいこと。
上記の自白の効力の関係について,2通りの説明の仕方がある(不要証効→拘束力,拘束力→不要証効)とされている(47頁以下)が,その2通りの説明の仕方によって具体的にどのような事例でどのような違いが出るのか,という点まで説明してほしかった。受験生の目線から見れば,具体的な事例・問題で問われた時にどのように答えればいいのか,という点が中心的な興味なのだから,「学生から受ける頻出質問」に対する「回答」(はしがき1頁)集をコンセプトとする本書では,ぜひカバーしておいてほしいと思う。