『民事訴訟法講義-理論と演習-』 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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民事訴訟法講義-理論と演習-」(稲葉一人)

☆司法試験向き度→3/5点
☆予備試験向き度→2/5点
☆法科入試向き度→2/5点

元裁判官による教科書+演習書。

教科書としての特徴は,コアカリキュラムに準拠しているという点。コアカリキュラムを基礎・中級・上級に分類して,関連事項を解説するというスタイルを採っている。なお,コアカリキュラムに掲載されていない事項も+αとして記載されている。

演習書としての特徴は,3つのレベルのエクササイズを織り込んでいるという点。
知識力エクササイズでは,司法試験の短答式試験過去問を用いている。解説は1記述につき1~2行と非常にコンパクトにまとめられているため,予備校の過去問集のような詳細なものではない。
構成力エクササイズでは,主に旧司法試験で出題された一行問題が掲載されている。これについては,出題趣旨のみが掲載されているもの,簡単なコメントが付されているもの,参考答案まで付されているものがあり,統一されていない。
分析力・適用力エクササイズでは,主に旧司法試験及び司法試験で出題された事例問題が掲載されている。これについても,やはり解説・解答のスタイルが統一されていない。

コアカリキュラムをベースに必要な知識を解説し,司法試験過去問を中心にアウトプットをするというコンセプトは非常に良いと思う。
残念なのは,構成力エクササイズ以降の解説・解答のスタイルが統一されていないという点。本書は初学者向けの入門書ではなく,法科大学院生などを主要な読者層としているのだから,せめて司法試験過去問については,全問解説・解答例を付してほしかった。

旧司法試験の解説書としては「解析民事訴訟(第2版)」(藤田広美),新司法試験の解説書としては「司法試験論文過去問LIVE解説講義本」(和田吉弘)があるので,こちらをオススメする。

なお,上田徹一郎先生のお弟子さんらしく,「民事訴訟法(第7版)」(上田徹一郎)の引用が多い。