帰る電車の中で私は・・・なんとなく自己嫌悪だった。


別の男に踏み込んでしまった・・・という気持ちが先にあったから。


自分が今まで閉ざしていた大きな扉を開けてしまったような気がした。


もちろん、私は結婚してから夫ひとすじだったし・・・


他の男性と出会うつもりもなかったし、「結婚してる」っていうことを


あっけらかんと言う性格なので周りもそういう目で見てこなかった、っていうのがあったから。


でも、今回彼とこんな風に始まってしまった・・・


しかも、東京に住む人をすきになってしまうなんて、考えてもいなかったし・・・


私は寂しがりやだから、特に遠距離恋愛は出来ないタイプなのに・・・


今までの自分の「当たりまえ」が彼と出逢ったことで正反対に崩されてしまった。


でも、きっと男の人ってその場その場の雰囲気に流されて、ちょっといい気持ちになってるだけ。


既婚者だし、ちょうど東京に来るって言ってるし、都合のいい距離の女なんだろうな、って


いろんな理由をつけては自分に言い訳してた。


ハマらない、好きにならない、遊びで構わない。


次に東京へ行って抱かれて終わりになるだろう・・・。


私はそう自分に言い聞かせてた。



彼の言葉に驚くと同時に、お互いの背景を考えると罪悪感もあったけど・・・・


でも、その時にはもう彼のことしか見えなかったし、時間が止まって欲しいと本当に思った。


待ち合わせには「仕事が遅くなってる」っていう言い訳の電話してから


もう既に1時間以上経ってて・・・


それでもまだ彼は私を抱きしめたままだった。


「そろそろ・・・待たせるの悪いから・・・行ってあげて。」


「・・・うん・・・」


「・・・来週、私、行くから・・・」


「・・・そうだよな・・・でも・・俺・・待てないな・・・」


私だって本当に今すぐにでも・・・って思うくらいだった。


抱きしめて居て欲しい気持ちを振り切って、彼を友人との待ち合わせの沿線まで


見送ると・・・


「来週、ホントに逢いたいから。」


と、彼は真剣な表情で私に伝えてくれた。


「うん、ありがと。私も楽しみにしてるから。」


と名残惜しい気持ちのまま、何度も振り返りながら、別れた。


でも私はまだ彼のこと半信半疑だった。


好きって言ってくれたけど・・・でもきっと東京に戻ったら冷静な気持ちになるはず。


気の迷いだった、って、今度逢うとしても遊びになる、っていう思いがあった。


その程度でも私は女として見てくれた彼のこと、忘れられなかった。


帰る電車の中でも、彼は即メールをくれた。


「ナナ、って呼べるように何回も言ってみるよ。今日は本当にうれしかった。


明日帰るのがすごくつらいよ。こっちにずっと居たいし、


今日も友達と約束しなければよかったよ。本当に楽しかったし


来週、楽しみに待ってるから。


俺、こんな想い・・・したことないよ。」


それって不倫が初めてって言ってるだけ?それとも別の気持ちなの?


私は自分に言い訳をしつつも、東京行きで抱かれることを考えてしまってた・・・


シャッターの裏の非常階段はもちろん、誰も居ない。


10階から少しずつ降りていくと・・・彼から手を繋いできた・・・


そして・・・抱きしめてくれた・・・


・・・初めて私たちは唇を合わせた。


全身に電気が走ったような感触。こんなドキドキした気持ち、忘れてた・・・


彼はキスを何回も何回もしてくれて・・・


舌を絡めながら・・・熱くなっていった・・・


そして、背中に回した彼の手は・・・腰から・・・胸に回ってこようとした・・・


「・・・ん・・・ちょ・・待って」


「・・・ん?」


「・・・時間・・・もう相手・・・待ってるよ・・・」


「・・・ん・・・」


「・・・続きは・・今度ね・・・」


「・・・ん・・俺、ちゃんと・・・こういう時にはナルんだな・・・」


「??」


「・・・久々だから・・・ちゃんとナルかな・・・って思ったけど・・・

やっぱりこういう時には反応するんだな・・・」


あ、そういう意味か。


「私だって・・・久々だから・・・ドキドキするよ・・・」


それは、本当。


「・・・次は俺、我慢しないよ・・・」


彼は2年くらいシテいない=レスカップルだったみたい。


もちろん私もそこまでレスにはなっていないけど、昔ほどの頻繁さは夫ともない。


彼のソレはちゃんと反応してたから、私はすごく嬉しかったし、ドキドキした。