仕事の打ち合わせ中にでも、私は彼のMSGが気になって集中できなかった。


なんで?今日なの?


急に出張なんて、ありえることなの?


さっき「出張入らないかな・・・」なんてメールをくれてたばかりなのに、なんで?


私は昼からの急展開に頭が付いていっていなかった。


夜までかかる、という彼だけど恐らく上司と一緒だということだから


食事に行ってからその後チェックインだとすると、夜遅い時間だろう・・・


そのあたりの時間で逢えるのかな・・・


しかも、今日は夫が逆に出張中。家には居ない。


彼は私の気持ちも分かっているはず・・・


「抱きたい・・・」という言葉をストレートに言う彼だから


きっと今夜会うことになれば、東京で会う前に繋がってしまうことになるだろう・・・


迷いと裏切りの気持ちの狭間で、私は決断した。


「仕事が終わったら、チェックインの時間に合わせてホテルに向かうよ。車で行くから。」


メールでそう返したあと、私はもう彼と逢う時間を逆算し始めていた。


彼はその日から毎日、頻繁にメールを送ってくれていた。


「ホテルに泊まってるときもナナのことが頭から離れなかった」


「今までと違う想いだから、どうしたらいいか分からない」


「東京で逢うまで待てない」


「早くナナを抱きたいよ・・・」


なんて、メールでストレートに想いを伝えてくる彼に最初は少し戸惑っていた。


きっとここでの出会いで盛り上がっているだけなんだろう・・・


私はあの日よりも少し冷静になって、彼のメールを読んでいた。


でも彼は奥さんのことは全く話さないし、もちろん子供のことも話に上がらない。


きっと東京に戻って、いつもの環境に戻ったら私への気持ちも冷めるだろう・・・


私はそういう気持ちの中、彼は東京へ戻っていった。


彼はただそういう遊び相手が欲しかっただけなんじゃないの?


でも・・・


「今までこんな気持ちになったことがない」


っていうのはどういう意味なんだろう・・・


私にすれば、こんなドキドキしてメールの一言一言が嬉しくて逢いたくなって


高校生のような思いだったけど、こういうことを言ってるのかな。


そういう気持ちのことを言ってるんじゃないのかな・・・


メールで彼が私のことを


「特別だから」


と言ってくれるたびに自分を認めてくれているような錯覚を感じてた。


私の東京での仕事の段取りは徐々に決まっていって、


もちろん当日、彼と逢う時間も予定のひとつになっていた。


そして、彼と逢う日を心の中でカウントダウンしはじめていた。


そんなメールのやり取りが続いたあの日から4日後・・・


昼間の休憩時間に少しメールのやり取り。


「ネイルに行って仕事の打ち合わせに行ってくるね」


「今日は比較的時間があって、ナナのことをずっと考えてしまうよ・・・


また出張、入らないかな・・・逢いたいよ・・・」


というMSG。


その間に私はいつも通っているネイルサロンでケアをしてもらっていた。


そして、ケアが終わったあと、何気なくいつもどおりにメールを見ると・・・


「今、上司と関西に向かってる。急きょトラブルが出てしまって、夜までかかると思う。


詳しいことはまだ分からないけど泊まりで行く予定だから、詳細はまたメール入れるよ。」


私は驚いて、彼とこれほど引き寄せられる理由に戸惑っていた・・・


その日は、偶然夫が出張に行ってる日だったから・・・


私は今32歳。


既婚。


結婚して3年。


子供はいない。


接客業の中で特に美を求められる職業をしていたせいか


他人から見られることに意識は高い。


だから今でも人の前に立つ仕事をしていても全く動じない。


彼はそんな外見だけを見てるのかな、と思うこともあった。


けど、逆に彼は


「そういう華やかな業界の女の子は苦手だった」


と言う。


見た目で惹かれたわけじゃない、と彼は言っていた。


でも明らかに周りにいる32歳の主婦とは比べられたくないし、同じとは思って欲しくない。


外見の努力だけでなく中身もちゃんと磨くための勉強も続けている。


生徒に教える立場に居る私。


でも、二人きりになるとダメな私。


彼はそんな両方がすきだと言ってくれる。


そして、そのギャップがすきとも。


すきになってくれたきっかけは仕事の時の私だけど、


二人きりの時に彼に甘えっぱなしの私も認めてくれる。


私は、そんな彼から離れられなくなっていた。