発問のある発言 | 名無しの唄

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政治への関心度高いのは「自衛隊の役割」「消費増税」
民主党が開設している特設サイト「みんなの気になる政治のコト10」では、今回の選挙における争点を提示し..........≪続きを読む≫ 会話において、質問形式の発言を含めつつ進めることには、一定の意味がある。
発言というのはそれをする側一人の中で精製されるものであって、それを受け取る側が同一の発想をするとは限らない。
人間の思考の傾向や速度も千差万別であることを考えるならば、一方が一方的に発言した結果として、会話として情報を共有することに障害が生まれるということは想像に難くない。
発問とは、相手の発言を促すことである。あるいは言い換えると、会話の主導権を一時相手に明け渡す、ということでもある。
その効果としては、発言者の中で精製された発言の流れなどに対して、聴者の側の意識や思考を適応させていくというものがある。
あるいは気持ちとしても、聴者が一方的に聞くばかりである状態と、聴者自身も自分が考えを紡いでいるという実感を持っている状態では、情報共有のしやすさが大きく違う。
ゆえに、会話や発言において、発問を織り交ぜることは、非常に有効な技術なのだ。

しかし一方、そこには一定のまやかしが存在しうる。
発言の中の発問は、聴者の意識を発言に追いつかせる効果を持つが、それは必ずしも聴者が本来抱く全ての障壁を乗り越えているということではない。
即ち、発問が挟まることによって、聴者はあたかも発言者と同じ思考段階に至ったかのような錯覚を覚えるが、その実、その発問内容の以前の段階における理解の障壁が無視されていることから目を背けさせられるということが起こるのである。

さて、上のニュース記事から「発問」を使った発言の技術の一例を見る。

1位:自衛隊は海外で戦争できるようになるの?(集団的自衛権。自衛隊の役割。)
2位:増税で経済はどう変わるの?(消費税再引き上げ・使い道)
3位:いつになったらなくなるの? 税金の無駄使い。(税金の無駄使い削減)
4位:私たちの老後って、どうなるんだろう。(年金制度改革)
5位:原発は本当に必要なの?(原発再稼働・エネルギー政策)
6位:医療・介護・年金、ちゃんと維持できる社会になるの?(社会保障制度の改革)
7位:国会改革、本当にできるの?(定数削減・一票格差・国会改革)
8位:近隣諸国となぜ仲が悪くなってしまったの?(アジア諸国との関係)
9位:なぜ生まれるの?都会と地方の格差。(人口減少社会・地方創生)
10位:株価が上がってもお給料は上がらないの?(株価重視の姿勢)

発問形式の文章が並べられることにより、聴衆が主体的に発言者の思考をくみ取っていく効果がありそうだ。
一方で、内容に対する発問に、その発問以前の段階として疑問されねばならない論点が存在しつつも、それを過ぎた段階を発問としていることによって、あたかもその疑問が存在しないかのような感触がある。
両論あるはずの問題が一方を解答として前提化されていて、聴衆がそこに目を向けることができないような発問が並べられている、とも言い換えられる。
これが、発問という会話技術の表裏だ。