一般相対論におけるアインシュタイン方程式というのは
Rμν - 1/2 R gμν = 8πG/c4 Tμν
という方程式のことです。左辺が時空の曲がり具合を、右辺が物質の分布を表した
テンソルになっており、これを解くことでブラックホールが予言されたり宇宙論に
つながったりしたわけです。
この式をまともに理解しようと思うと「リーマン幾何学」というものが必要になる
ので素人にはとっつきづらいものです。この本は、著者の深川氏が「ちゃんと理解
したい!」と一念発起して
・ローレンツ変換と一般座標変換
・リーマン曲率テンソル
・測地線方程式
といった高度な概念を6年かけて理解していった取り組みをまとめたものになって
います。一応マンツーマンで教えてくれる先生はいたようですが、細かいところは
手取り足取り教えてくれるわけではないのでスゴイことです。もともと文系向けの
科学ライターで物理の下地は多少あったのと完全にすべて理解できたわけではない
のを差し引いても、50 歳を超えて挑戦しようと思うことがスゴイでしょう。
半分くらいまででやっとローレンツ変換なのでちょっとバランスが悪い気がします
が、テンソルという概念になじみのない人にとってはそういうものかも知れません。
個人的には共変微分、クリストッフェル記号あたりをもう少し丁寧に書いてほしい
ところでしたが、普通の教科書よりわかりやすくてよかった気がします。
アインシュタイン方程式の解の話 (シュバルツシルト解などは) はこの本の対象で
ないのでそういうのを期待する人には合わないかもしれませんが、数式をちゃんと
理解したい人にとってはおススメです。著者が詰まったところもごまかさず書いて
あるので、追体験する人には有用な情報でしょう。