「火の鳥」は手塚治虫の代表作としてよく知られています。ただ手塚氏は単行本化
するときにかなり手を入れる人なので、
・角川書店角川文庫 全12巻
・復刊ドットコム復刻大全集 全11巻
・講談社手塚治虫文庫全集 全11巻
といった感じでいろいろな出版社から出されている全集自体にも微妙に差があると
いう状況になっています。
復刊ドットコム版は連載時のを復刻したものらしいので大元に一番近いでしょう。
講談社版は角川版と比べると結構削られているようですが、一番手に入れやすいと
思います。ということで今回は講談社版を読んでみることにしました。
10巻11巻は太陽編。仏教が入ってきたころの古代日本と、地上は光教という
宗教に支配され抵抗するものは地下に落とされて生活している未来地球とを対比
させながら進んでいく物語です。9巻までとはなんか絵柄が違う印象です。
鳳凰編も「宗教と政治」の結びつきの醜さを描いていましたが、太陽編はさらに
直接的に描いています。いかに仏教がいいものだとしても、押し付けられる方に
とっては有難迷惑でしかない。犬上はそれを命を懸けて訴えます。
王を継いだ甥の大友皇子も、乗り気ではないのに「政治のためには仕方ない」と
分かっているところがまたツライ。そして未来地球で光教を壊滅させた猿田が、
壊滅させた後の世界をまとめるため「不滅教」を立ち上げると言っているとこも
人間の愚かさを象徴しているようです。逆にいえば、これらの描写がなかったら
正直駄作かなと思うくらいでした。
個人的な評価は5段階中の2。まあまあ面白い。