とにかくライフラインの確保は出来たので

それに関しては本当に良かった。



だけどアレから、

何となくガラスの向こう側を見るのが気恥ずかしくて、

ボーっとキッチンを眺める事を躊躇してしまう自分がいた。






しいて言うならば、まだまだ青い学生時代の頃




『アイツ、オマエの事好きらしいぜーにひひ』とか、

『オマエ、アイツの事好きなんだろうにひひ』などと、

ガキ大将のような男子に言われた時のように。

はたまた、アイアイ傘とか黒板に描かれた時のような。。。




今まで意識すらした事なかった人を、

それを機に気になり始めてみたりするあの感覚。




しかも、自分だけじゃなく

言われている相手まで意識し始めるので、

廊下ですれ違って、2人の目でも合おうもんならば !

恥ずかしすぎて、ほっぺを真っ赤にして目をそらす。。。恋の矢




とかね(笑)

あぁ 懐かしいなぁー







こんな可愛い感覚はしばし忘れていたが、

ガラスの向こう側を意識しているワタシがいた。

でも、ドキドキというより、ワクワクに近い感覚だ。

相変わらず、恋愛感情は相変わらず全くない。

あの頃と違って今は冷静。





料理が運ばれてくるまで、

「もしワタシがカンボジア人恋愛したらの巻」を、

勝手に妄想している余裕すらあった。




例えばこんな感じで。。。

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デート

ココナツの実を頑張って割って

「生ぬるいね♪」と言いながら

飲んでいるワタシ。。。




暮らし

バナナの葉っぱのお皿を

「洗わなくて捨てるだけだから楽チン」と

言っているワタシ。。。




お洋服

パレオのような薄い布を一枚を

身体に巻いているワタシ

もちろんノーブラなワタシ。。。






。。。やっぱ

ないわっー(;´∀`)/ ゛





その頃はこうやって、カンボジア人との恋愛を

勝手なイメージで適当に考えているぐらいだった。



というか、「ワタシ、ワタシ」と自分の事しか考えていない段階で

そこに愛は無い。ワタシワタシしか考えない女だと知ったら

相手の方から願い下げだろう。

まぁ、それでもいい。

その頃は本当にそのぐらいにしか思っていなかった。







ちなみに、昔からこうやって勝手に妄想するのが好きだった。

事あるごとに妄想の中で恋愛をしてみて

何気に良かったらそれから気になるということもあった。

もしかしたら私だけではなく

女子ならば誰もが一度はしているんじゃないかな。



色々な事をイメージしてみて

現実に起こりうる予防線を張りつつ、

プラスに運ぶように動く。それが女子なんだと思う。

賢い女子はそれでいい。

それがいい。







とにかく、恋愛感情は全くなかったし

妄想しても、『えぇーっ!ナイナイ('_')』

という感情しか湧いてこなかった。










とにかく食事が出来る場所を確保出来た事で、

かなり生きる勇気が湧いてきた。


朝は相変わらずコーヒーで済ませ、

毎日3時頃に昼・夜の栄養を摂取しに店に出向く。


最初はバイチャーばかり食べていたが、

徐々にレパートリーも増えて、

最終的には殆どの料理をマスターしていた。


ここはカンボジア料理屋なので、

イコールカンボジアフードを色々食す毎に、

カンボジアの色々な事が少しずつだが受け入れられるように

なっていった気がしていた。



ちなみに、昼・夜の栄養を摂取するので、

注文の量がいつも半端なかった。


前菜、野菜、肉料理、スープ、ごはん+スイカシェーク 音譜

慣れてきたら白飯も気にせず食べられるようになった。

毎日フルコースだ。

たまに肉料理を2品注文する事もあった。



これだけ毎日来る日本人は私しかいない。

そして、注文する量も半端ない。

お店のスタッフからは、下の名前で呼ばれるようになった。

挙句の果てには、スタッフ用のテーブルで

一緒に食べるようにまでなっていった。


ちなみに、スタッフ用のテーブルに招かれたと言っても

花もなければ、コースターも置いてない。

ただ片づけがされていない隅っこのテーブルなだけで、

人を招くようなテーブルではまずない。



しかし、たまにスタッフがまかないで食べている

オーガナイズされていない、本当の現地フードや、

スタッフが外で買ってきた果物などを

一緒に食べる特典はついてくる。

そんな楽しみ方も出来るようになっていた合格




ちょっと前までは、生きるか死ぬかぐらいの気持ちだったのに

色々なモノが受け入れられるようになってきて、

気持ちにも余裕が少しだけど出てきた気がする。



カンボジアで頑張っていけそうだねっ!

。。。頑張れワタシべーっだ!ラブラブ





なんて。

自分のハートとヒッソリ対話をしながら、

ガラス越しにチラチラキッチンを見ては

オーダーしたフードを待つ日々が続いた。







その日もぼんやりとキッチン眺めて栄養を待っていた。

そんな時に黄色い「ヒューヒュー」的な声がした。

そして、『Do You Like Chef にひひ?』と、ちょっと恥ずかしそうに、

サービスの女子スタッフがニコニコしながら私に聞いてきた。



てか、、、








。。。。えっーΣ(゚Д゚) !?





一瞬自分の耳を疑った。


だって。


日本と違う環境で、

食べれるものもなく、

エラ呼吸しながら

毎日泣いて暮らして、

やっと栄養を摂取出来る場所を確保し、

これから何とかカンボジアでもやっていけるかも。と、

自分のハートと対話する事で精一杯だったにも関わらず

周りからは・・・・




毎日キッチンをチッェクしている

単なるシェフ好きな

日本人の女だと思われていた!?

。。。OMG !!! 叫び叫び叫び




完全なる勘違いにちょっと同様しつつも、

自分の中であり得ない勘違いだったので、

即答で「No!」とキッパリ笑顔で答えた。




サービスの女子スタッフは、私が出した「No」の答えを聞き、

残念そうにキッチンの中に入り「...No」と皆に伝えていた。

それを聞いたキッチンのスタッフ達は「Oh....」と溜息をつき、

ますます残念そうな顔になっているのが見えた。



若干 暗い空気になっているキッチンを

「ちょっと迷惑だなぁ。。。」と思いながら

ガラスの外から眺めるワタシ。





て、ゆーか。
まさかカンボジアで恋愛だなんて!?

望んでもいないし

想像すらしていない事だ。


しかし、こんなくだらない事で、

ライフラインを絶つ訳にはいかない。

何とかしなければ!



私は何も無かったかのように

『えっーと。私は皆と友達ですよー。

楽しくいましょうねー(^◇^;)/~』

と、言わんばかりの、またしてもひきつった笑みで

ガラス越しに手を振ってみた。





ガラスの向こうにいるスタッフは6名。

私は1人。みんな私を見ている。。。


今日は完全に、私がゴリラか何かであっち側が観客だ。


ただただ、食料が欲しいが為に芸をしている、

そんな食欲旺盛な日本産のゴリラに観客達は、

「ゴリラちゃんが手を振ってるー♪」みたいな反応をし、

キラキラした瞳と満面の笑みで手を振り返してくれた。





良かった。。。

ゴリラちゃんの頭のなかはただ一つ。



明日も食べに来れる。』




その事だけを考えて店を出た。


日本にいる時はそれなりに頑張っていた。

仕事もバリバリとはいかないが、出来る範囲でやってきた。

我慢も含め、どこにいても大抵の事はこなせると思っていた、、、


しかし、カンボジアで暮らして2ヶ月。

拒否反応が起き始めた。


とにか、見るもの全てを受け入れられなくなっていた。

あれだけ食べる事が大好きだったのに

カップラーメンとコーヒー以外は口に出来なくなっていた。

それも半信半疑な、やるせない気持ちで食べていた。


ちなみに、私の住んでいる街はカンボジアと言っても

アンコールワットで有名なシェムリアップだ。

なので、今となっては

お洒落なお店は沢山あるし、味だって普通に美味しいと思う。



でも、住んでからの2ヶ月間は、とにかく東京暮らしとのギャップと、

頭の中で、更に色々な事を複雑に考えすぎてしまっているので、

食べたいモノも、食べたいという事すらも忘れかけていた。



生きるために何か食べなきゃ、、、


その気持ちだけで1日1回食事を口に運んでいた。

しかし、そんな気持ちでいるので、どんなお店で食べても、

直ぐにお腹が痛くなり、トイレに駆け込む始末ガーン




言葉も、環境も、空気も全てが違う。

でも、自分で決めて、自分でここまで来た。

文化や生活習慣の違いを責めているわけじゃない。

責めるのは自分自身。

わかっている。

大丈夫。わかっているなら乗り越えられる!

そうやって自分自身を応援してみたりもした。

。。。でも 辛かった。

考えれば考えるほど暗くなり、泣いていた。



しかし、複雑な頭の中とは打って変わって、

ラーメンとコーヒーが長く続くと

身体がちゃんとした栄養を欲してくる。

その日はもう身体のいう事を聞かなきゃ

倒れるかもしれないレベルだったので

仕方なく近くにあるクメール料理屋に入った。



白いお米はあるけれど、美味しく感じられない。

なので、味がついていたら何とか食べれるかもと

バイチャーを頼んだ。

バイチャーとは日本の焼き飯と同じ感じの食べ物だ。



ちなみに、私が入ったこの店は無駄にオープンキッチンだった。

見たくないけど、料理が出てくるまで

ガラス張りのキッチンの中をチラチラ見ていた。

青山や白金にあるような、

ピッカピカに磨かれた鍋なんてもちろんない。


ガラスの向こう側では、

そんなにパラパラにしなくてもいいのにってぐらい、

炎を上げながら私のバイチャーが空を舞っている。

一応バイチャーはちゃんと作ってくれてるようだ。


でもその手前で、見習いシェフがハエを追っ払っている。

そして更にその手前で、女の子シェフがマンゴーを花のようにさばいている。

そしてチラチラ見ている私に「凄いでしょ!」と自慢げな顔で

切ったマンゴーを見せきた。


そんな姿を見て「手洗ったかな。。。」とぼんやり考えている私。

でも、それを察すられるのは嫌なので、

「すごい、すごいよ。」という笑顔をしながら首を縦に振った。

きっと笑顔はひきつっていただろう。

ここらへんが日本人だなーと我ながら思う。



全く関係ないが、マジックのセロはご存知だろうか。

彼の業はあくまでも「マジック」なので、必ず仕掛けがある。


でも日本人は特にその仕掛けを考えすぎて

「どうやってこうなるの?」とか「本当に??」などと

素直に驚けない傾向にあるらしい。

そんな人にセロはこう言っていた、、、



「Don't Thinking Just Feel !」


しばらくしたらバイチャーが運ばれてきた。

カンボジアに居ながら、セロの言葉に背中を押されて

期待ゼロで口にした。。。。



「考えるな 感じろ!!!」



ぱくっ!!!

モグモグモグ、、、、ビックリマーク




。。。あれ!?

美味しい(*'▽')!!!音譜





次の日から、ここが私のライフライン的な場所となり、

1日1食食いだめする生活が始まった。