良書『うらはぐさ風土記』 | 白玉猫のねむねむ日記

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本日の読書感想文




うらはぐさ風土記

​中島京子











あらすじ 

田ノ岡沙希は、大学の教員。52歳。

離婚をきっかけに30年ぶりにアメリカから帰国した。


東京郊外に広がる「うらはぐさ」地区。

(武蔵野がモデル)

その「うらはぐさ」の町に

伯父が所有する空き家(庭つき)があり、

田ノ岡は、そこに住むことになる。




田ノ岡はこの地で友人に恵まれる。


  • 伯父の囲碁仲間で、時々、庭の手入れをしてくれる76歳の秋葉原さんと、奥さんの 刺し子姫。
  • 同じ大学の教員、栗栖(くるりん)と彼氏(さるちゃん)
  • 大学の一年生、かめマサミ(マーシー)と親友の水原鳩(パティ)





良好な人間関係に加え、


  • 庭の実生(みしょう)のもの。
  • 時おり訪れるメジロやエナガ。


潤いのある住環境。




田ノ岡は、この町で暮らす決意をする。





あらすじ (補足) 


「風土記」とタイトルにあるだけあって

(もちろんフィクションではあるが)

作者は「うらはぐさ」の自然や、歴史について、登場人物に語らせ、

町の未来について、考察させている。

 






マーシーには、

女子大の弁論大会の演説という形で


  • 病院や映画館、ファミレス、大規模マンションのあるウラハグサ・サンシティーの広大な土地は、1973年に返還されるまで米軍基地(米軍住宅)だった。
  • それ以前は大根畑で、1943年に飛行場が作られ、ここから特攻隊が出撃していった歴史があった。
  • 戦争の悲しい歴史がある場所なのに、話題にのぼることもなく、忘れられていくことへの違和感。


など、語らせる。








また、秋葉原には

田ノ岡と

金目鯛の煮付けを食しながら

父親の「PTSD戦争神経症」について、

話させている。




父は満月の夜になると、

狼男ように

月に向かって吠えていた。


今になって思うと、あの奇行は

PTSD(心的外傷後ストレス症候群)」だったのではないか?



端正な顔立ちをしていた父親は、

そのせいで上官に目をつけられ

「女々しい」という理由で、

常習的に、私的制裁を加えられていたと思われる・・・ 等々。









そんな秋葉原の話を聞きながら

田ノ岡は

星一徹や寺内貫太郎といった

昭和の乱暴な父親たちも

もしかしたら、

心を病んだ帰還兵だったのではないか?

などと、思いめぐらせる。





これらのことが書かれている

「五章 狼男と冬の庭」を

作者は、栗栖のこんな言葉で締め括っている。





だから、大勢いるんだと思うんですよね


狼男の息子や娘はね






 




こんな人におすすめ 



小説の中に、料理の描写が何度か出てくる。


レシピ例


柿を8等分し、ブルーチーズを散らす。

素焼きの胡桃を砕いて振りまき、

蜂蜜をかける。

ソーテルヌの貴腐ワインと頂くシャンパン






お節の黒豆と、

クリームチーズを混ぜ合わせ

クラッカーに載せて、

赤ワインのおつまみに

赤ワイン







上記のような肴とお酒を楽しみ

庭の実生のものに心躍らせ、小鳥を愛でる。



まさに、スローライフ!

ニコニコ





このような暮らしに憧れている人や、

目指している人に、

実践している人に、

おすすめの一冊赤薔薇





 



こんな人におすすめ2・感想 



 

「うらはぐさ」は実在する植物で

漢字を当てると風知草』


花言葉は「未来」







主人公、田ノ岡に

テンバガー株が当たったり


(結婚記念に買っていた、義理の甥っ子が起業した会社の株が、新興IT大手に買収され、大化けした)



ご都合主義とは言わないけれど


主な登場人物は

理不尽な目に遭ったこともなければ、

嫌がらせをされたこともない、

貧困や差別等とは無縁そうな人ばかり。


皆、聡明で、穏やかで、個性豊か。




それでいて、どの人物も、

薄っぺらくないのだから、凄い!



初めて読む作家だけど、

それがこの作家の才能、持ち味なのだろうか。










ドロドロとした愛憎は存在しない世界だけど

脱力系ではなく、


且つ、


未来志向なのに、飄々とした風合いの

町角群像劇。








サラッとしつつも、しっかりしたものを読みたい人に、おすすめピンク薔薇









以上

m(_ _)m














(自分用メモ 



奇しくも「うらはぐさ風土記」を読んでいたら

曖昧な記憶をはっきりさせることができた。