原子力発電について | 並木正芳オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 福島第一発電所の水素爆発事故による放射能汚染が日本国民ばかりか世界を不安に陥れ、「脱原発」への流れが強まっています。放射性物質を安全に廃棄する方法が確立しておらず、その危険性は言うに及びません。計画的に「脱原発」を進めなければならないと考えますが、ではエネルギー需要が拡大する中で直ぐに原発を停止するかということも難しい問題です。


 そもそも原発問題は、経済問題でもあり、環境問題でもあり、国際的には国家間の格差問題でもあると考えます。


 18 世紀から19世紀の産業革命以降の工業化により人類は飛躍的に発展(?)し、19世紀半ばから今日までに世界の人口は約5倍になりましたが、一次エネルギーの消費は、石油換算で何と90倍にも達しました。


 日本では、少子化による人口減が課題となっていますが、今後もBRIICS(ブリイーイクス=ブラジル・ロシア・インド・インドネシア・中国・南アフリカ)などの新興国、途上国では人口増が予想され、生活向上のためにエネルギー消費も急激に増大することが見込まれます。


 化石エネルギーの枯渇が懸念され、また、CO2などの温室効果ガス排出が地球温暖化にとりますます問題となっており、大きなエネルギーを得られ、CO2などの温室効果ガスを排出しない原発への需要は、途上国、新興国などでは当面拡大すると思われます。

 

 南アフリカのダーバンで開催されたCOP17(気候変動条約締約国会議)でも先進国のみにCO2削減義務を課した「京都会議」の延長が論争になりましたが、発展途上国の主張は、「地球環境問題は、これまでにCO2を排出しながら発展を遂げた先進国に責任があり、途上国に削減を課して発展を妨げるのは公平では無い」というもので、CO2削減問題と同様に、原発に関してもエネルギー需要がひっ迫する新興国などを規制することは困難であり、国際的交渉ではこうした経済的な格差の問題が今後も対立を呼んで行くと考えます。


 しかしながら、放射能汚染を含めた環境問題は、自国にも様々な問題を引き起こすだけで無く、人類共有の宇宙船地球号という財産を傷つけ、そのツケは当然自国にも及び、いやむしろ、途上国にこそ被害が大きいと言えますので、先進国を批判するだけでは足りない決して軽視出来ない問題です。国際的協調の余地はあり、またそう在らねばなりません。


 こうした状況の中で、日本が果たす役割は極めて大きいと私は考えます。


 人類は、イノベーション(技術革新)により様々な窮状を切り抜けて来ました。原発では、放射性廃棄物を処理するそもそもの技術が未開発にもかかわらず、大きなエネルギーを得ることが出来るために、事故を起こさないということに全力を注ぎながら設置を進めて来たという危うさがあります。日本は、この点でも原子炉に対する5重もの安全と徹底したメンテナンスで安全を図る高い技術を有していますが、大津波などの想定外(?)のことが起きて、現状の通り安全神話は崩壊してしまいました。


 しかし放射性廃棄物を処理する技術である常温核融合(核変換)の分野で、日本は世界の最先端にあると私は考えています。福島第一原発の事故の後、多くの人が知るところの「ヨウ素が8日間、セシウムが30年間で半減期」という表現は、言い換えれば、「ヨウ素は8日、セシウムは30年で、その半分が放射性物質で無くなる」ということであり、人工的にその実用化技術が実現すれば放射性廃棄物の心配なしに原子力発電が出来るようになる訳です。

 

 すでに三菱重工の岩村博士が、セシウム⇒プラセオジウム、ストロンチウム⇒モリブデンの核変換の反応システムを確立させたとのことであり、北海道大学の水野博士、大阪大学の荒田博士も常温核融合に成功したことがニュースになりましたが、人工の太陽と呼ばれる核融合発電の実現へと繋がるハードルを一歩ずつ越えて夢に近づく快挙と言えます。   


 フランスに建設する国際熱核融合実験炉(イーター)計画を推進する「イーター国際核融合機構」は、機構長・副機構長とも日本の研究者で、この分野は日本が世界を主導しており、30年以内の実現を目指しています。


 ウランなどの重い原子核が分裂し他の放射性物質などに変わる際に、割れる時に出す熱エネルギーを利用するのが、核分裂を利用した発電ですが、約80種類の物質が生まれると言われています。中には微量ながら亜鉛や銀もできるとのことですが、強い放射性物質も有ります。これが原子炉外に飛び散れば、人体に多大な悪影響を及ぼすので安全な管理が不可欠です。福島第一発電所の事故のように制御出来なくなれば持続的な連鎖反応で暴走することになります。


 核融合発電は、研究課題でもある超高温・高圧のプラズマ状態をつくり出さねばならず、燃料も外から少しずつ供給するので、事故によりこれが機能しなくなれば停止してしまい暴走することはありません。しかも水素のような軽い原子核がくっついてヘリウムになる際の反応エネルギーを利用したり、初期段階では海水中に含まれるトリチウム(3重水素)などを使うので、安くて無尽蔵な資源を利用出来ます。


 この3重水素は放射性物質であり、反応により生じる中性子線が炉材などの装置に放射能を帯びさせますが、核分裂と比べれば低中レベルの放射性物質で管理もし易いと言われます。また将来的には、放射性物質では無い重水素を利用する方法や放射能を帯びない炉材などの研究も進むと考えます。


 日本人ノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士の研究などとも関連するこうした日本の得意とする最先端分野の研究で世界の危機に貢献することも「脱原発」という流れの中で考える必要があるのではないでしょうか。


 当面は、天然ガスを利用した発電への切り換えなどに依存せざるを得ませんが、また同時に、こうした核融合発電や私がかねてから提言して来た自然エネルギーをより効率的に活用した発電技術、更には日本がこの分野でも先端にある、バイブリッド車などのエコカー、LED電球、エコキュートなどの省エネ技術の開発も必要と考えます。


 太陽光発電の変換効率のアップ、蓄電技術の開発、低コスト小電力システムの開発など様々なエネルギーの実用化技術の研究を日本が先頭になって進めるべき時ですが、これについては、別項で書かせていただきます。