あれから10年…



2014年4月23日。



大阪城ホールで長谷川穂積はキコマルチネスに撃ち合いを挑み、そして敗れました。




その三年前。


神戸でジョニーゴンサレスの一発に沈んで以来の世界タイトルマッチとなったこの一戦は、おそらく長谷川最後の世界挑戦になるだろう‥ 


と、私は会場で見届けるべく大阪城ホールへと向かいました。



ボクサーはある時点から歯車がひとつ外れたかの様に、それまで精密で完璧に遂行されていたプログラムに狂いが生じ出します。



無敵を誇っていた男が嘘の様に黒星を重ねる。

ミリ単位でかわしていたパンチを貰う様になり、

ダウン知らずだったのがパタパタと倒れる様になる…



10年前の長谷川はそんなボクサーでした。



あの完璧だった長谷川穂積を観てきた私にとって、

その変遷は受け入れがたいものがありましたが、

ボクサーが必ず通る宿命が遂に長谷川にもやって来た…

これは必ず見届けなければならない。


と勝手な使命感を抱きながら血に染まるリングを見つめていました。



精も根も尽き果ててへたり込む様にリングへ崩れた長谷川を観た時、ひとつの時代が終わりを告げた寂しさを感じて私は呆然としていました。



その時の心境を10年前の私が書いていますが、

まさかその後カムバックし、世界タイトル奪還を果たすとはこの時夢にも思いませんでした。



それほどこの日の長谷川は火の消えた蝋燭の様に見えたのです。



ついこないだの様にも感じられますが、あの日長谷川と入れ替わる様に全盛時代へと突入して行った山中慎介もずいぶん前に引退しているので、やはりむかしなんですよね‥



しかし10年! 10年も経ったのかあー