5.2から数日が過ぎ、はやゴールデンウィークも過ぎようとしている。
いまになってしみじみと思い返すのはメインイベントでなく、井岡一翔の方だ。
井岡は井上拓真の前にダウンを奪われ大差の判定で敗れた。完敗だった。
私はこの井岡敗戦を観て、長い長い日本ボクシングの歴史のなかでこの40年のあいだ牽引して来た井岡家の時代の終焉を見た気がした。
いまから四半世紀以上前になる。
私は一翔の叔父である井岡弘樹が徳山昌守に往年の片鱗も見せぬまま乱打されストップされた試合を大阪府立体育会館の観客席で目撃した。
グリーンツダジムの後輩だった徳山。
その徳山が世界へ駆け上がってゆくきっかけとなった大きな試合だった。
その後の徳山の軌跡を思うと、あれはまさに時代の交代だった。
あの何も出来なかった弘樹と、拓真にいいところなく敗れた一翔が重なって見えたのだ。
思えば晩年の弘樹もまだ貴重だった3階級制覇に執念を燃やし、そして連敗を重ねていた。
飯田覚士へのJr.バンタム級挑戦で惜敗した時、弘樹は燃え尽きていたのだろう。
同じく一翔もまた、フェルナンドマルチネスとの激烈な連戦で燃え尽きていたのだ‥ と私は思う。
それでも一翔はノックアウト敗けを拒絶し、最期まで立ち続けた。
叔父の弘樹もまた、徳山の前に棒立ちになりながらもダウンを拒絶して散った。
私にとって井岡という名は、ボクシングを観始めた時既にキラキラと輝いていた思春期の想い出であり、そして二十代、三十代、四十代、五十代の現在まで常にボクシングの側にある事が当たり前だった特別な存在だった。
井岡の時代がついに終わった。





