上高地は長野県の穂高連峰や焼岳などにかこまれた盆地にある。
そのため車や高速バスでアクセスするのが一般的だ。
今回、家族で上高地に行くにあたって鉄道を利用してみたのでそれについて書いてみたいと思う。
交通手段の比較検討
マイカーやレンタカーで行く場合のメリット・デメリット
メリット
同行者が多ければ費用が安く済む。
デスティネーションと時間の自由度が高い。
デメリット
帰路、山歩きで疲れた状態で運転することになるので運転手のリスクが高い。
松本に立ち寄って馬刺しを肴に居酒屋で一杯、ということができない。
車は上高地に乗り入れできないため、沢渡で車をおいてバスに乗換が必要。
直通高速バスで行く場合のメリット・デメリット
メリット
新宿⇔上高地は直行のバスがでていて乗換がない。
長時間のバス(昼行5時間・夜行7時間)が苦にならなければ上高地へ行くには最も一般的な手段である。
夜行バスを使えば日帰りも可能なので時間を有効に使える。
デメリット
直行なので途中下車できない。
松本城を見学して帰りたいと思っても諦めざるを得ない。
事前予約が必要なので、時間的な制約がある。
電車で行く場合のメリット・デメリット
メリット
帰路、松本城を観光したり松本の居酒屋で馬刺しを肴に信州の地酒を飲んで帰ることができる。
駅ネットで切符購入すればバスより安い場合がある。
デメリット
乗換が多い。
荷物は自分で持たなければならない。
時間の制約が多く、スケジュールを事前にしっかり立てて切符を予約しておく必要がある。
検討結果
電車で行くことは最もデメリットが大きかったが、松本の居酒屋に立ち寄りたいという欲求に勝てず、電車で行くことに決めた。
計画編 スケジュールの設定
電車とバスを良い条件で予約するためには早めのスケジュール設定が必要だ。
今回は1泊2日で帰りに松本に立ち寄るスケジュールを以下のように組んだ。
9月22日(金)
新宿駅 7:30 ー 松本駅 10:23 (JR特急 あずさ3号)
松本駅 10:45 ー 新島々駅 11:15 (松本電鉄・上高地線)
新島々駅 11:30 ー 12:35 上高地バスターミナル(バス)
9月23日(土)
上高地バスターミナル 16:00 ー 新島々駅 17:52(バス)
新島々駅 17:22 ー 松本 17:52 (松本電鉄・上高地線)
松本駅 20:10 ー 新宿駅 22:45 (JR特急 あずさ60号)
準備編 チケット予約
JRのトクだ値、上高地発のバスとも1か月前からの発売だ。
9月22日の約1ヶ月前の8月24日に以下の予約をした。
➀新宿⇔松本 JRあずさ3号と60号を予約
新宿駅から松本駅までのJRの通常の特急券込の料金は¥6,620。
えきネットで13日前までに購入すれば特急券・乗車券セット¥4,620-(トクだ値30%引)で購入できる。
この料金で買えれば、高速直通バスと同じかむしろ安い。
=諸注意=
※えきネットの利用にあたっては、会員登録(無料)が必要。
※あずさの予約は新宿発のみで、立川から乗車する場合でも新宿から買う必要がある。
※座席枠が通常の特急券より少ないので早めの予約が必要。
※乗車券は都区内で利用可能なので、都区内の定期券があれば新宿までは無料。
※JRの指定席券売機または戻りの窓口での事前の紙チケット受け取りが必要。
※カード決済できない場合でも駅での現金払いを選択すればネット予約を完了できる。その場合、指定席券売機またはみどりの窓口にて予約後3日以内に支払う。
※現金払いを選択していても、駅の自動券売機ではクレジットカードで決済可能。
➁上高地バスターミナル→新島々行きバスの予約(必須)
往路の新島々→上高地間のバスは予約不要だが、復路の上高地発→新島々着の区間は、乗車時間の事前予約が必要となっている。
アルピコ交通のサイトから上高地発のバスの運行時間を確認し、「発車オーライネット」でクレジットカードで事前決済を済ませておけば安心だ。
松本電鉄もバスと同じアルピコグループが運営しているので、鉄道とバスをセットで購入できる。
実践編 実際に乗車してみる
9月22日(金)往路
新宿 7:30ー松本 10:23 (JR特急 あずさ3号) 予約必要 ¥46,20
南武線で立川駅にでて立川駅から乗車することもできるが、せっかくの新宿発の乗車券なので新宿から乗ることにした。
この時私は一つのミスを犯していた。
乗車券は都区内発となっていたので、東京駅までの定期券をもっていた私は、新宿駅では改札をでずに、松本駅で定期券SUICAと乗車券をみせればよかったのだ。
ところが、コーヒーを買うために新宿で改札をでてしまったため、新宿までの運賃の不足分がSUICAから引き落とされてしまったのだった。
新宿から松本まで約3時間でなかなか乗りごたえがあるが、WIFIや充電などの設備はそろっていて退屈しない。
諏訪湖や信州の山々など移り変わる車窓からの眺めも飽きない。
松本駅 10:45 ー新島々駅 11:15 (松本電鉄・上高地線) 予約不可 ¥710 2両編成
JRの改札と松本電鉄の改札は同じなので、松本駅で改札の外に出ずに、新島々駅で清算することも可能だ。
しかしながら、ここは一旦松本駅で改札をでて切符を購入することがお勧めだ。
切符の自動券売機はJR券売機に並んで設置されているのですぐわかる。
ここで最も注意すべきは、上高地までのバスも含めたセット券を購入することだ。
バスは松本電鉄と同じアルピコ交通が運営しているため、鉄道乗車券とセットで購入できる。
券売機は鉄道の区間運賃がデフォルト設定のため、良く画面を見ないと、乗継きっぷのボタンがわかりずらい。
そこには、松本電鉄の美少女キャラクター「渕東なぎさ」(えんどう なぎさ)、通称「なぎさトレイン」が待ち構えていた。
名前の由来は松本駅から2つ目の「渚駅」(なぎさえき)と新島々駅の1つ手前の駅「渕東駅」(えんどうえき)からきている。
新島々でおりた乗客は、「なぎさトレイン」に乗り合わせた幸運に感謝するどころか、まったく渕東なぎさに気をとられることもなく、我先にと改札口へ殺到する。
その流れはそのまま駅に駐車しているバスへの列となる。
ここで先ほど松本駅で購入した電車とバスの乗り継ぎ切符が威力を発揮する。
乗継券を購入していない場合は一旦列をはずれてチケットを購入する必要があり、列の後ろにつく羽目になる。
バスの座席は早いもの順なのでいい席にはすわれないし、最悪は次のバスまで待たなければならない。
新島々 11:30 ー 12:35 上高地バスターミナル (バス)
バス乗車前に鉄道とのセット券を係員にわたして好きな場所に座る。
景色は進行方向に向かって右側の席が眺めは良さそうだった。
車窓にはいくつものダムや川が見え、なかなか見ごたえがある。
12:35丁度にバスは上高地バスターミナルへ到着した。
9月23日(土)帰路
上高地バスターミナル 16:00 ー 新島々 17:52(バス) 予約必要 ¥2,000
復路のバスは予約されているからといって安心はできない。
ここからすでに座席戦争がはじまっていたのだ。予約は出発時間が確約されているのみで座席は早い者勝ちだ。
出発の10分まえから乗車案内が始まるが、15分前には長い列ができている。
最初は1号車のみ看板のみであったが、その後2号車の案内がでると慣れた人は、すぐにその列に移り始めた。
新島々 17:22 ー松本 17:52 (松本電鉄・上高地線) 予約不可 ¥710 2両編成
バスは1号車、2号車の順に上高地バスターミナルを出発するので、新島々駅の到着時間も当然1号車のほうが早く着く。
2号車のバスの乗客は、すでに松本電鉄の改札の前に列をつくっている1号車の乗客の後ろに並ぶことになる。
電車で良い席にすわりたければバスも1号車の列に並ぶことがお勧めだ。
とは言え2両編成の1車両あたりの座席数はバス1台とほぼ同じか少し多いぐらいらしく、新島々出発時は電車内で立っている人はほぼいなかった。
松本 20:10ー新宿 22:45 (JR特急 あずさ60号) 予約必要 ¥46,20
松本で2時間ほど居酒屋で時間をつぶし、あずさに乗車。
ほろ酔い気分で乗車し、気づいたときには新宿駅にいた。
新宿駅からそのまま埼京線、横須賀線と乗り継いで新川崎駅で下車。
きっぷとSUICAで精算を試みると、なぜか自動精算機ではじかれた。
駅員さんに切符と定期券SUICAを提示すると、料金不要とのこと。
この時はじめて私のもっている乗車券が都区内発着であることに気づき、往路で余分なお金をは払っていたことを知ったのであった。
上高地行きの電車旅の感想
電車利用での上高地は乗換えも多く大変そうに思えるが、アルピコ交通の努力に支えられ松本から上高地までは思いの外スムーズな流れができている。
予約さえしておけば接続の問題もなく、長時間待たされる心配もない。
それにしても、帰路の途中でおりた松本で立ち寄った居酒屋の馬刺しを始めとした酒の肴と地酒の美味さは、ミシュランが言うところの「遠回りしてでも訪れる価値のある料理」であった。