残り少なくなった青春18きっぷを握りしめ、川崎駅を5:39に出発した私は、早朝の7:26に沼津駅に降りたった。

平日の早朝のため通勤通学の人々で駅前は賑わっていた。

【沼津駅】

沼津は井上靖の自伝的小説「しろばんば」に何度も登場する地名だ。

私が、初めて挿し絵のない本を読んだのは中学1年の時だった。

その本が、学級文庫においてあった「しろばんば」だった。

当時、私は文字から湯河原や沼津の風景を膨らませることができたことに興奮していたのかもしれない。

【母子像】

沼津駅では、「母子像」という井上靖の碑文に、お出迎えされた。

井上靖はおぬい婆さん(作中名)に育てられていたはずなのに何故「母子像」なのか?「婆子像」ではないのか!と「しろばんば」ファンなら怒りだすところだ。

それに「 原子力」という言葉も作風とは無縁なので、ほとんど違和感しか残らない。


ともあれ、今回沼津によったのは沼津漁港で海鮮料理を食べるだけが目的なので、早々に目的地に向かうことにした。

沼津港まではEVバスが走っていると聞いていたが、時間が合わないので、帰りに乗ることにして、行きは歩くことにした。

早朝とはいえ、炎天下を20分強を歩くことになるのでガソリン「白角水割」補給が必要だ。

【沼津港魚市場】

沼津は思っていたよりも都会で沼津港までは人家が途切れること無く、コンビニも数軒あるので、ガス欠の心配はなかった。

平日の早朝ということもあって市場周辺は人影もまばらで、漁港関係者や私のように店を探してウロウロしている観光客が数組いる程度であった。

【港八十三番地】

飲食店がつどう複合施設「港八十三番地」は早すぎてオープンしている見せはまばらだ。

【にし与】


下調べでは早朝から営業しているはずの「にし与」を目指したが、なんと「臨時休業」の張り紙が!

ネットでは早朝から営業している店が多いように書いてあるが、9月の平日は閑散期なのか、閉まっている店が多い。

【せきの】

ショックに打ちひしがれる中、「にし与」にいく途中に1軒開いている店を見たことを思い出した。

そこまでもどってみると「せきの」という店だった。

【せきの入口】

食べログ評価も悪くはない。

【せきのメニュー】

表の看板メニューを見ると、「沼津に来たならなに食べる?「あじ」でしょ」と書かれていた。

金谷漁港の黄金アジ、逗子の「まるわ」のアジフライ、鳥貴族のアジフライと名だたるアジを制覇してきた私への挑戦状だろうか?

【アジフライ定食】

店に入ると、以外に狭く、漁港関係のアルバイトらしき3人、観光客らしき3人でカウンター席以外は満席となっていた。

カウンターに通されメニューを見ると、刺身盛り定食も惹かれたが、結局は因縁の「アジフライ定食」を注文。

店主1人で切り盛りしていることもあって、待つこと10分で、アジフライとご対面。

【アジフライ上から撮影】

半身に切られたアジが4つと骨煎餅が盛られていて、シジミのみそ汁にご飯がつく。

アジの大きさは、看板メニューとは思えない程、小ぶりだ。

【アジフライ横から撮影】

しかし、よくみると厚みがある。まるでカニクリームコロッケのようだ。

盛り付けも立体的で美しい。

食べると中身は「ほわっ」として「ホクホク」、アジ特有の臭みがまったく感じられない。

タルタルソース、からし、追いがけ用にウスターソースとトンカツソースが用意されているという念のいれようだ。

「アジフライ」というジャンクフードをまるで懐石料理の域にまで広げようとするかのような店主の意気込みが感じられる一品である。

金谷の黄金アジ、まるわのアジフライに続くアジフライの第三極といえるかもしれない。

【びゅうお】

店を出て、バスまで時間があったので近くの大型水門「びゅうお」の下まで行ってみるが、当然まだしまっていた。

ぶらぶらと「せきの」までもどると、9:00をすぎたので人も増えはじめ、次々と店の中に吸い込まれていった。

結構繁盛店のようだった。

【沼津港バス停】

さアジフライで満足した私は、もう1つの目的であったEVバスに乗るべくバス停へ向かったが、車両点検中で代替バスになっていた。

EVバスとは縁がなかったということで諦めて、9:25の代替バスで沼津駅へと向かう。

沼津駅からは、今日の本当の目的地の三島へと向かった。