7/15(土)、歌舞伎座の昼の部へ母を連れて行ってまいりました。

見たい演目ばかりが並んでいた今月昼の部です。

 

ちなみにこれを書いている本日7/19は踊りのお稽古日で、お昼から稽古場に。そこで、今回の歌舞伎座の感想を話したところ、先日テレビで放映された巳之助くんの「流星」やら初代坂東楽善親子3代襲名の「壽曽我対面」などの話も交えて色々と先生とおかみさんの話が聞けて楽しかったのです。

 

「矢の根」演じるのは市川右團次さんです。きちんと話を知らなかったので今更ですが、登場人物は曽我五郎だったんですね。鮮やかな市松模様の揚げ障子がパタンパタンと上がると、どっかと座った五郎と巨大な矢と盥に砥石、あほみたいに巨大な刀が3本背後に。五月人形の世界。荒事の世界は全てが大雑把で大らか。うたた寝をする姿は、やや仰向けに両足を投げ出した五郎に後見さんが背中にくっついてうずくまり、背もたれ代わりになるとかびっくり。兄の五郎を助けなきゃと気持ちも逸り、農夫から奪った馬に乗り込み大根振りかざし決まる姿のばかばかしさに拍手喝采。無条件にめでたい気分になるさすがの祝祭劇です。しかし右團次さんはテキパキと上手に踊る人という印象なんだけど、荒事にしては不要な理屈っぽさを感じさせるというか…。アホになりきれてない感覚?いや、満足なんですけどね。でもそれを思うと、12代目團十郎さんの問答無用の大らかさってほんと偉大だったなぁ…としみじみもしてみたり。

 

てなことを先生&おかみさんに話していたら、

おかみさん「でも昔のあの人(12代目團十郎)は本っっ当に下手だったのよぉ。菊之助、辰之助と3人で売り出していた時代なんて、見ている方が恥ずかしくなったもの。努力したんでしょうね。」ですって。たしか今の海老蔵さんが新之助、松緑さんが辰之助、菊之助が丑之助から菊之助を襲名してしばらくの頃、「新三之助」といって売り出していた時期がありましたが、彼らのお父さん達のお話です。でも。下手も不器用も昇華されて唯一無二の存在感になっていたんでしょうねぇ。大好きだったなぁ、團十郎さん。

 

「連獅子」演じたのは、親獅子が海老蔵さん、子獅子が巳之助くん。

私たち、舞踊の公演では見慣れてますが、歌舞伎役者の連獅子で親子だとか血縁関係なしに親獅子子獅子を両方大人が演じるのって新鮮でした。だから、それぞれの踊りのスタイルの違いがくっきり明白で面白かったです。巳之助くんの動きは刃物のようにキレッキレ。全ての動きが機敏で大きく、爽快!一方、海老蔵さんはそういう親獅子としての役作りなんでしょうか、疲れているのでしょうか。とても抑えて抑えて踊っている印象でした。子獅子を子供が演じる時のように親子の情愛のようなものは感じられないけど、大人連獅子はまた違った見ごたえがあります。

あと、感じたことは、やっぱり生演奏は良いですね。宗論が終わり、狂言師の姿から後シテの獅子の精が花道から登場する直前の演奏の乱序といわれる合方、静寂から徐々に高まる緊張感たるや鳥肌が立ちました。

それから獅子の精が花道から出てきて、一旦引っ込むところ。頭を横に振って、毛を右肩に掛けてましたね。

私、ここの引っ込みは両足の間に毛を流して引っ込むのしか知りませんでした。先生に聞いてみたら、「花道が短い時は足の間に流す。長い距離だとコケたら大変だからやらない。でも、鏡獅子では絶対に肩には掛けない」のだそうです。

 

そして、気になったこと。海老蔵さん顔色が悪いガーン。なんでしょうね?巳之助君の化粧は地の白がとても発色が良く、輝くような顔色だったのに比べ、海老蔵さんの顔は地の化粧が薄いのか、くすんで見えました。何なら灰色っぽかったぞ。

 

てなことを、先生&おかみさんに話していたら、先日NHKで放送されていた巳之助君の「流星」の話に。みっくん流星の、うちの先生の感想は…「下手だったね」と厳しい感想。えぇ?私は楽しくみたよ。いやいや、流星が楽しいのと踊ってしんどいのは分かるから、「大変だよねー」という共感の目線だったか。しかし子獅子は良かったですよ?!と言うと、「大劇場ならば粗は隠れるけど、TVなんだからTV用の踊りをしなきゃ粗が見えちゃってしょうがない!」のだそうです。TVで見せるならば、細やかな表現に気を使う踊りをしなさいってことらしい。「八十助の若いころは、もっと上手だったよ」だって。

でも20代はひたすら体を大きく使って踊る、これで充分だと思うな。

 

それから、先ほどの「矢の根」の話と、海老蔵さんの化粧についての話の流れで出てきた話題は、これもまた先日NHKで放送された「壽曽我対面」。

先生「菊之助ってほんと化粧が下手だね。不器用なのかなぁ。」←どうやら現在の菊五郎さんの化粧のことを言っているようです。何十年タイムスリップしているのやら。

新彦三郎さん演じる五郎の型に強烈にダメ出し。片手を引いて、もう片手を突き出す型。両腕が肩より下がっているのが五郎としては不格好で、誰も指導しないのが不思議と。映像確認すると確かにその通りです。

 

そして歌舞伎座の話に戻りますが、「加賀鳶」ですー。見たかったけど見たことなかった演目です。いなせな鳶の男達の勢揃いは歌舞伎の花ラブラブラブラブの一つですなー。

中車、かっこいい役というのもあるのだけど、違和感なく素敵ラブでしたねーー。中車さんがこの松蔵の役を梅玉さんに教わったというのも間接的に梅玉さんも見れてしまったようで、私には嬉しいわぁ。

 

今日の昼の部は歌舞伎座休演日。歌舞伎座では初めてのことなのかな。海老蔵さんが松竹にお願いして設定されたそうですが、とてもとても良いことだと思います。歌舞伎役者さんの仕事の在り方っておかしいと思いますもん。長く活躍されてほしいですからね。

 

本日はこれにてー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行ってまいりました。桂佐ん吉さんの落語会、『佐ん吉大一番』。開演しても見つからない笛紛失事故、音曲漫才、鳴り物も賑やかに楽しい落語会でした。

 

というわけで。

 

今回は、前回このお江戸日本橋亭で知り合った大阪から遠征されたよーこさんと一緒に。

会場に入る前に時間的余裕をもって落ち合い、アルコール生ビールも多少入れつつ腹ごしらえ。

今まで話せる人のいなかった、上方落語の心に残った噺について聞いてもらい、開演前だけでも大いに楽しんだのであります。

 

どうしても聞いてほしかったこと。

  • 桂雀太さんで聞いた『遊山船』。下げの会話、言葉遊びの粋な美しさに心底うっとりした話。
  • 落語を聞くようになり、米朝さんの『質屋蔵』のまくらと小佐田定男先生の本『上方落語のネタ帳』での丁寧な解説で、いつの間にか質屋のシステムと用語を覚えていたこと。その知識がなければ『遊山船』が楽しめないと発見したこと。
  • 桂米紫さんで聞いた『まめだ』最後、タヌキの亡骸に銀杏の落葉がさーっと吹き溜まる場面にジーン…とした瞬間、米紫さんの着物の色が銀杏の落葉を表わしていることを知り、更に覆いかぶさるような感動が押し寄せてきたこと。
  • 以上の二つの演目から、予備知識なしで生で初めて見る噺から得る感動は、とても貴重であると実感したこと。
  • 私、吉朝一門の方々の落語を中心にまだ数回しか見に行ったことがないのに、東京・横浜での演目が今回含め、既に2回目の演目が3作品もあるんですな。具体的には『転失気』⇒弥太郎・佐ん吉、『くしゃみ講釈』⇒吉弥・佐ん吉、『蛸芝居』⇒よね吉・佐ん吉。どうやら、ホームグラウンドである関西での日常的な寄席で演じる演目と、遠征先である東京で演じる演目の傾向があり、東京での演目は一門での得意演目(代表演目)が多いのだろうと推測したこと。もちろん嫌ではないのです、吉朝さんをきっかけにして好きになった演目ばかりですので。

などなど。

 

呑みつ語りつ充実の1時間を過ごして、いざ会場へグーグー

前の方の座椅子に陣取る気満々で、早めに行動。ま、ちょいと遅くなったとしても、座椅子席を目指す人は少ないって前回行った時に分かっているんですけどね。

開場待ちの列に並んでいると、背にした建物の壁の向こうからバタッバタッバタバタバタ…とツケの音が。よーこさんが「今、練習してるね」とつぶやき、よく聞いてみると、『蛸芝居』で蛸がすり鉢を持ち上げて出てくる場面の音が音譜。しばらくすると今度は歌舞伎の『勧進帳』などでもおなじみ飛び去りの合方が音譜音譜。今度は蛸が六法踏んで帰っていく場面ですね。後ろを見たら扉に「楽屋入口」と書いてありました。すぐ後ろでやってたのね。

立って待ってる合間に、思わぬお楽しみがあったのでした照れ

 

さて、ようやく本題の落語会そのものの記憶です。

 

開演直前に客席を見渡せば、ほぼ満席。客層は中高年男女均等に入り交ざり、いかにも耳の肥えた方が多そうな客席です。後ろから聞こえてきた妙齢の3人連れの方の会話を聞けば、自身も趣味で落語をされる方がいらしたり、最前列を見れば、前回もお見掛けしたような男性がいたり。どの落語会でも、どんな客層なのか見るのも楽しみですなぁ。

 

長引きそうなんで、今回はこれにて~爆  笑

 

 

 

6/10(土)、歌舞伎座夜の部「鎌倉三代記」「御所五郎蔵」を幕見で観劇して参りました。

先月の「魚屋宗五郎」に続き、【そういえば見たことなかった有名演目シリーズ】です。今の歌舞伎座の4階席は以前の改装前と違ってお席はゆったり、そして何より花道の七三がきちんと見えるので、非っっ常~~に利用価値が高いOKのでございますよ!!

 

まず、最初に言いたいのは

御所五郎蔵は最高ぉぉアップ目が幸せラブラブでしたぁ。

なんというか、歌舞伎の様式美の宝庫なのです、この黙阿弥作の舞台は。お気に入りの歌舞伎演出、全部詰め込みました的な。

 

ザッとあらすじを並べますと。

不義密通の咎で主家を追われた五郎蔵と皐月は浪人と遊女となって暮らしている。二人のことを助けてくれた元主のためにお金を工面しなければならない事情ができたその時、皐月は自分を巡って五郎蔵と恋敵となっている男からの見受けの話を受け、お金を工面しようとした。五郎蔵に離縁状を書いたが、本心はもちろん違う。二人の絆を信じていればこそ見せかけの離縁状を書いたわけだが、五郎蔵には通じなかった。逆上した五郎蔵は吉原の暗闇に紛れて皐月とその恋敵を殺害しようとするが、殺したのは何の罪もない花魁、しかも元主の思い人だった。五郎蔵は自殺した。

 

1・黙阿弥の美しい七五調の台詞。2本の花道を使い、10人の男達のツラネといわれる渡し台詞。

 ⇒この台詞は大川端のお譲吉三「月も朧に白魚の~」のような味わいで。

 

2・主人公が魅力的。

 ⇒短気でカラリとした江戸の粋の権化のような男前の主人公に廓に身を落としても貞女な妻。不義密通の咎で主家を追われた二人。妻皐月は遊女に身を落とし、五郎蔵は浪人していても、なんだかサッパリ清潔感のある夫婦。

 

3・ふんだんに見せる五郎蔵のきまった型のスッキリとした美しさ。

 ⇒こりゃ仁左衛門さんの容姿の麗しさで効果倍増ですな照れ。きまりが多くて大向こうが掛かる異常な頻度。

 

4・黙阿弥らしい吉原の光と影を感じさせる陰影の深さ。

 ⇒名台詞「晦日に月の出る里も闇があるから覚えていろ」

イヤホンガイドの解説によりますと、“晦日に月の出る里”とは《月の出ない新月の闇夜にも煌々と明るい場所》すなわち《吉原》のことなんだそうです。 その暗闇に乗じていずれ切り殺してやるからせいぜい用心していやがれムキーってことでしょうか。

 ↑帰り道、「あっ、こういうことかぁ…。」と銀座4丁目の交差点でパチリ。

 

 5・暗闇の手探り、だんまり。

 ⇒暗闇、といっても、非常に明るい中の手探りでしたが。

 

6・元剣術指南役で恋敵の男が、最後の最後で「実は妖術使いでした」なんていうトンデモ展開。

 ⇒歌舞伎全般的にありがちなご都合展開、「実は兄妹でした」とか「親子でした」とか、そんなんが出てきたらどうしましょう、と思っていましたが…。黙阿弥作は更に斜め上を行っておりました。ただの金にものいわす嫌な恋敵かと思ったら、最後の最後で「実は妖術使い」って。何の伏線も無くびっくりひっそりとズッコケたよ、あたしゃ。

 

「御所五郎蔵」---本来は長いお話の後半にあたる部分でして。これだけ見ると、ストーリーが面白いわけではなかったです。ただただ、歌舞伎美の集大成のレビューショーとして、この上なく目が幸せな演目なのでありました。

たのしかったな~~音譜

 

 

もう一つ、さきに見た演目は「鎌倉三代記」

 

これに登場する時姫は、歌舞伎の三姫の一つ。ということで、必須科目として見ておかねばと思った次第。

 

冒頭の登場場面がなかなか…。

時姫って、赤姫ですよ。それが豪華吹輪の頭に姉さん被りに手拭乗せて、裾引きの赤い振袖に襷掛けで働き者の恰好で、御殿じゃなしに田舎のあばら家の暖簾から出てくるって。このギャップたるやあせるあせる

 

話の方はというと、正直何が何やらさっぱりわかりませ~~んバイバイ

全十段ある長~い長~~い人形浄瑠璃のほんの一部だそうです。予習していかなかったのも悪いんですが、イヤホンガイド使用してもちんぷんかんぷんでした。そしてまたもや押しかけ女房状態の時姫はじめ、登場人物に何一つ共感するところが無いという…。

でも楽しかったですー。

 

最後に幕見について、今回発見したことがあります。

わたくし、歌舞伎熱が復活したのは最近です。そして、復活以降、幕見で入ったのは昼の部の演目ばかりでした。そこで、外国人観光客の多さに驚いたのであります。昔は4階にいなかったのよ、外国人観光客。近年は海外の方の東京観光定番コースになっているんでしょうね。

そして、さらに新たな発見。夜の部の幕見は外国人観光客一人も居ない。そっか。夕方から夜に掛けて、ですものね。本当にその演目を見たい人だけが見ているという、何やら昔ながらの光景なのでありました。

 

以上。6月は充実の幕見でしたっ。

 

今日はシネマ歌舞伎で猿之助さんと染五郎さんの「東海道中膝栗毛」を見てきた。いやぁ、笑った笑った。そして東劇、とんでもなく座り心地の良いふかふかシートでございますな。シネマ歌舞伎、すごい臨場感ですねええ。演目によっては、また行きたいと思います。

「上方落語家だけによるNHK新人落語大賞受賞者の会」に、友を連れて行ってまいりました。

若手上方落語家でも実力者4人が、おそらく特に得意なネタで上方らしい音曲の華やかな話を揃えたという、何ともまぁ、華やかで充実の落語会でした。

 

横浜にぎわい座は、今回で3回目。席は3列目のやや上手寄り。

席の位置を知った時の友は「こんな前なの?!」と驚いていました。でも、そこが歌舞伎と落語の違いでなんですね。

大道具や舞台美術込みで全体を見渡したい歌舞伎は2階席が特等席だと思います。でも落語は、舞台にたった一人座布団に座っている演者さんだけ。見るべきものは一つだけなので、かぶりつきに越したことはないのです。劇場ではマイクを使っていますが、生声が聞こえるくらいの距離感がベストだと思いました。

といっても、1列目はさすがに首が痛かった過去がありましてね。初めて座った今回の3列目は、見易さ抜群でした。集中して堪能できる、素晴らしい席の選択!

 

というわけで。

開口一番

鉄砲勇助」  笑福亭 呂好 

ひたすら嘘ばかり言う男と、その嘘に突っ込む男の会話が続く。テンポよい会話を楽しむ話なのでしょう。すみません。この話、半分くらいよくわからなかったです。

 

「遊山船」  桂 雀太

聞いてみたかった話の一つです。

夏の風物。芸妓舞妓幇間侍らせ屋形船に遊ぶ様。橋の上での夕涼み。

橋の上から屋形船の様子を冷やかしながら見ては、これもまた会話を楽しむ話。

なんとも粋な言葉のやりとりに、耳がうっとり。

 

碇の模様の揃いの浴衣を着たお稽古連中に、橋の上から

「さってもきれいな碇の模様」

と、声を掛ければ

「風が吹いても流れんように」

と答える。

家に帰って自分の女房に碇模様の浴衣を着せ

「さっても…汚い碇の模様」

と、思わず言ってしまえば女房は

「質に置いても流れんように」

ですって。

 

落語を聞くようになって、質屋のシステムに詳しくなったよ。

 

「蛸芝居」  桂 よね吉

よね吉さん、圧巻の爆笑芝居話。

上方落語にはまるきっかけが、彼のお師匠さんである桂吉朝さんの「蛸芝居」だったので、生で見ることができ、とても嬉しかったこの演目。

登場人物全員が呆れるほどの歌舞伎好きで、放っておけばやることなすこと芝居がかってしまう商家のお話。よね吉さん、お値段はあちらは18000円、こちらは3100円。でもやってることは同じようなことなんです!と。豊かな声量。ツケに合わせてふんだんに盛り込まれた見得もよくきまり、この人だったら「やってることは同じようなこと」と言われても、納得してもいいかな、と。歌舞伎好きにも見て損は無い舞台です。

ブログに文章じゃ書ききれないほど隅から隅までツボだらけ。

 

「稽古屋」  桂 佐ん吉

女性の踊りのお師匠さんに入門しに来たどうしようもない男の話。

現代の日本舞踊のお稽古とこの話の時代のお稽古も変わりはないようです。現代でも師匠は生徒と対面で座り、口三味線を唄いながら、正座のまま上半身だけ反転した踊りを一緒に踊ってくれます。

そのお師匠さんが付けるお稽古の様子を演じることが、この話の見せ所なんですね。

佐ん吉さんは男性でも線が細くて、ふにゃん…とした印象の方です。そして、踊りのお稽古をされていたのもよく分かります。この話のお稽古では「越後獅子」と「手習子」が出てきますが、特に手習子では実際に手拭を使って踊ってみせていました。体の使い方の柔らかで、素敵な女のお師匠さんでした。

たぶん、越後獅子と手習子は、実際に立って踊れるくらいには、お稽古したのだと思われます。

ただ一つ、そんな素敵な女のお師匠さんぶりだったのに、使った手拭が…。紺地に白抜きの七宝の小紋柄という、なんとも男臭い柄でして、そこだけちょっとした違和感で残念。

 

 

「夢の続き」  桂 三若

新作落語です。終わった瞬間隣の友の顔を見合わせ、大きく息を吐きました。どっぷりと一人芝居の世界に引き込まれました…。

 

とにかくとにかく。大充実の2時間30分でした。

随分と日にちが経ってしまいましたが、やっぱり記憶があるうちに書いて留めておこうと思う次第でして…。これ、ただの記録です。

 

東京の桜が全国に先駆けて満開を迎えた4月のはじめ。

とにかく上方落語をネットやDVDではなく、生でできるだけ体験してみようという思いのもと、今回は桂吉弥さん独演会に行ってみました。

同じ敷地内の国立劇場は歌舞伎や踊りでよく行きますが、演芸場に足を踏み入れるのは初めての経験。この日は日曜で仕事の日ですが夜の仕事は無かったので、いそいそと仕事を引き上げ半蔵門へ。

 

会場の印象。

建物からしてやけに縦長で、入口からエントランス、階段を上がってロビーに至るまで、なにやら横に窮屈な圧迫感が。客席に入るとようやく広い場所に出ることができたような安心感…。

 

舞台は間口が普通の劇場より比較的狭いのが印象的。そこはやはり主に大道具も屏風程度で、舞台に一人で上がることを目的に作られた劇場だからなんでしょうね。歌舞伎座や国立劇場の大劇場のような長大な舞台を見慣れた目には、独特に感じました。…鳴物の響きとかマイクに入る声を聞くと、横浜にぎわい座の方が音は綺麗に聞こえたなぁ。ただ、客席の大きさは国立劇場の小劇場と同じくらいで、舞台の幅が狭い分、客席の横の並びが少ないのかな。奥行は似たようなものでした。全体の3分の2くらいの入りでした。

 

『転失気』 桂 弥太郎

 

知ったかぶりで負けず嫌いなお坊さんが、その「てんしき」の意味を知らなかったので、その言葉を知っている人に意味を教えてもらいに、小僧を使いに出した。「てんしき」とは「転失気」と書き、おならのことなんだそうで。悪戯心の働いた小僧さん。その意味を和尚には「盃」だと伝えた。そこで起こるトンチンカンなやりとりが楽しい話。

弥太郎さん、柔らかな雰囲気の方ですね。

 

『稲荷俥』 桂 吉弥

 

雨が降りそうで月も見えない夜、人気もない淋しい夜。ポツーンと一台の人力車とその車夫。産湯の森という夜となれば暗~い怖~い場所まで乗せていけというお客さん。覚悟を決めて乗せる。ところがその客、自分は産湯の稲荷のお使いの者だと車夫を騙して、車代払わずトンズラしてしまった。…のに車にお金を置き忘れた(笑)。本気で怖がっていた車夫は、そのお金を「お稲荷さまから授かった~~」と大喜びで家に帰り、近所の人たち集めてお祝いのどんちゃん騒ぎを始めた。

お祝いのどんちゃん騒ぎが鳴物部隊の腕が見せ所でしょうか。そ~れボリューム上げ~っと吉弥さんの合図で、鉦に太鼓に三味線に騒々しいくらいに賑やかで楽しい一幕でした。

 

『打飼盗人』 桂 鯛蔵

 

『とりたつ』 桂 吉弥

 

シングルマザー演じる吉弥さんが若干キモイのよ。

 

中入り

 

『愛宕山』 桂 吉弥

 

遠山に霞。空には雲雀。れんげたんぽぽ。青々と伸びた麦。春の野辺の麗らかな情景が目に浮かぶこの演目。ふんだんに使われたお囃子も上品に効果的に。上方落語初心者にはやっぱりこの演目が一番生で聴きたかったので嬉しかったです。

 

ただし、吉弥さんの愛宕山は米朝さんや吉朝さんとは少し演出を変えているようです。

 

1・見台と膝隠しが置かれていない

   小拍子も無いので、舞妓さんのビラビラの簪を扇子で表しており、「ビラビラの簪」じゃなくて、「ぶらぶらの簪」って感じで、イマイチ可愛い雰囲気が出ないんだなぁ。ただ、見台と膝隠しが無いことで、最後の「旦さんただいま」が大ジャンプで戻ってくる表現に迫力。この最後の大事な場面で場内爆発的な笑いが起きました。

 

2・雲雀が “ピーチクパーチク(×2回)” 鳴いている

  これどーなのよ。『おてもやん』の歌詞じゃないんだから、「ピーチクパーチク」は風情が無さすぎませんかねぇ。しかも2回も繰り返して言われては正直台無しです…。うーーん。これはドラマ「ちりとてちん」ファンの人へ向けた愛宕山なのだと理解しよう。