随分と日にちが経ってしまいましたが、やっぱり記憶があるうちに書いて留めておこうと思う次第でして…。これ、ただの記録です。

 

東京の桜が全国に先駆けて満開を迎えた4月のはじめ。

とにかく上方落語をネットやDVDではなく、生でできるだけ体験してみようという思いのもと、今回は桂吉弥さん独演会に行ってみました。

同じ敷地内の国立劇場は歌舞伎や踊りでよく行きますが、演芸場に足を踏み入れるのは初めての経験。この日は日曜で仕事の日ですが夜の仕事は無かったので、いそいそと仕事を引き上げ半蔵門へ。

 

会場の印象。

建物からしてやけに縦長で、入口からエントランス、階段を上がってロビーに至るまで、なにやら横に窮屈な圧迫感が。客席に入るとようやく広い場所に出ることができたような安心感…。

 

舞台は間口が普通の劇場より比較的狭いのが印象的。そこはやはり主に大道具も屏風程度で、舞台に一人で上がることを目的に作られた劇場だからなんでしょうね。歌舞伎座や国立劇場の大劇場のような長大な舞台を見慣れた目には、独特に感じました。…鳴物の響きとかマイクに入る声を聞くと、横浜にぎわい座の方が音は綺麗に聞こえたなぁ。ただ、客席の大きさは国立劇場の小劇場と同じくらいで、舞台の幅が狭い分、客席の横の並びが少ないのかな。奥行は似たようなものでした。全体の3分の2くらいの入りでした。

 

『転失気』 桂 弥太郎

 

知ったかぶりで負けず嫌いなお坊さんが、その「てんしき」の意味を知らなかったので、その言葉を知っている人に意味を教えてもらいに、小僧を使いに出した。「てんしき」とは「転失気」と書き、おならのことなんだそうで。悪戯心の働いた小僧さん。その意味を和尚には「盃」だと伝えた。そこで起こるトンチンカンなやりとりが楽しい話。

弥太郎さん、柔らかな雰囲気の方ですね。

 

『稲荷俥』 桂 吉弥

 

雨が降りそうで月も見えない夜、人気もない淋しい夜。ポツーンと一台の人力車とその車夫。産湯の森という夜となれば暗~い怖~い場所まで乗せていけというお客さん。覚悟を決めて乗せる。ところがその客、自分は産湯の稲荷のお使いの者だと車夫を騙して、車代払わずトンズラしてしまった。…のに車にお金を置き忘れた(笑)。本気で怖がっていた車夫は、そのお金を「お稲荷さまから授かった~~」と大喜びで家に帰り、近所の人たち集めてお祝いのどんちゃん騒ぎを始めた。

お祝いのどんちゃん騒ぎが鳴物部隊の腕が見せ所でしょうか。そ~れボリューム上げ~っと吉弥さんの合図で、鉦に太鼓に三味線に騒々しいくらいに賑やかで楽しい一幕でした。

 

『打飼盗人』 桂 鯛蔵

 

『とりたつ』 桂 吉弥

 

シングルマザー演じる吉弥さんが若干キモイのよ。

 

中入り

 

『愛宕山』 桂 吉弥

 

遠山に霞。空には雲雀。れんげたんぽぽ。青々と伸びた麦。春の野辺の麗らかな情景が目に浮かぶこの演目。ふんだんに使われたお囃子も上品に効果的に。上方落語初心者にはやっぱりこの演目が一番生で聴きたかったので嬉しかったです。

 

ただし、吉弥さんの愛宕山は米朝さんや吉朝さんとは少し演出を変えているようです。

 

1・見台と膝隠しが置かれていない

   小拍子も無いので、舞妓さんのビラビラの簪を扇子で表しており、「ビラビラの簪」じゃなくて、「ぶらぶらの簪」って感じで、イマイチ可愛い雰囲気が出ないんだなぁ。ただ、見台と膝隠しが無いことで、最後の「旦さんただいま」が大ジャンプで戻ってくる表現に迫力。この最後の大事な場面で場内爆発的な笑いが起きました。

 

2・雲雀が “ピーチクパーチク(×2回)” 鳴いている

  これどーなのよ。『おてもやん』の歌詞じゃないんだから、「ピーチクパーチク」は風情が無さすぎませんかねぇ。しかも2回も繰り返して言われては正直台無しです…。うーーん。これはドラマ「ちりとてちん」ファンの人へ向けた愛宕山なのだと理解しよう。