6/10(土)、歌舞伎座夜の部「鎌倉三代記」「御所五郎蔵」を幕見で観劇して参りました。

先月の「魚屋宗五郎」に続き、【そういえば見たことなかった有名演目シリーズ】です。今の歌舞伎座の4階席は以前の改装前と違ってお席はゆったり、そして何より花道の七三がきちんと見えるので、非っっ常~~に利用価値が高いOKのでございますよ!!

 

まず、最初に言いたいのは

御所五郎蔵は最高ぉぉアップ目が幸せラブラブでしたぁ。

なんというか、歌舞伎の様式美の宝庫なのです、この黙阿弥作の舞台は。お気に入りの歌舞伎演出、全部詰め込みました的な。

 

ザッとあらすじを並べますと。

不義密通の咎で主家を追われた五郎蔵と皐月は浪人と遊女となって暮らしている。二人のことを助けてくれた元主のためにお金を工面しなければならない事情ができたその時、皐月は自分を巡って五郎蔵と恋敵となっている男からの見受けの話を受け、お金を工面しようとした。五郎蔵に離縁状を書いたが、本心はもちろん違う。二人の絆を信じていればこそ見せかけの離縁状を書いたわけだが、五郎蔵には通じなかった。逆上した五郎蔵は吉原の暗闇に紛れて皐月とその恋敵を殺害しようとするが、殺したのは何の罪もない花魁、しかも元主の思い人だった。五郎蔵は自殺した。

 

1・黙阿弥の美しい七五調の台詞。2本の花道を使い、10人の男達のツラネといわれる渡し台詞。

 ⇒この台詞は大川端のお譲吉三「月も朧に白魚の~」のような味わいで。

 

2・主人公が魅力的。

 ⇒短気でカラリとした江戸の粋の権化のような男前の主人公に廓に身を落としても貞女な妻。不義密通の咎で主家を追われた二人。妻皐月は遊女に身を落とし、五郎蔵は浪人していても、なんだかサッパリ清潔感のある夫婦。

 

3・ふんだんに見せる五郎蔵のきまった型のスッキリとした美しさ。

 ⇒こりゃ仁左衛門さんの容姿の麗しさで効果倍増ですな照れ。きまりが多くて大向こうが掛かる異常な頻度。

 

4・黙阿弥らしい吉原の光と影を感じさせる陰影の深さ。

 ⇒名台詞「晦日に月の出る里も闇があるから覚えていろ」

イヤホンガイドの解説によりますと、“晦日に月の出る里”とは《月の出ない新月の闇夜にも煌々と明るい場所》すなわち《吉原》のことなんだそうです。 その暗闇に乗じていずれ切り殺してやるからせいぜい用心していやがれムキーってことでしょうか。

 ↑帰り道、「あっ、こういうことかぁ…。」と銀座4丁目の交差点でパチリ。

 

 5・暗闇の手探り、だんまり。

 ⇒暗闇、といっても、非常に明るい中の手探りでしたが。

 

6・元剣術指南役で恋敵の男が、最後の最後で「実は妖術使いでした」なんていうトンデモ展開。

 ⇒歌舞伎全般的にありがちなご都合展開、「実は兄妹でした」とか「親子でした」とか、そんなんが出てきたらどうしましょう、と思っていましたが…。黙阿弥作は更に斜め上を行っておりました。ただの金にものいわす嫌な恋敵かと思ったら、最後の最後で「実は妖術使い」って。何の伏線も無くびっくりひっそりとズッコケたよ、あたしゃ。

 

「御所五郎蔵」---本来は長いお話の後半にあたる部分でして。これだけ見ると、ストーリーが面白いわけではなかったです。ただただ、歌舞伎美の集大成のレビューショーとして、この上なく目が幸せな演目なのでありました。

たのしかったな~~音譜

 

 

もう一つ、さきに見た演目は「鎌倉三代記」

 

これに登場する時姫は、歌舞伎の三姫の一つ。ということで、必須科目として見ておかねばと思った次第。

 

冒頭の登場場面がなかなか…。

時姫って、赤姫ですよ。それが豪華吹輪の頭に姉さん被りに手拭乗せて、裾引きの赤い振袖に襷掛けで働き者の恰好で、御殿じゃなしに田舎のあばら家の暖簾から出てくるって。このギャップたるやあせるあせる

 

話の方はというと、正直何が何やらさっぱりわかりませ~~んバイバイ

全十段ある長~い長~~い人形浄瑠璃のほんの一部だそうです。予習していかなかったのも悪いんですが、イヤホンガイド使用してもちんぷんかんぷんでした。そしてまたもや押しかけ女房状態の時姫はじめ、登場人物に何一つ共感するところが無いという…。

でも楽しかったですー。

 

最後に幕見について、今回発見したことがあります。

わたくし、歌舞伎熱が復活したのは最近です。そして、復活以降、幕見で入ったのは昼の部の演目ばかりでした。そこで、外国人観光客の多さに驚いたのであります。昔は4階にいなかったのよ、外国人観光客。近年は海外の方の東京観光定番コースになっているんでしょうね。

そして、さらに新たな発見。夜の部の幕見は外国人観光客一人も居ない。そっか。夕方から夜に掛けて、ですものね。本当にその演目を見たい人だけが見ているという、何やら昔ながらの光景なのでありました。

 

以上。6月は充実の幕見でしたっ。

 

今日はシネマ歌舞伎で猿之助さんと染五郎さんの「東海道中膝栗毛」を見てきた。いやぁ、笑った笑った。そして東劇、とんでもなく座り心地の良いふかふかシートでございますな。シネマ歌舞伎、すごい臨場感ですねええ。演目によっては、また行きたいと思います。