平成24年3月 世田谷区議会定例会(介護・医療・福祉) | 世田谷区議会議員 中塚さちよオフィシャルブログ「世田谷の介護・福祉関係で交流!」Powered by Ameba

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世田谷区議会議員・ケアマネジャー中塚さちよの活動報告、議会報告、ケアマネのお仕事、日常など

中塚さちよ 議員 質問通告に基づき質問してまいります。

 地域重視、質の高い介護サービス実現のための方策について質問いたします。
介護の質をどう評価するか。国では、平成二十一年度以降、介護サービスの質の評価のあり方に係る検討委員会を設置し、議論が行われています。ここでは、ドナベディアンの質評価モデル、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの観点からの検討が行われ、有用と思われる指標について、介護報酬での評価がなされているところです。

 ストラクチャーというのは、サービスを提供するのに必要な人的、物的、財政的資源のことであり、例えば訪問介護サービスでいえば、経験年数の長い職員や、より上位の資格を持つ職員の配置などの体制を整えている事業所は特定事業所加算という形で報酬上の評価がされています。
 プロセスというのは、サービス提供者と利用者の間の相互作用を評価するものであり、緊急時訪問介護加算の評価がございます。

 一方、アウトカム評価については、施設サービスでは介護度が改善して対処できた者の割合で評価する在宅復帰支援機能加算があるものの、居宅系サービスにおいては、利用者の改善ぐあいはケアプランや家族によって提供される介護などに影響されることから、個別の事業所単位ごとのサービスの質の評価が困難であるとされています。
 そこで、介護の質を担保するために、事業者がストラクチャーでの評価、つまり研修を実施し、介護福祉士の割合を三割以上にするなどの体制を整え、特定事業所加算を取得すると、利用料はその一割負担なので、利用者の負担も若干高いということになり、サービス事業者をコーディネートするケアマネジャーの中には、高いからという理由で、最初からそういう事業者を利用しないようにするケアマネもいると聞いています。
 介護サービスの選択は、利用者主体で決められるべきものです。ケアマネジャーが高いからといって利用者に説明もなく除外するというのでは、介護保険制度の本旨にもとるものと言えます。

 その結果、加算の算定要件を備えている事業所でもこの加算を取らない事業所が出てくるなど、事業所の介護の質担保のための努力に対する正当な評価がなされていない状況も生まれています。

 本年は、ご存じのとおり介護報酬改定の年です。今回の改正では、より利用者の自立を支援するため、訪問介護と訪問リハビリとの連携に新たな加算が設けられていますが、加算を取っているところは高いからといって避けられるようなことがあっては、利用者の自立を妨げることにもつながりかねません。利用者主体、質の高いサービスが提供されるよう、区としても、ケアマネ連絡会などあらゆる機会を通じて、実態の改善と制度の普及啓発に努めるべきと考えますが、見解を伺います。

 続いて、地域重視の観点から、地域密着型の新サービス、定期巡回・随時対応型訪問介護看護について質問いたします。

 本区では、国に先駆けてモデル事業を行っており、この春より二事業者で本格的スタートとなる見込みのサービスです。このサービスの指定を受けるには二十四時間体制で対応できる人員配置が必要なため、現在、モデル事業を実施している事業者は、実績があり、安定的なサービスが期待される大手の事業者となっています。小規模事業者では一社では人員体制を整えるのが難しい面もあるのですが、これについては、区の判断で事業の一部委託が可能となっております。一部委託が認められれば、小さな事業者が集まって事業展開することも可能となります。
 本区の介護保険事業計画では、まずは五地域に一カ所ずつの整備が目標となっておりますが、この最低の計画を達成し、地域の介護サービスを育てていくためにも、一部委託を認めるべきと考えます。区の見解を伺います。

 次に、社会的排除をなくすための更生支援の取り組み促進について質問いたします。
 社会的排除をなくすための更生支援、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える活動として、我が区議会でも青空議員が保護司として活動されているなど、皆さんご存じのことと思います。(「山口さんもいるよ」「ほかにもいるのかな」と呼ぶ者あり)山口議員も、失礼いたしました。

 区長は、今般の招集あいさつの中で生きづらさを抱える若者たちの問題に触れ、就労支援と居場所づくりに力を入れた取り組みを進めるとのことでした。ならば、保護観察処分者や刑務所出所者といった、社会的に排除されがちで、最も生きづらさを抱えている少年や成人にも目を向けて、職につくことで立ち直るチャンスをぜひ与えていただきたいと願います。
 リーマンショック以前は公共事業の仕事がまだあって、刑務所を出所した人でも働くことができていたそうです。しかし、今は普通の人でも就職が難しい世の中であり、出所された方々の就職がいかに大変かということは想像にかたくありません。

 生活保護に頼ってしまうと抜け出すのが大変になるので、その前に働くことが重要です。働くということは、単に収入を得るということだけでなく、社会とのつながりを得ることでもあり、再犯を防止するためには大変重要と言えます。

 二月八日の毎日新聞夕刊で紹介されていましたが、更生支援の取り組みとして、全国で九つの自治体が協力雇用主に対する入札制度の優遇措置を設けているとのことです。これは保護観察対象者や刑務所出所者を雇用した実績のある事業者、協力雇用主に対し、公共事業入札の際にポイントをつけるというものです。

 先日、他会派への答弁にもありましたが、区では現在、公契約条例のあり方について検討中で、来年度より総合評価競争入札制度の導入、地域貢献の項目を検討しているとのことでした。
 そこで、この地域貢献の項目において、保護観察対象者や刑務所出所者を受け入れる協力雇用主に加点するなどの優遇措置を検討してはどうかと思いますが、見解を伺います。
 更生支援の取り組みは、再犯を防止することで安全な地域社会づくりに寄与するものですが、そこにとどまるものではなく、区長が掲げておられる、だれもが気軽に支えあえる福祉文化都市の実現に向けて必要不可欠なものと考えます。家族とのきずなも失われ、地域の中で生きていく力がそげ落ちた状態で刑務所から出てくる人たちが立ち直り、地域住民として生き直すために、身近な基礎自治体である区、地域ができることはまだまだあると思います。
 区内の企業や地域の方々を対象に、実際に犯罪から立ち直った当事者や協力雇用主として支援している事業者の方の話を聞けるようなイベントを開催すれば、協力雇用主の拡大や地域のきずなづくりにも役立つと思います。見解を伺います。

 最後に、もう一つ質問をいたします。

 私は昨年六月の定例会で、声が出にくくなる病気、痙攣性発声障害について取り上げましたが、今度は聞こえにくい子ども、軽・中等度難聴児の支援についてお尋ねします。
 難聴の中でも軽度、中等度の難聴児に対する支援は、障害者手帳も交付されず、おくれがちな現状にあります。昨年、国立成育医療センターで一般市民を交えた公開講座が行われた際には、我が区議会から、私と佐藤美樹議員、木下泰之議員が参加させていただきました。言語能力の発達がおくれたり、会話などが聞こえにくいことでいじめに遭ったり、孤立して不登校になってしまった子どももいるなどの現状をお聞きしました。二月十九日の朝日新聞でも取り上げられましたが、早いうちから補聴器をつけることで言語能力や学力を引き出すことができるそうです。補聴器は両耳で二十万から三十万程度と高額なため、区としても助成を検討していただきたいと思います。見解を伺います。
 以上で壇上よりの質問を終わります。(拍手)


◎堀川 地域福祉部長 介護報酬の加算を取得する事業者を除外するケアマネジャーがいるとのご指摘についてご答弁申し上げます。
 介護保険サービスの報酬につきましては基本報酬と加算から構成されており、加算は、特定のサービスを行った場合、または人員体制が整っている場合などに認められる制度となっております。
 この加算制度につきましては、事業者の加算取得のインセンティブを喚起することでサービスの質を向上させることなどが考えられる一方、加算が利用者の一割負担にも反映されることから、利用者が加算をつける事業者を忌避する場合があること、また、同様の業務を行った事業所であっても、加算請求の有無により報酬額に差が生じることなどの問題点も指摘されております。
 他方、ケアマネジャーは、利用者からの相談に応じ、適切なサービスが受けられるよう、サービス事業者等との連絡調整を行いますが、利用者の選択に基づきサービスが提供されるよう、事業者の選択に際しては、必要とするサービスの提供に適切な事業者を利用者や家族が選べるように、公平公正な立場で情報提供する役割を有するものでございます。
 そのようなことから、ご指摘の点につきましては、今後、ケアマネジャーの会合などで周知してまいりたいと考えております。
 続きまして、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の一部委託についてご答弁申し上げます。
 この件につきましては、本年一月から厚生労働省において関係省令の一部改正に係るパブリックコメントが実施され、そこで示された厚生労働省令の指定基準では、ご質問いただきましたように、市町村長が認める範囲内で、他の事業者にサービスの一部を委託することも可能とされております。
 また、昨日、厚生労働省で開催された会議において基準の考え方などが示されたとのことで、二月末に開催予定の東京都の説明会がございますので、これを受けまして、今後の対応に向け精査してまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、区では平成二十一年度から先駆的に二十四時間対応のサービスを実施してきた実績を生かし、四月以降、新しいサービスの幅広い展開を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。


◎西澤 財務部長 更生支援の取り組みの促進につきまして、受け入れ事業者を公共事業入札の際の総合評価において加点するなどの優遇措置を検討すべきとのご提案にご答弁申し上げます。
 総合評価競争入札方式は、価格以外の要素を含めた総合的な評価で落札者を決定する仕組みであり、世田谷区では、工事請負契約の一部を対象に、平成二十一年度から試行として実施をしているところでございます。
 世田谷区の評価方式は、現在、価格点のほかに、過去の工事成績や配置予定技術者の実績などを評価する施工能力評価点を加えて評価を行っております。他の自治体では、防災協定の締結、環境配慮の取り組み、障害者雇用のほか、お話しのような更生支援など、地域貢献に関するさまざまな要素を取り入れる動きも出てきております。
 区では現在、世田谷区公契約のあり方検討委員会におきまして入札契約制度のあり方に関して検討いただいておりますが、総合評価競争入札に関しましては、今後の入札方式の検討を行う上で一つの柱となるものと考えております。ご指摘の点も含めまして幅広く検討を進めてまいりたいと思います。
 以上でございます。


◎藤野 保健福祉部長 私からは、二点ご答弁申し上げます。
 初めに、更生支援の取り組みの促進についてでございます。
 犯罪や非行を犯した人が立ち直るためには、就労し、生活の安定を図ることが大変重要であり、こうした人々を差別することなく積極的に雇用し、その立ち直りに協力する事業主の存在は大変重要であると認識しております。
 法務省東京保護観察所に協力雇用主として登録されている事業主の方は、現在二百六十名ほどいらっしゃり、事業所見学会の受け入れ、職場体験講習の受け入れ、刑務所出所者等の雇用をしていると伺っております。
 世田谷区でも企業関係団体なども構成団体となっている推進委員会を設置し、犯罪や非行を防止し、罪を犯した人の更生を支える地域社会を築こうとする社会を明るくする運動を展開しておりますが、その中でも就労支援は大きなテーマとなっております。
 今後も社会を明るくする運動の中で、世田谷区保護司会など関係団体と協議しながら、罪を犯した人たちの新たな出発に協力された雇用主の話を聞く機会を設けるなど、立ち直りを支える地域社会の実現に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、聞こえにくい子どもへの支援についてご答弁申し上げます。
 幼少期からの軽・中等度の難聴は、言語発達や学業習得、情緒発達の面で影響が生じると言われております。聴覚障害の方に対して、区は障害者自立支援法に基づき補聴器の購入費用の一部または全部を補装具費として支給しております。支給対象となりますのは、自立支援法において両耳の聴力レベルが七十デシベル以上の身体障害者手帳の所持者と規定されております。
 一方、軽・中等度の難聴児・者に対する補聴器の購入費助成制度や小中学校における児童生徒への補聴器の貸与といった独自の取り組みを実施している自治体もあると伺っております。
 区といたしましては、現在進められている国の障害者制度改革の動向なども踏まえ、制度の谷間にある障害児の支援のあり方について検討を行うとともに、教育委員会とも連携し、難聴児の聞き取りづらさや学びづらさを軽減できるよう、障害児の理解促進を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。


◆十六番(中塚さちよ 議員) ご答弁ありがとうございました。
 保護司の件で、自民党の山口ひろひさ議員も保護司さんをされていらっしゃるということで、紹介が漏れまして大変失礼いたしました。(「新川さん」と呼ぶ者あり)済みません。新川議員も、失礼いたしました。
 再質問させていただきますけれども、今回、それぞれの私が取り上げましたテーマは、福祉文化都市ということにすべてかかわってくる内容だと思いますが、そうした中で、今回のご答弁ですとか、保坂区長の取り組みを拝見していて期待できる分野もありますし、ぜひそうした就労支援のことなんかも、今後も注目していきたいと思っているんですけれども、やはり福祉という中で、この超高齢社会の中で、介護というのはとても大きなテーマであると思うんですけれども、招集あいさつとかの中でも、今、保坂区長になられてから介護ということを福祉文化都市と言っていく中で、どのようなビジョンを持っておられるのかがまだ明確になっていない気がするんですね。
 これまで秋山副区長が長年区政に携わってこられて、しっかりやっていかれるということは期待しておりますけれども、やはり保坂区長らしさというのをどこかで出すとすれば、今度、テーマごとの車座集会をやっていくということなので、その中で現場の声とかをやはり拾っていっていただきたいというふうに考えていますが、それについて、区長はどのようにお考えでしょうか。
   〔保坂区長登壇〕


◎保坂 区長 お答えいたします。
 先ほどの議論の中にありました、社会的な、一たん犯罪に手を染めた、しかし、もう一回更生を期するという援助の仕組みであるとか、大変重要な視点だと思っています。同時に介護は、これから世田谷区は超高齢化社会に向けて一挙に、特に団塊の世代が数が多いですから、一挙に向かっていくわけで、そういう意味では、区としての基盤的ないわばベース自体がまだまだ足りないという現状だと思います。
 そういった中で、介護で働いていらっしゃる方の待遇改善の問題、それから地域の、まさに介護予防の取り組み、こういうことをきめ細かく積み上げていかなければいけないし、多分そのレベルを大きく引き上げなければいけない時期に現在があるというふうに考えております。
 そういう意味で、介護を取り巻く地域の連携について、今後、一層力を入れていきたいと思いますし、地域再生、災害に強い町というのは、実は介護や、あるいは福祉のそういう視線が、まなざしが町の中に、施設だけではなくて、人と人とのかかわり合いの中にしっかり日常活動の中に生きている、そういう町だと思っておりますので、また議員の提案を受けながら進めていきたいと思います。



◆(中塚さちよ 議員) 区長からお言葉もいただきましてありがとうございました。また今後とも予算特別委員会等の中でも質疑をしていきたいと思います。