平成20年12月世田谷区議会定例会11月28日(教育) | 世田谷区議会議員 中塚さちよオフィシャルブログ「世田谷の介護・福祉関係で交流!」Powered by Ameba

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世田谷区議会議員・ケアマネジャー中塚さちよの活動報告、議会報告、ケアマネのお仕事、日常など

二十六番(中塚さちよ 議員) 質問通告に基づき質問してまいります。


 最初に、教科「日本語」についての質問です。


 文科省の新学習指導要領では、思考力や表現力をはぐくむ観点から、言語に対する関心や理解を深め、体験的学習を重視することが示されました。教科「日本語」は、これに先駆けたものであると、区教委の間では評価しているようです。


 しかし、本当に手放しで喜んでばかりいてよいのでしょうか。我が会派藤井議員を初め、議会でたびたび言及されているメディアリテラシー教育という観点から申し上げますと、中学一年、「表現」の教科書にインターネットのマナーや電子メールの書き方などが紹介されています。しかし、総務省の平成二十年度版情報通信白書を見ると、六歳から十二歳で既に七割近くがネットを利用しており、中学生になってからこれを教わるというのでは遅きに失していると言わざるを得ません。


 一方で、小学校の教科書で古典や漢詩ですけれども、以前、他会派の木下議員も指摘されていましたが、古典や漢詩は、その時代やその地域で流布していた文化、思想、宗教等が反映されるものであり、そうした文脈に留意しながら読んでいかないと誤読をしかねません。


また、印刷技術がなかった昔なので、例えば平家物語や伊勢物語など、書き写されているうちに、書き手の解釈などが加わって、異なる内容になった本が幾つも存在しています。


 メディアリテラシーを考える上で、古典などはこのように格好の教材にもかかわらず、意味はわからなくても、ただ音読すればよいというのでは少々もったいなくはないですか。教科「日本語」がねらいとする深く考える力を育成するためにも、中学生くらいにじっくり読み込んでもらいたいものです。


 教科「日本語」を教えることを負担と感じている教員の声も聞こえてくる中、子どもが関心を持てるような魅力ある授業ができているのかという素朴な疑問もございます。


 向こう数年はこの教科書で、そして授業のやり方は現場の教員次第で、授業時間も減るかもしれないという状況の中、子どもたちにとってより実り多い授業にしていくためには、現場の先生方のサポートも含めて、メディアリテラシーの問題を大切にしていただきたいと思います。


 区では今後、教科「日本語」についてどのように取り組んでいくのでしょうか、見解をお聞かせください。
 ことしから始まった「日本文化」の教科書では、歌舞伎、茶道、華道などが紹介されていますが、過去の他会派議員への答弁によると、この科目では、みずから調べたり体験したりしながら理解を深めることに主眼を置いているとのことです。


 ところで、このことに関連して、前回定例会で区長招集あいさつにも引用された世田谷ゆかりの民族学者、「遠野物語」で有名な柳田國男という人がいます。柳田は兵庫県の生まれですが、一九二七年、五十二歳のときに今の成城に家を建てて、そこを拠点として、日本の伝承や伝統的な言葉、固有の信仰などの収集、研究を行い、戦後は次代を担う若者たちのため、日本人のアイデンティティー確立を目指した活動を行ったそうです。
 その蔵書は遺言により成城大学に寄贈されています。文献研究以上にフィールドワークを重視し、日本の郷土、日本人の文化を明らかにしていった柳田國男の業績が教科書に出てこなかったので、残念と思った次第です。多量の文献を読み解き、さらに自分の目で見て、足で歩いて情報収集をし、物事の真偽を見きわめ理解を深めていく、この姿勢こそがメディアリテラシー教育の根本だと思います。


 区では、この根本をどのように子どもたちに習得させていく考えなのでしょうか。「日本文化」の授業において、子どもたちが体験することの重要さを実感し、体験によって何かを得たいという態勢にならないことには、せっかくの体験的学習も授業の中でのお仕着せにとどまってしまうと危惧されます。見解を伺います。


 次に、福祉施設での身体拘束をなくす取り組みについてお尋ねします。
 高齢者の自立支援と尊厳の保持を基本理念とする介護保険制度が始まって八年がたち、身体拘束は違法であるとの認識は広まりつつあります。ことし八月には名古屋高裁で、福祉施設ではなく病院ですが、入院患者の身体拘束は違法とする判決がありました。介護報酬の引き下げ、人材不足など厳しい環境のもと、現場では第一に事故を恐れますから、利用者がベッドや車いすから転落しないよう、依然として身体拘束が常態化している面もなきにしもあらずといった中、この判決のインパクトは、施設側にとっても、利用者側にとっても大きなものと思います。


 さて、現在、介護施設での身体拘束の状況はどうなっているのか。やむを得ない場合に関しても、家族に納得のいく説明を尽くし、事前に文書で同意を得るといった手続が徹底されているかどうか、区は実態を把握しているのでしょうか。


 身体拘束の実態把握や改善のためには、施設長会議などでの周知徹底はもちろん、通告なしの立入調査の実施、大阪市のような市民オンブズマンによる評価、また、今回、我が会派の代表質問で提案をしたインスペクター制度など、介護の質を担保するための、さらに踏み込んだ取り組みを進めていただきたいのですが、区の見解を伺います。


 また、身体拘束はいけないからといって、厳しい指導だけでは現場のモチベーションも上がりません。事業者や働く人を支援し、進んだ取り組みに評価をしていくことが重要です。身体拘束に限らずですが、質の高いサービス提供に取り組む事業者には、まちづくりファンドのようにコンペを行って助成したり、例えばせたがや介護大賞といったものを創設し、「せたがや介護の日」で表彰するなど、現場の意欲を高める施策の実施も検討すべきと考えます。区のお考えをお聞かせください。


 最後に、ITを活用した医療・介護情報の提供についてお伺いします。
 今行われている介護保険制度改定の議論において、医療と介護の連携は一層重視されています。介護度の重い方、医療ニーズのある方でも自宅で暮らすことができるよう、経管栄養やたんの吸引に対応する、仮称療養介護士の創設も打ち出されました。介護の領域に経管栄養という文言が入ったことは、業界的にはすごいことです。かつて本区でも、経管栄養のため、ショートステイ、デイサービスも利用できず、老老介護の末、介護者が倒れるぎりぎりのところで要介護者がお亡くなりになったという悲しいお話もお聞きしています。ここに来るまで本当に長かった、やっと制度が現場のニーズに追いついてきたと感じていますが、人材の育成、サービスの普及にはまだまだ相当な時間を要するものと思います。


 翻って現状を見ると、家族やケアマネジャーが必死で老健や療養型の施設を探しまくり、限られたパイを争っているのが実態です。介護保険事業状況報告からは、平成二十年一月時点で、世田谷区民の老健入所者のうち約四割が区内施設ではなく区外の施設に入所していることがうかがえます。
 この状況の改善に当たっては、あんしんすこやかセンターを基盤とした在宅移行への支援ができる力量あるケアマネの育成、地域の支えあいづくりなど、課題が多々考えられますが、区民、事業者への当面のサポートとして、ホームページの拡充ということが挙げられます。


 今は区のホームページで区内及び近隣区の施設情報を掲載しています。しかし、二十三区内の施設に入所するのは激戦ということを考えると、都下や近県などの情報もできる限り網羅してほしいものです。また、事業団に委託している在宅医療電話相談センターの職員が施設訪問をして情報収集しているということでしたから、得られた情報はそこだけで囲い込まないで、あんしんすこやかセンター、居宅介護支援事業者、病院、福祉施設などの相談員、区民など、だれもがアクセスできるホームページで提供するよう、でき得る限りの工夫をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。


 これで壇上よりの質問を終わります。(拍手)

◎髙山 教育改革担当部長 教科「日本語」につきまして二点ご質問をいただきました。


 最初に、メディアリテラシー教育と今後の教科「日本語」の取り組みについてでございます。
 情報社会にあって、多くの情報の中から必要な情報を取捨選択したり、あるいは判断したり、逆に正しい情報を発信したりなど、メディアリテラシーを育成することは重要な課題であると認識しております。


 現在でも、小学校では五年生の社会科で新聞や放送などの学習を通しまして、相手のことを考えて情報収集したり、発信した情報に責任を持ったりすることの大切さについて学んだり、インターネットから必要な情報を検索してまとめる授業を行ったりするなど、小中学校を通しまして、子どもたちにメディアリテラシーをはぐくむ教育活動に取り組んでいるところでございます。


 また、古典につきましては、日本語の響きやリズムを楽しむことをねらいとして、小学校の教科「日本語」で取り上げており、中学校の国語の授業では、古典の学習を通して、我が国の文化や伝統について関心を深める教育を行っています。


 今後の教科「日本語」でございますけれども、新学習指導要領の実施に伴う中学校の必修時間数や指導の充実などにつきまして、学校とも連携しながら検討を進めまして、世田谷区の子どもたちが日本語の豊かさに触れ、深く考えること、自分を表現すること、日本文化を理解し継承することを学ぶことによって知力を高め、心を豊かにすることができるよう努めてまいります。
 次に、「日本文化」の授業の中の体験についてでございます。


 教科「日本語」の三つのねらいのうち、日本の文化や伝統に対する理解を深め、それらを大切にする態度を育成することが「日本文化」領域のねらいでございます。


 教科「日本語」の「日本文化」領域の教科用図書は、これを学ぶ中学生が、自分たちの身近な日常生活の中にも長い年月を経て伝わってきた日本の文化や伝統が生きていることに気づいたり、それらの豊かさや価値について理解したりすること、そして、それらの文化や伝統の学習は、これからの自分たちの生活を豊かにしていく契機となるようにと考えてしてまいりました。したがって、教科用図書で扱っている内容につきましても、日常生活の基盤である衣食住を中心に、身近な生活の中から幾つかの話題を取り上げたものとしております。
 区教育委員会といたしましては、教科「日本語」の「日本文化」領域を通して、生徒自身がみずから調べたり体験したりしながら、日本の文化や伝統についての理解を深め、それらを大切にする態度をはぐくんでいきたいと考えております。


 以上です。

◎秋山 保健福祉部長 福祉施設での身体拘束をなくす取り組みの推進についてでございます。


 特別養護老人ホームなどの福祉施設においては、高齢者の転倒、転落防止や徘徊による事故防止など安全を確保する観点から、従前は車いすへの身体固定やベッドさくの設置などが行われておりました。しかし、こうした行為は、ご本人の身体機能の低下や精神的な苦痛を与えるなどの弊害をもたらすため、介護保険制度導入時に、生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、原則的に身体拘束はしないことが明記されました。

 身体拘束の状況につきましては、平成十九年度に区内の特別養護老人ホームなどを対象に身体拘束ゼロに向けての取り組みの状況を把握したほか、第三者評価の受審を通して点検を行っております。また、地域に開かれた施設として、多くのボランティアを初めとする区民の目が入ることが大切だと思っております。


 区といたしましては、施設長会や実地指導の中で、日常のケアの自己点検などの周知を図りながら、今後も身体拘束のない介護を目指し、高齢者の尊厳の保持を図ってまいります。


 次に、質の高い事業者を評価し、現場の意欲を高める施策の実施についてでございます。


 身体拘束のない施設介護を実現するには、施設管理者を初めとするすべての職員が正しい認識と、ケアを提供する上でのさまざまな工夫と努力を継続すると同時に、本人、家族に対する丁寧な説明が肝要であると考えております。
 また、施設長会による自主的な研修の実施や、区内の各施設においては、身体拘束ゼロに限らず、日中のおむつ利用率ゼロを目指した取り組みや口腔ケアの徹底などにより、高齢者がもう一度自立した生活に戻るなど、さまざまな先進的な取り組みを行っており、こうした活動を施設内のみならず全国に向けて発表し、ケア技術の向上に取り組んでいるところもあります。


 区では、今年度より介護への理解促進を目的に「せたがや介護の日」を設けるとともに、あわせて事業者や大学、区民の参加によるせたがや福祉区民学会の準備会として、十二月六日に実践活動の発表を行うこととしております。
 今後、先進的な取り組みについては、こうした機会を通じて発表や周知の機会を設けるなどしながら、現場の従事者の意欲向上につながるよう取り組んでまいります。


 ITを活用した医療・介護情報の提供についてでございます。
 医療や介護が必要な区民や相談支援を行う事業者が医療・介護サービスについての必要な情報を容易に把握できるようにすることは大変重要であると認識しております。ITを利用した医療機関や介護事業者への情報提供といたしましては、現在、東京都の医療情報案内サービスひまわりや、都や区の介護事業者情報があります。


 区の介護事業者情報では、基本的な情報以外にサービスのあき情報も提供しております。このほか、独立行政法人福祉医療機構が運営する全国的な総合情報や、民間で運営する情報サービスも数多くあります。こうした多くの情報がある中で、区民の方が必要な情報をできるだけ早く得られるよう、ホームページにおいて目的に応じた情報を見やすくするための工夫や情報掲載範囲について検討してまいりたいと考えております。


 また、在宅医療電話相談センターで収集している情報につきましては、あんしんすこやかセンターとの情報交換の場を通し、病院や老人保健施設等への情報シートの提供、相談事例集の配布などを今後行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。

◆二十六番( 中塚さちよ 議員) それぞれご答弁いただきましたが、まず教科「日本語」ですけれども、本年は若井田教育長の教育委員の今期の任期が満了ということで、この教科「日本語」について、これまでの振り返りや評価ということを考えていく一つの節目かと思いまして、こうした質問をさせていただきました。学力の基盤が言葉にあること、言葉の力ということというお考えは全くそのとおりというふうに思っておりますので、日本語、日本文化ということを、せっかくの特区ということでの取り組みですから、ぜひこの日本語、日本文化の王道、神髄というものを、子どもたちにそのエッセンスだけでも伝えていってほしいと思います。
 身体拘束についてですけれども、区のほうでもいろいろと身体拘束について調査をしてくださったりしておりますが、事前に通告をしてから調査に入るということですと、現場のほうでは、やはりまずいところは隠そうということにもなってしまいますので、事前通告なしで、また、現場にとってはプレッシャーではない形ということを考えますと、地域の方々、また、そうした専門職の方々に入ってもらうというのはとても重要なことだと思います。本人ですとかご家族の方は、今介護の現場が大変だということを重々わかっておりますので、そういったことも我慢して言えないのが現実だと思いますので、ぜひそうしたところを、区のほうからしっかりと見ていっていただきたいと思います。
 ITを活用した医療・介護情報の提供ということですけれども、これについては情報交換の場などをつくっていくということですが、あんしんすこやかセンター等についてどれぐらいのめどでそうしたことをやっていく予定でしょうか、具体的な期限みたいなのはありますか。

◎秋山 保健福祉部長 あんしんすこやかセンターとの情報交換の場は、今現実に取り組みについて着手しておりますので、そういったあんしんすこやかセンターとの情報交換の場を通しまして、医療電話相談室が持っています情報をあんしんすこやかセンターのほうにも流していきたいというふうに考えております。

◆二十六番( 中塚さちよ  議員) 今、本当に家族の方々が自分で探していて困っているという相談をたくさん受けますので、あんしんすこやかセンター、区民の方も……。

○大場やすのぶ 議長 以上で中塚さちよ議員の質問は終わりました。