朝早く潤から連絡が入った。
縁翔が熱を出したから姉ちゃんが縁翔を病院へ連れて行く都合上、陽縁と留守番することになったから診療所を休む。申し訳ないと。
いやいや、申し訳ないなんて言わないでくれよ。
困った時はお互い様だ。
オレだって何度も雅紀とのことで休ませてもらったり遅刻早退させてもらってるんだ。
斗真もオレも智くんもニノもいるから診療所のことは心配しなくていい。
もしも万が一、陽縁も熱を出したらそれこそ2人が完全復活するまで休めるようにいくらでも調整するよ。
そう言うと潤はホッとした口調になった。
なんなら姉ちゃんだって気負いすぎる癖があるから、そっちもよろしくなと言うと、お前に言われなくても大丈夫だって言い返された。
さすが潤だな。櫻井姉弟の扱いはお袋の次に上手いわ。
枕元にスマホを置くと、むにゃむにゃ言ってる雅紀の胸にまた引き寄せられた。
「誰かが熱出したの?」
「縁翔がね、熱なんだって。陽縁は今のとこ大丈夫らしいけどね」
「リレー方式で熱が出ることもあるんでしょ?」
「ああ。双子だけでなく、兄弟あるあるだけどな」
「そっか。さて、起きますか」
「だったらこの腕を離してもらえます?」
「くくくく」
「ふははは」
ぎゅうううーーーーっと力いっぱいオレを抱きしめながらベッドをゴロゴロする雅紀。
オレは雅紀に振り落とされそうで怖くなって背中に手を回して必死にしがみつく。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「うおお、こえぇ、こええって!!」
「じゃ、チューしてくれたら止めてあげる」
「なんだそれ」
仰向けになった雅紀を見下ろす形になったオレは幸せそうにくふくふ笑ってる雅紀の唇にキスを落とした。
「くふふ」
「飯食って支度するぞ。玄関での待ち合わせ時間に遅れるなよ?」
よいしょって雅紀の手を引いて起こすと、雅紀は松葉杖をつきながらリビングへ向かう。
オレはその背中をそっと支えながらゆっくり歩き出した。
「今日トーストとサラダね。翔ちゃんは冷蔵庫からレタス出して」
「はーい。レタスってこれ?」
「翔ちゃん。それはキャベツです」
「スミマセン」
慌ててキャベツをしまってレタスをまな板の上に置いたら、ご褒美のキスが頬に降ってきた。
ふへ。
ふへへへ。