あれから2週間が過ぎた。
相変わらずキャンパス内で彼女はオレたちのことを監視するかのように付かず離れずな距離のままだ。
かといってなにかをしてくるわけでもなく話しかけてくるわけでもないから、オレたちも何事もなかったかのように振る舞い続けていた。
とはいえ、オレが1人になることのないように毎朝滝沢と共に大学へ行き、滝沢と共に帰ってくるという非常に面白い構図が完成しつつあった。
「滝沢ー。オレたち付き合ってんの?」
「付き合ってんじゃね?」
「そーそー。イケメンツインタワーwww」
「そーそー!ツインタワーと言うほど高身長ではないけど、イケメン度としてはツインタワーよね」
オレの問いかけに滝沢が応じるとブッキーも隆ちゃんも乗ってきて学食で大爆笑なう。
「彼女、なんで何もリアクションねぇのかな」
「そんなの簡単だろ。俺たちが何の反応もしねぇからよ」
「だよな。無視することほどキツいもんなねぇよ。だって相手の存在そのものを抹殺してるようなもんだろ」
「無視はしつつも向こうのことも監視はしてっけどな」
なー、なんて言いながら本日の日替わり定食を頬張り、4人でガサガサとレポートを書き始めてはキャッキャウフフしたりガハガハしたりして盛り上がっていた。
「あ、みんなに言っとくわ。雅紀に夏のオープンキャンパスに来ないかって誘いかけたら、彼女が監視してる手前怖いって言うんだよ。でもこの大学を受験の視野に入れてるアイツにはやっぱり来て欲しいって思っててさ」
「そーだよな。つか、本気で雅紀はここを受験する気なのか?アイツの偏差値を翔は知ってるだろ?」
「待て。滝沢。お前が知ってるのはお前と付き合ってた頃の雅紀の偏差値だ。アイツは変に固定観念がない分ある意味スポンジみたいに色んなことを吸収してんだ。めっちゃ伸びてるからな!模試の結果を見て恐れおののけ!!!」
「何をドヤ顔で自慢してんだ、翔は」
雅紀のことで2人でキャンキャンと吠えあっていると、ブッキーと隆ちゃんが盛大なため息をつきつつも、笑っていた。
「バンビとタッキーが過去に取り合ってたカレシ、やっぱり俺は会ってみてぇわ」
「だよな。今でもこうして溺愛してるなんてすげぇわー」
「どの面下げて言ってんだ、お前は。俺から奪い取るだけ奪い取りやがって」
めっちゃドヤ顔で滝沢の肩を抱きながら雅紀の自慢をすると、周りにいた学生たちから悲鳴があがった。
「は!?なになになになに??は??」
「ったく!離せや!この天然爆弾が!!」
アタフタするオレの手を、真っ赤になった滝沢が振りほどく。
あ、そうだ。オレたちはちょっと違った角度から注目の的だったんだ。
「ショーン、この際だからタッキーと付き合ってる疑惑、広げてしまえ」
「そーだそーだ。バンビと滝沢、お似合いだぞ」
涼しい顔で言ってのける隆ちゃんとブッキーをちょっと睨んだ。
もう!
勝手なこと言いやがって!!!
むうううってしながら滝沢に助けを求めると、まだ真っ赤になったままの滝沢がついーーって目を逸らした。
その顔やめろ!滝沢💢