さて、そろそろ晩御飯の支度…と思い立ったけども。
「雅紀。大変だ」
「なに」
「腹が減ったんだけど、オレは何も作れない」
「いや、知ってるし」
「そして立つことに不自由なお前は飯の支度はもっと不便だ」
「そらそーだろ。何をいまさら」
「どうする」
「いやいやいやいや。どうするもなにも(笑)(笑)」
夕方5時すぎになってから急に気になり始めた。
いや、朝飯は食わずに寝てたし。なんなら昼飯も適当にUberさんのEATSくんで調達したわけだし。
さすがに毎食外食というわけにはいかない。
なにせ2人で生活していくということはその先の設計図も考えていかないといけないわけで。
やっべ。
…ピンポン…
「はーい」
『翔。晩御飯持ってきたぞ。どーせお前はなんも考えてなかったろ?新居にまた上がり込むほど野暮なことはしねぇからちょっと出てこい』
「ありがたき幸せ」
『早く来い。10秒以内にだ!』
インターホンを鳴らしたのは潤だった。
慌ててマンションのエントランスに出ると潤は両手いっぱいの紙袋に詰め込んだタッパーを持っていた。
聞けば昨日引越しの手伝いをしてくれたあとにお袋と姉ちゃんと潤とでとりあえずは一週間ぶんの食料を大量に作ってくれたとのことだった。
趣味の延長で雅紀は料理が好きだとは聞かされていたし、その話もみんなにしたこともあったけどなにせまだ事故から日が浅いしリハビリもスタートしたばかりだし生活も落ち着かないからということでいらぬお節介だとは思ったけどなんて言いながら潤が渡してくれたものをありがたく受け取った。
「マジでありがとう」
「だろ?華とお袋さんに感謝だな。俺たちもそろそろ翔が使ってたマンションに引っ越すからさ。そんなに構ってやれなくなるけどそこは勘弁な」
「いやいやいやいや。マジでっかい感謝です。ありがとう!!」
「アイツにもよろしくな。無理しすぎねぇように。それから俺の病院から連絡も来てさ。三週間後には坂の下動物病院に戻れそうだって」
「そっか。良かった…姉ちゃんと赤ちゃんのこと頼むわ」
「任せろ…なんてな。じゃあな」