潤の車に乗って自分のマンションへ帰る。
潤は診療所に来る前に実家に立ち寄って姉ちゃんから今日の晩御飯を受け取って来てくれていた。
いくら実家とオレのマンションが近い距離とはいえ、仕事終わりに実家からマンションに来てくれるのは大変だろう。そう言うと、潤はドライブがいい気分転換になるんだと笑ってくれた。
それに仕事と関係なく実家でMJと遊び、マンションで蒼翔と遊べるだなんてこんなオイシイことあるかって。
2人で晩御飯を食べながらチビチビと飲んでいると、不意に潤が口を開いた。
「なぁ。俺が動物病院に異動になって1年も経ってねぇけどさ。ニノに頼んで坂の下動物病院に戻してもらおうと思うんだ」
「は!?」
「いや。なにもお前の彼の問題だけじゃねぇんだ。華も出産を控えてるしさ。里帰り出産ってわけじゃねぇけどまた近くで部屋を探してさって思ってんのよ」
「...そっか...姉ちゃんもそろそろ予定日が近いよな。予定日は4月だもんな」
「年度始めにちょうどいいだろ?お前も彼が退院したら大学の近くに部屋を借りる計画も実行しやすいだろ?なにせ頼りになる獣医師が診療所に戻って来るんだかんな?な?」
「...ん、そうだな」
潤が戻ってきてくれるのは正直めっちゃ嬉しい。
嬉しいけど、潤の腕を信頼して頼りにしていたからこそ、今の動物病院に異動になったんだろ?
こんなタイミングで戻るなんてこと出来るんだろうか。
「ニノにゴリ押ししてやる。もともとアイツが俺を連れ去ったようなもんだしな。はははは」
「笑ってられっかな」
「なんとかなるさ。大丈夫だ。俺もお前も彼も華も」
「ん」
潤は潤の膝に頭を乗せて寝ている蒼翔の背中をわしゃわしゃしていた。
雅紀の事故のことで忘れかけそうになっていたけど、雅紀の入学式の頃には姉ちゃんのお腹の赤ちゃんも産まれる頃なんだよな。
母親になる姉ちゃんと、父親になる潤にいつまでもオレは甘やかされてる場合じゃねぇんだよな。
「え?なぁ、潤...これって...」
「ああ。そういうことなんだ。だからこっちに戻る決意も固まったっつーわけよ」
潤が見せてくれたエコー写真を見たオレは固まった。
だって。
「そっか」
「ああ。お前と華と一緒だよ。双子だ」
双子の胎児のエコー写真だったんだ。
オレと姉ちゃんと同じ...。
そうか。
そうなんだな。
ちゃんと2人揃って産まれてこいよ。
な?
エコー写真を撫でてから胸に抱きしめた。