Sounds of joy269 | 愛すべき櫻葉の世界

愛すべき櫻葉の世界

甘々櫻葉と翔ちゃんへの愛を甘くおしゃべりしてます♡



岡田先生と担当看護師さんによって雅紀のストレッチャーが病室へ運ばれていく。

それについてオレとお袋も歩いて行くと、一足先に病室に戻っていたお母さんがお父さんに肩を抱かれてソファーに座っていた。


ベッドに戻された雅紀の手が彷徨うようにオレの手を探している。

その手をしっかり握りしめながらネクタイと合格祈願のお守りを約束通りに雅紀の左手首に巻き付けた。

ちょっと照れくさそうに恥ずかしそうに笑った雅紀の視線がふとオレのお袋をとらえた。

そしてめっちゃ緊張した顔になった。


そりゃそうだろ。

なにせお袋と雅紀は初対面なのにこんなイチャイチャしてんだからな。


そんな雅紀の表情を汲んだお袋は雅紀の頭をポンポンとして笑って言ったんだ。

「はじめまして、雅紀くん。翔の母親です。驚かせてごめんなさいね?いつか2人で家に遊びにいらっしゃい。食べすぎてお腹が痛くなるほどのご馳走を作って待ってるから。合格祝いと快気祝いを一緒にやりましょうね?待ってるわ」

「お袋...さっきと言ってることがめちゃくちゃじゃんか」


「バカね。そんなこと無いわよ」

「ったく...」

「ありがとうございます...」


ポロポロ泣き出した雅紀の頭を何度も何度とお袋が撫でる。

そんなお袋をお父さんもお母さんも目にいっぱい涙を溜めながら見ていてくれたんだ。


そしてお父さんとお母さんに会釈をして病室をあとにするお袋に2人は挨拶をしてくれたんだ。




それから術後の雅紀のリハビリスケジュールや今後のおおよその副作用なんかをあれこれと細かく説明してから岡田先生は部屋を出て行った。

部屋を出る時にオレの肩をポンと叩いた時の顔は『岡田先生』ではなく『岡田さん』に戻っていた。

なんだかそんな顔の岡田さんに安心した。


「翔くん。今日といい昨日といいありがとうな。お母様にも感謝してもしきれないよ...」

「いえ、こちらこそ...むしろ何も出来なかったかもしれませんが...とにかく手術が無事に終わって安心しました...あ。それから蒼翔のことですが。しばらくオレに預からせてください。日中は診療所へ連れて行きますから。裏庭で太陽と一緒に遊ぶことで蒼翔の気分も変わるでしょうから」


オレの申し出をお父さんもお母さんも遠慮しようとしていたけど、これだけはオレは譲りたくなかったんだ。蒼翔の健康状態や精神的ストレスだけでなく、お父さんやお母さん、雅紀のためにも。


そういうと、お父さんはオレの手を両手で握りしめて何度もお礼を言ってくれた。

だけどお礼を言うのはオレの方だよ。


「お父さん。お母さん。オレを雅紀のパートナーとして認めてくれてありがとうございます。本当にありがとうございます...」

「翔くん。雅紀を頼む」

「翔ちゃん、よろしくね」


オレたちの会話を聞きながら、雅紀はベッドで大号泣しながら怒り出したんだ。


「俺も構えよ!!俺だけ仲間はずれみたいじゃんかーーー!!」

って。


病室内は泣き笑いの声に包まれていたんだ。