それから雅紀とお母さんとオレは病室に来たお父さんと岡田さんから詳しい治療について聞くこととなった。
粉砕骨折は骨がバラバラに砕ける骨折のために強烈な痛みが主な症状になる。
そして皮膚の壊死や感染症などの合併症の可能性もある。
病原菌が骨内やその周辺に入り込むと感染症を患い、完治が遅れる傾向にもなってしまう。
骨の内部が化膿しているような場合には骨の内部を洗浄さる必要もあり、その際には相当な治療時間が必要になり、長期間に渡って日常生活へ影響が出てしまう。
内部洗浄が必要ではなくても、およそ1ヶ月の入院が必要となり、状態にはよるが完治までは半年から1年がかかる。そして歩くためのリハビリ期間は半年はかかり、1年以上を要するケースもある。
つまりは。
「父ちゃん車椅子の生活の可能性は…」
「ああ。骨の内部の状況やお前の頑張り次第だがな。上手く行けば補助具を使いながらなら歩けるようになるだろう」
「良かったわ…」
「まさ、き…っ…」
「おいおい。櫻井。今度はお前が泣くのか?」
「…っ、ふっ…」
雅紀より先に泣き出したオレを見てお父さん、お母さん、岡田さん、雅紀が目に涙をいっぱいためて笑った。
良かった、雅紀。
歩けるようになるんだな。
手を繋いで横に並べるんだよな。
同じ目の高さで同じ風景を見られるんだよな。
とにかく今は痛み止めの対処をしているけど、痛み止めの効果が切れた時には辛いはずだ。
今回の雅紀のケースはバラバラになった骨に金属板を当てて固定する必要がある。
その手術の日程調整も始まり、それは明日に決まった。
「雅紀。俺たち医療チームは最大限のことをするつもりだ。お前に頑張れと言った以上、それ以上に頑張らなければならない義務が我々にあるからな。だからお前も…」
「大丈夫。たぶん大丈夫…」
お父さんの言葉に震え声で雅紀が言った。
そう言いながらベッドの上からオレの方に手が伸びてきたんだ。
そう。
オレを必要としてくれているんだ。
泣きじゃくっていたオレは袖でグイッと涙を拭ってからベッドから伸びてきた雅紀の手をしっかり掴んだ。
雅紀が前を向こうとしているんだ。
そう思えるようになってくれたんだ。
その気持ちがまた嬉しくて拭ったはずの涙がまた溢れ出した。