翔ちゃんが買ってくれたお守りをスマホから外して左胸のポケットに入れた。
翔ちゃんがくれた参考書もカバンに入れて大学の試験会場まで持ってきた。
翔ちゃんと一緒。
翔ちゃんも一緒。
だから大丈夫。
やれることは全部やってきた。
底辺レベルの成績だった俺は1年間の浪人生生活を経たことで勉強量はとんでもなかったはずだ。
だから大丈夫。
そう言い聞かせた。
さぁ、翔ちゃん。
そろそろやっちゃいますかね。
「では、試験開始」
試験監督を務める大学職員の声に一斉に問題用紙と答案用紙をめくる音がする。
その音を聞きながら冷静さを取り戻すために胸ポケットのお守りをそっと押さえて深呼吸をした。
よし。
大丈夫。
やれる。
午前中から午後までまるまるかかった試験が終わった。
1年前の模試の時には全く手応えが無かった俺だけど、今日は違う。絶対合格出来てるはずだという根拠の無い自信があった。
2ヶ月後の入学式にはスーツを着てここを歩いているはずだ。
そして講義が始まったら翔ちゃんの白衣を着て翔ちゃんの聴診器を胸に毎日をここで過ごしているはずだ。
試験を終えて大学から出る時に大きく膨らんだ桜のつぼみを見つけた。
ねぇ、翔ちゃん。
今から会いに行っていいかな。
【試験終わったよ。診療所に行っていい?】
【お疲れ様。待ってる】
翔ちゃんにメッセージを送るとすぐに返事が来た。きっと翔ちゃんはソワソワしながら診察をしていたんだろうな。
早く行って安心させてあげたい。
そう思った俺は気づいたら駅までダッシュしていたんだ。
翔ちゃん。
翔ちゃん。
翔ちゃんがいてくれたから頑張れたんだ。
貴方の存在が俺を支えてくれたんだ。