お腹が痛い。
安定期に入ってしばらく経つ。
仕事の方は忙しくなる前にと早めに上司が産休を取らせてくれた。
職場に恵まれてると思う。本来ならまだ働けるはずだけど女性が多い私の会社は融通が効くのかもしれない。
「潤…じゅ、…っ…」
まだ潤は帰ってきていない状況の中、台所でお気に入りの紅茶を入れようとしていた時にあまりの激痛にしゃがみ込んだ。
どうして?
赤ちゃんに何かが怒っているの?
どこか痛いの?
健診では問題なかったわよね?
「いたっ…い…潤…ママ、翔…助けて…」
痛みに襲われて意識が遠のきそうになる。
だけどここで意識を失ってたまるもんですか。
とにかく助けを…。
うずくまりながらもどうにか這ってスマホを手に取った。
そして画面をタップして助けを求めた。
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ん?
こんな時間に姉ちゃんから着信?
昼休憩の時におにぎりを頬張っていると、スマホの画面に姉ちゃんの名前が浮かんだ。
「姉ちゃん?どした?」
『いた、い…たすけて…』
「は!?どうした!今は家にいるのか??潤は仕事?お袋は!?」
『しょ、う…ごめん…』
弱々しい姉ちゃんの声だった。
きっと昨日の夜LINEをしていたからオレの名前が一番上にあったからオレに助けを求めたんだろう。
とりあえずバタバタと慌てだしたオレを見て智くんが車を出してくれることになった。
「翔ちゃん!おばさんにも連絡入れて!おばさんにはタクシーで華ちゃんちに向かうよう伝えて!そらから斗真!斗真は松潤に連絡だ!!」
「分かった…」
「はい!!」
テキパキと智くんがオレと斗真に指示を出す。
その間ニノは診療所の入り口に『臨時休診』の札をかけてくれた。
「行くぞ翔ちゃん!」
「ありがとう、智くん」
「翔!!潤もすぐにかかりつけ医の所に向かうってレスが来たから華に会ったら安心しろって伝えとけ!!」
「斗真もありがとう!」
智くんの車の助手席に飛び乗った。
そして姉ちゃんのスマホに電話をかけながらバクバクと鳴り響く自分の心臓を必死で押さえた。
どれだけ呼出音が鳴っても姉ちゃんは出ない。
あの後気を失ったのかもしれない。
翔さん。
翔さん。
姉ちゃんと赤ちゃんを守って。
お願いします!!!
オレはあの車椅子の翔さんに必死に祈り続けていた。
どうしてか分からないけど、気づいたら翔さんの名前を必死に呼んでいたんだ。