翔ちゃんが卒業して1ヶ月が過ぎた。
4月も下旬だ。もうすぐ約束したゴールデンウィークの旅行の日がやってくる。
そう思うと俺は嬉しくてたまらない。
卒業式の日に翔ちゃんがくれた制服とネクタイがいつもそばにいてくれてる。いずれ翔ちゃんの匂いはなくなってしまうだろうけど、これを着ると翔ちゃんに抱きしめられてるような気がして嬉しい。
そしてちょっと迷ったけどワイシャツもオネダリしてもらってしまった。
「んだよ。汗くせぇぞ?…洗濯はしてっけど」なんて言いながらもコメカミをポリポリしながら長袖のワイシャツと半袖のワイシャツをくれた。
何気ない時に校庭を見てはちょっとため息が出そうになる。
だけど俺はいいことに気づいたんだ。
ここは3年生の校舎ということは、翔ちゃんがいた場所なんだ。翔ちゃんがいたのは3年2組だけど、俺がいるのは3組だ。そこはちょっと残念だけどさ、教室の入口にある『3年2組』の札を見上げる度にニヤニヤしてるのは翔ちゃんには内緒だ。
「あの、相葉くん相葉くん」
「なに、松潤。改まって」
「ちょっとまーと風間ぽんに相談したい事があってさ。」
「なになに」
「どした?」
松潤がちょいちょいって手招きをして俺と風間ぽんを呼ぶ。
話を聞いてみたら……
「ええええええーーーー!!」
「マジでぇーーーー!!!」
「ああああ、うるせぇな!そんなビビることか!」
いやいやいやいや。
ビビるだろ。
そりゃあビビるっしょ!!!!
だって。
松潤が俺たちに見せてきたのは紙袋に入れられた(というよりぶち込まれた?)数人分の手作り弁当だったんだ。
松潤、めっちゃ女子にモテてんな!
「で、どうすんの、それ」
「まさか食べるのか?食べたら気持ちを受け入れることになるんじゃね?つか何人から貰ってんだよ」
「貰ってねぇよ。押し付けるだけ押し付けてアイツらダッシュでいなくなるんだもん。このまま返すよ」
「だよな」
「松潤……なんか大変そうだけど、俺はお前が羨ましいわ……」
「ははははははは。いや、正直嬉しくはあるかもしんねぇけど、ちょっと……迷惑だわ……」
風間ぽんのつぶやきに笑いながら松潤はやれやれって顔をしてた。
ねぇ、翔ちゃん。
松潤も風間ぽんも元気だよ。
俺はこうして2人と一緒に笑ってるよ。
少し緩めた翔ちゃんのネクタイの内側で揺れるクローバーのネックレスにそっと触れた。