🎶〰️🎶〰️🎶〰️
診療所のデスクでスマホが鳴ってる。
この時間に電話をかけてくるのは…てか、そもそも電話をかけてくるのなんて1人しかいない。
「雅紀?」
『しょ、ちゃ……』
「どうした?泣いてる?」
『んなことねぇ…』
「嘘だろ」
『しょ、ちゃ、ん』
「待ってろ。今から行くから、あの公園まで出られる?」
『でも、仕事…』
「ばーか。もう診察は終わったよ。今から帰るとこだし。待ってろ。な?」
『ん』
何があった。
何がお前を泣かせてる?
オレが行くことでその涙が乾くのならすぐにだって飛んでいくに決まってんだろ。
もうすこしやりたいことがあるという斗真に鍵をかけることを託して、原チャに飛び乗った。
「翔!くれぐれも安全運転だぞ!お前に何かあったら泣くのはアイツなんだろ!?」
「ああ、分かってる!!じゃ、あとは宜しくな!」
診療所の窓からオレに注意を促す斗真に手を振ってから原チャを走らせた。
そして。
あの公園のベンチが見えてきた。
そして紙袋を抱えて丸くなってる小さな背中も。
公園の外で原チャのエンジンを切って静かに歩み寄る。
オレが近づくことに気づいていない雅紀の背中を後ろから抱きしめた。
「ただいま。どうした?」
「しょ、ちゃ、ん……?」
振り向いた雅紀の目は真っ赤になっていた。
お前はどれだけ泣いてたんだ?
ベンチを跨いで雅紀の正面に立ったオレは愛しき人を胸にしっかり抱きとめた。
細くて柔らかな髪に指を滑らせながら何度もその髪にキスを落とした。
雅紀はただただオレの腹に顔を押し付けて静かに泣いていた。