Sounds of joy206 | 愛すべき櫻葉の世界

愛すべき櫻葉の世界

甘々櫻葉と翔ちゃんへの愛を甘くおしゃべりしてます♡



「ただいまー」

「雅紀、おかえり…お父さんが部屋に来いって」


「え?」

「話があるって言ってるのよ」


予備校から帰ってきたら母ちゃんが目を伏せながら口を開いた。

俺が獣医学部を受験することをいまだに認めてこない父ちゃんとはずっと冷戦状態のままだった。

そんな父ちゃんが部屋に来いとはなんだろうか。


とりあえず自分の部屋に入って目の前の風景に愕然とした。



ない。


ない!!!


ない!!!!!


机の上に積んであった翔ちゃんからもらった大切な本や参考書がない!!


まさか!?

つか、そんなことをするのはたった1人しかいない。

翔ちゃんがどんな思いで本や参考書たちを俺にくれたと思ってんだよ!

受験勉強をした頃のままであろう付箋を貼りまくっていたり書き込みがたくさんしてあるあの参考書を俺にくれた翔ちゃんの気持ちを土足で踏みつけるようなことをするんじゃねぇ…!!





バン!!!!



ノックもしないで父ちゃんの仕事部屋のドアを勢いよく開けた。



目の前にはどっかりとソファーに座って俺の大切な翔ちゃんの本をペラペラとめくっている父ちゃんがいる。


触るな。

俺のだ。

俺の翔ちゃんのだ。


ツカツカと歩いて行ってその本や参考書を父ちゃんの手から奪い取ると、持ってきた紙袋に入れた。




「触るなよ。俺のだ」

「誰からもらった?」


「言わなきゃダメなのかよ」

「ああ。聞きたいね?誰がお前に獣医として興味を持たせたか俺は興味がある」


「言っても言わなくてもどうせ認めねぇんだろ」

「そうだな」


「とりあえず今のところの全国模試の結果だよ。今日もらってきた」

「どうだかな?」


鼻で笑う父ちゃんの目の前のテーブルに全国模試の結果の紙を叩きつけた。



医学部  C判定

獣医学部C判定



どっちも結果を見せてやるよ。

俺がどれだけの思いで努力してきたか。

去年の今頃からは想像出来ねぇくらいの成果をここまで出してやったよ。



「Cか。そんな程度しか取れないのか」

「まだ途中だ。まだ先はあるからな!とにかく俺の本には触るな!!!!」







笑いたきゃ笑え。


だけどな。



俺の気持ちは本物なんだよ。




父ちゃんの部屋から自分の部屋に戻った俺は大切な本を入れた紙袋を胸に抱きしめてズルズルと座り込んだ。



俺の翔ちゃんの本だ。

俺のなんだよ…。

誰にも触らせねぇんだよ…。





翔ちゃん……。



会いたいよ……。






スマホをポケットから出して翔ちゃんの名前をタップした。