最近、ローマ法王がよいことを言いました。「ヨーロッパは病んでいる。年老いた老人のようにヨーロッパは活力がなくて病気である」このような事を発言しています。鋭い見方です。
EUには、もう活力がないと発言されているのです。人間は年老いてくると活力は衰えてきます。ヨーロッパも年を取りすぎたのです。「暴れまくった17世紀・18世紀の青年期を過ぎて、だんだん文明の退廃が進んでもう病んでいる」という状態になってしまったのです。
人間も同じです。「病んでいる」と言う状況はどのような事なのかと言うと、生きる目的がなくなったということなのです。生きる目的がなくなったら老人です。高倉健も死ぬ間際に「もう死にたい。誰にも会いたくない」と言っていたのです。
癌だったので凄く痩せてしまって、2人くらいしか会わなかったのです。葬儀などして顔をみられると、痩せ衰えている姿を見られたくないのです。それを見せないようにしてひっそりとお亡くなりになったのです。これは大事なことです。
高倉健は「朝鮮人」と言われていたのです。ところが、全然違うということがわかったのです。お父さんは海軍軍人です。商売をやって裕福な家に生まれたのです。お母さんは鎌倉幕府の北条家の流れです。やはり純粋日本人でなければ、なかなかあのような人は出てこないと思います。
商売も同じです。長年商売をやってくると青年期を過ぎて、壮年期に入り、老人になってくるのです。病んでくるのです。それを病まないように、「如何に維持して永遠の若さを保っていくのか?」ということが、商売の非常に大事なポイントになってくるのです。
それを経営陣がよく分かっていて、「企業も老(お)いないように」「老(ふ)けないように」「停滞しないように」ということを考えていくことが経営のコツだと思うのです。人間というものは、必ず病んでくるのです。必ず人間は飽きてくるのです。
僕に言わせると、そういうものとの戦いが「人生」なのです。女房にしてもそうです。「もうお前の顔を20年も30年も見ているのだよ」と必ず飽きてくるのです。向こうもそう思っているのです。毎日・毎日、同じ亭主の顔を見て、「飽き飽きしたわ。夢も希望もない」という事になるのです。そう思わせないように演出と努力が必要です。
年を取って老けていくということは、自然の摂理です。自然の摂理=[spontaneous]というのです。しかし、そうならないように智恵を使っていくということが大事なのです。家庭を維持していくとは、そのような事です。
男から言うと「家庭の事なんか、考えたくないよ。余分な事だろう」と思うけれども、維持していかなければいけないから常に新鮮なもの、新しいもの、飽きさせないようにやっていくのです。
例えば、社員も同じです。同じ店にいて朝から晩まで同じ事をやって今日も終わって、今日も帰ります。本人は同じ事をやっているつもりなのですが、だんだん薄汚れてくるのです。真っ白い若い青年の時はそれでいいのですが、それが年を重ねて40・50・60代になってくると、くすんできてしまいどんよりと曇ったような感じになってしまうのです。
客商売の場合は、全員がどんよりしていると店全体もどんよりしてしまい、お客もどんよりしてしまいダメになってしまうのです。「パッとフレッシュ! 爽快な感じをどのように出していくのか?」ということが大事です。それは大変です。これが経営の一つの勘所です。
「どのように飽きないでやるのか?」これは、人だけではなく自分もそうなのです。自分もだんだんと年を取っていくのです。「人生を飽きさせないために、どのようにしたらよいのか」ということに、自分を持っていかなくてはなりません。
「俺は人生にも飽きてしまった」などと、バカな事を言っているものではありません。「どうしたら、飽きないで人生を送れるのか?」、「毎日・毎日、楽しい」「毎日・毎日、希望に燃えて楽しい!」というように、どうしたらその気になるのかということが大事なのです。
僕の年になったら、みんなジジイですが、僕はそうならないように考えながらやってきているのです。家庭もそうです。子供も飽きさせないのです。飽きさせないためには、お金も適当に必要で、お金も使うのです。
ローマ法王が言うように、ヨーロッパは病んでしまってもう理念がないのです。今後、ヨーロッパは何を持って立ち上がるのでしょうか。ヨーロッパの信仰の中心は、ローマ法王ですが、法王にそのような事を言わせるということは、「神の道を誰も求めていない」ということなのです。
中心者はよく分かるのです。「お前達は、私を求めていないな」求めていない部分が「病んでいる」という言葉になるのです。ヨーロッパに再び燃えるような信仰というものはないのです。
しかし、人間は信仰を求めるものなのです。だからイスラム国が成立するのです。移民したイスラム教徒の人々は、ヨーロッパのキリスト教国に飽きてしまって膿んでしまい、もう退廃しているのです。だから、新しい「イスラム国」なのです。イスラム原理主義です。「おお、そうだ。これなのだ。我々も色々な文明に進んできたけれども、イスラム原理主義に帰るのだ!」と、過激なほど刺激になるのです。
ですから、ヨーロッパの世界で馳せ参じて「行きたい!」という事になるのです。それともう一つ、新しい国を造るということは、壮大な事業です。世界を見てみると帰っていくべき原理がどこの国にもないのです。
中国? 何にもありません。韓国? 何にもありません。帰っていくべき原理が何もないのです。それこそ、イギリスは女王陛下がいますが、年老いてヨボヨボです。アメリカも病んでしまって、黒人の青年射殺問題で、もう100カ所以上、暴動が始まっています。大暴動になると言われています。「州兵が何十万人も出動するのではないか」と言われているのです。
暴動というのは、体制に対する恨みです。押さえつけてくる体制に対して、「こんな事はないだろう!」という爆発的なエネルギーが暴動になるのです。暴動が起こるということは、体制側も悪いのです。アメリカは、もう何も中心になってまとまっていくものがありません。
大統領などアメリカの中心になるわけがありません。本来なら、WASPですからホワイト・アングロサクソン・プロテスタントがアメリカの原理だったのですが、その原理もすでに拭い去られて今やWASPの原理などありません。アメリカにキリスト教原理主義はもうないのです。
ヨーロッパに起きてきた、このキリスト教原理主義は、カトリックに対して起きてきたのです。カトリックは教会を中心にした勢力です。「教会に神が降りてくるのだ」このような考え方なのです。ですから、「天まで届くような教会をつくらなければいけない。天に届くような教会を造っていけばいくほど、神に近くなっていく」という考えがゴシック建築の基本的な考え方です。
そこに神の代理人として神父がいます。神の子供という意味で「神父」という名前を使います。それが神の代理人として人間を支配するのです。人間が神に会いたければ、教会に行って神父に会い、神の国を知ることなのです。このような考え方が信仰です。
ところが、時代がだんだん進むと信者に免罪符を発行して「この御札を持っていると、天国へ行ける」とか、懺悔と言って「私こんな悪いことをしました」と言って信者に告白させたのです。秘密を握った神父は、それをエサに女を犯しまくったのです。如何にひどいことをやっているか、『カサノバ回想録』に書いてあるのです。
懺悔をさせて懺悔の後でスカートをまくって女を犯してしまうのです。すると神父は「これで罪が消える」と言うのです。いたるところでそのようなことが行われたのです。『カサノバ回想録』に書いてあるのです。
そのようなものに反発して、「神は教会と神父を通して人間に語りかけてくるのは間違いではないか? バイブルがあれば教会と神父はいらないのだ。バイブルと直接結びつくのが人間なのだ。我らは神というものが神父を通しているという考えを捨てる。バイブルを通して直接神にアタックする」と考えたのが、プロテスタントです。これが、ドイツに生まれたマルティン・ルターのプロテスタンティズムです。
このプロテスタントの考え方は凄いのです。「我々はこの地上を神の世界のようにするのだ。美しい国にするのだ。労働というものは、神聖なものであり、神に対するご奉仕が労働ということなのだ」と考えたのです。
プロテスタントは仕事を一所懸命やります。「徹底的に綺麗にします。この世界を神の世界のような美しい所にしていくのだ」それが信仰なのです。これが、プロテスタントの原点です。アメリカの近代的な発展は、このプロテスタントの思想があるからです。それをマックス・ウエバー(1864年―1920年)が見抜いていたのです。
プロテスタントは「一所懸命に働くのは、神様に対するご奉仕だ」と考えていたのです。ですから、お金も使いませんから貯まります。人を騙したり悪い事はしないで、非常に真面目で敬謙な神の信者がプロテスタントです。
そのプロテスタントは、ムダな事はしないで働くだけなので、自然に資本が蓄積できたのです。できたお金が、キャピタリズムと言って大きな資本力になってきたのです。アメリカからプロテスタントを抜いてしまったら、アメリカはゴロつきの国になってしまうのです。
今はまさにそうなっています。陰謀をしかけて人殺しをして、工作をして、世界をかく乱の方向へ持っていくなど、プロテスタントの考えにはないのです。古き良き時代のアメリカは、WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)のことを言うのです。今はそんな思想はありません。カトリックもプロテスタントもどんどん減ってしまいそんな思想はアメリカにはないのです。
(続く)
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朝堂院大覚 剣道と神道 2014 ・6・5
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