愛蔵書☆雑誌「改造」をお見せします | 無料塾「中野よもぎ塾」のブログ

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こんばんは、塾代表の大西ですニコニコ

仕事が一段落ついたので、今夜はこんな投稿を。



これ、昔日本で出版されていた「改造」という雑誌です。私が学生時代に手に入れた愛蔵書。
実は13日の授業で生徒たちに見せようと思っていたのですが、台風で流れてしまったので、ここでチラ見せ。
(塾にはまたの機会に持っていきますよ~)

「改造」は、1919年から1955年まで出版されていた、オピニオン&文芸誌です。
出版社は改造社という、今はもう出版業務をやめてしまった会社です(ただ、書店に業態をかえて存在はしています)。

「改造」が生まれる少し前、ロシアでは、封建的な社会や第一次世界大戦によって苦しくなった経済状況に不満を抱いた労働者たちや、兵士としてかり出された農民たちが立ち上がり、ストライキなどを起こします。これが「ロシア革命」の始まりです。
ロシア革命についてはここでは説明を割愛しますが、これによってロシアは資本主義から社会主義へと変わることになります。

そんなことがあったよ、という情報が日本にも入ってきて、ちょうど「改造」創刊時、日本の多くの人が、政治とか、社会問題とかに興味を持つようになってきていました。
日本も今のままの仕組みでいいのか? 俺たち何か損してないか?
労働者の権利がちゃんと守られるためには、何が必要なんだ?
みたいなことを、多くの人が一生懸命考えたんですね。

そんな中で、政治や社会問題を扱う「改造」は、ヒットを飛ばしたそうです。

その目次の一部をチラ見せします。



真ん中のほうに、「五・一五事件」という見出しが3つありますが、これは中学生の皆さんの社会の教科書にもきっと載っていると思います。ここでは詳しく書かないので、チェックしてみてください。
この号が発売されたのは、昭和8年。つまり1933年です。
五・一五事件が起こったのは1932年ですから、ちょうど1年後の号ですね。
その事件を振り返って、ジャーナリストの清沢洌(きよさわきよし)さんと、左派的立場にいた歴史家の田中惣五郎さん、弁護士であり政治家にもなった清瀬一郎さんが、それぞれの意見を書いています。
3人目の清瀬さんは五・一五事件の被告側弁護人を務めた人でもあります。だから見出しが、「五・一五事件の弁護に立ちて」となっています。

今の教科書の説明とは違って、当時の人がこの事件をどう考えていたのか、どう感じていたのかということがわかる面白い記事です。

目次にはその横に「創作」とあって、いろいろな作家さんの小説や戯曲が載っています。
一番左にあるのは、皆さんもご存じ、川端康成の名前。
『散りぬるを』という作品です。
ある男が出来心で、ある姉妹を殺してしまったという事件が起こり、この犯人の男の心理模様を、主人公である小説家があれこれ妄想するというようなお話です。
これは、新潮文庫の『眠れる美女』などに収録されている、短めのお話です。

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「改造」にはこうした有名な文豪たちの小説、それも書き立てほやほやのものがたくさん連載されているんです。
川端の他にも他にも谷崎潤一郎の『卍』や、志賀直哉『暗夜行路』などが有名でしょうか。
谷崎と芥川龍之介は、この雑誌で文学論争を繰り広げたりもしています。今ならツイッターとかネットの掲示板とかを使ってああでもないこうでもないと論争ができますが、当時の文豪は雑誌の誌面を使ってそういうことをやっていたんですね。

なので、日本文学を勉強すると、「改造」という名前はしょっちゅう目にするようになります。
それで私も古本屋などを探してまわって、少し買い込んだわけです。

こういうのをパラパラめくって読んでいると、まるでタイムスリップしたかのような感覚になります。
雑誌には、その時代、そのときの空気感がものすごくタップリ含まれているんです。
(だから私は、70年代とか80年代とかのファッション誌を見たりするのも好きです。)

近代のものであれば、このようにいろいろと当時の雑誌も残っているので、歴史の勉強は教科書だけでなく、こういうものを見てみるのもよいかもしれませんよね。

オマケです。
この号の裏表紙。



最近話題の、あの「理研」(理化学研究所)が、ビタミンの広告を打ってます。
このときすでに、サプリメントみたいなものがあったんでしょうか。
ね、面白いでしょ。