『新しい「教育格差」』を読みました | 無料塾「中野よもぎ塾」のブログ

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こんばんは、塾代表の大西ですニコニコ

今日は、こんな本を読みました。

新しい「教育格差」 (講談社現代新書)/講談社

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無料塾とは関わりの深い、教育格差の問題。
私自身、知らないこと・知っておきたいことが多い問題なので、関連する本をいくつか買ってみたのですが、その中の1冊です。

目次は以下。

第1章 中高一貫校が生みだす「公立校格差」
第2章 学校間・生徒間の格差
第3章 教員間の格差
第4章 校内暴力とモラルの格差
第5章 携帯いじめと「共感力」の格差
第6章 男女の格差
終章 学力テストの歴史をひもとく


著者の増田ユリヤさんは、私立の高校で非常勤講師として働いていらっしゃる方のようです。

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1、2章は学校間の格差の話題を中心として、「学力とは何なのか」「大学まで行けばそれでいいのか」といった問題を投げかけてくる内容になっています。
高校進学率は95%、そして大学全入時代に突入した今、社会の中で高校や大学で学ぶこと(通うことではなく)の「意味」をどう捉えていくべきなのか……そんなことを考えさせられました。

私自身、大学での勉強は完全に「趣味の延長」として捉えており、社会人になったら活かすということはほとんど考えずに通っていました。
今思えばとても贅沢に時間を使ってしまったと思いますが、大学に入り、一人暮らしを始め、たくさんの人と出会い、体育会の部活に入っていたことからので多くのOBから社会のことを聞き、海外にも出かけ、アルバイトも頑張りました。
そういう4年間があったことは、社会人に移行するためのステップとして、私には必要だったのかもしれないとも思います。

このことを「大学自体では役立つことをほとんど学んでないじゃないか、親にカネを払わせて!」と言われれば、これはもう言い訳のしようがありません。
私は日本文学科に通っていましたので、今の出版関係の仕事はリンクしないとも言えませんが、売れる文章の書き方、売れる本の作り方というのは大学では習っていません。
ただ、本は講義でも趣味でもたくさん読んだ4年間だったので、そこは少し役に立っているのかもしれませんが……。

なんだか、ここまでの章では悶々とさせられました……。

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3章では非常勤講師という仕事の大変さ、みたいなことが中心になっていたように感じました。
ひとつ印象に強かったのは、非常勤ではない専任の教師が、高校生に向かって「将来は一部上場の大企業か、専任教師になれ」と指導をしていたというシーン。

これ、私の家庭教師先の教え子の通っていた公立中学校でも似たような指導がされていたことがあったんです(ここまで露骨な言い回しではありませんが)。
その中学校が配っていたプリントでは、正社員か公務員がイチバンだ、というような価値観を教え、働き方の多様性については何も触れられていませんでした。
非正規雇用という働き方は問題だ、ということは書かれていても、能力を活かして稼ぐために、あえて非正規雇用として働いているケースなどには一切触れられていませんでした。
そういうケースを、知らないのかもしれませんが……。

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4章、5章では、いじめの問題が取り上げられています。
4章では公立中学校の部活でのいじめの話。
話にはよく聞きますが、「ホントにそんな親いるの?」という親が続々登場。

ただ、私も実際に、「私が怒られるから、そんなことしないで!」という叱り方をしている親を見たことがあります。
これからの親・学校の教育テーマとして重要なのは、相手を思いやらせる「共感力」なんだろうなと本を読んで思いましたが、それは「親や子が互いに(狭い世界の中で)共感する」ことではなく、「世の中で関わりを持っていく身内以外の人に、共感できる心」を育てることなんだと思います。

5章ではネットいじめの話。
私は高校生の教え子に「LINEいじめ」の相談を受けたことがあり(クラスでいじめがあるのに気付いてしまい、どうしたものかという相談でした)、答えに困窮したことがあります。
単純に「止めろ」とも「見て見ぬ振りをしろ」とも言えず、自分だったらどうするかということをあーでもないこーでもないと伝えてみました。
結局、いじめるほう・いじめられるほうのどちら側にもつかず、「両者といつも通りに仲良く話す」という関わり方をする選択をしたようで、いじめはすぐに収まったようでした。

ただ、ネットいじめというのは思春期がポケベル時代だった私にとっては、かなり難しい話でした。

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6章は、男女間の格差の話。
子供の能力の差というよりは、シングルマザーの話のほうがより顕著に格差を物語っていると感じました。

7章は、これからの学校教育のあり方を考えるようなまとめの内容。

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著者さんはフィンランドの教育についてもよく調査されており、全般にわたってフィンランドの例もたくさん紹介されていました。
フィンランドと日本では、価値観も経済環境も税のシステムも違いますから、一概に比べられるようなものではないと思いますし、日本でも同じやり方が成功するとは限りませんが、さすが教育大国と呼ばれる国だけあって、学ぶことの本質に迫る面白い取り組みがいろいろあることがわかりました。

別に学校でやらなくても、まずは中野よもぎ塾のような市民団体でフィンランドのようなことをやったっていいわけだよね、面白そうだし、、、とも思いました。


さてさて、次は大学教授さんが書いた本か、評論家さんが書いた本あたりを読んでみます!