寝室のドアをパッと開けて、おじさんの転がるベッドにドスンと乗った。
ふわりと俺を見る柔らかい顔に、同じように笑いかけて言う。
「ねぇ、ラーメン食べに行こうよ」
優しいアンタは俺の誘いを断ったりしないから。
「なんか、ガイジンさんのやってるラーメン屋さんあるんだって。面白そうだから行ってみようよ」
「んじゃ、行ってみるか」
「うん」
あの日のラーメンは、ネタになるような面白い味でもなく、普通に美味しかったよね。
値段はかわいくなかったけど。
ネタになるからいいじゃんって言った俺に「払ったの俺だかんな!」って、ちょっとコントみたいな顔してたね。
あの日のこと思い出すと、ちょっと笑えてくるんだ。
俺たち、またあんなふうな時間を持てるのかな?
それっていつなんだろうね?
アンタの夏休みに俺はたまには合流出来る?
きっとみんなついてきちゃうけど、いいよね。
その日は嵐の夏休みにしちゃえば。
そんなこと思うんだ。
「なぁ」
「なぁ」
「なぁって。おい、和也」
すっかり思い出の中に居た俺。
ゆらゆら揺らされて、見えたのは智の顔。
「出前の兄ちゃんどこ?」
「ん?...ああ、いつもの一通で迷ってる」
「マジ?あ、ほんとだ」
俺のスマホには出前の兄ちゃんの足跡。
じーっと横からその画面を見てる智は少し笑ってる。
俺もこれ見てるの好きなんだけど、この人も好きなんだよね。
ほら、こんな所も俺たちはひどく似てる。
届いたラーメンは担々麺と味噌ラーメン。
あの日のラーメンとは違うけど、俺達にはいつもの味で、1番落ち着く味。
ズルズルすする俺たちの目線の先には、きっちりスーツを着こなした我らがキャスター翔さん。
ビジュアルも最高で、智は「翔くんやっぱりカッコイイよなぁ」なんて、親みたいな顔してる。
「年越しそばじゃなくて、なんつーんだろうなこういうの」
「てか、蕎麦じゃないよね?」
「中華そばって言うんだから良いだろ?」
「あー、まあ、そうっすね」
「んで、なんつーのこういうの」
また、変なことにこだわり出したよ。
この人納得いくまでこの口尖らせた顔してんだろうなぁ。
「んー、改元越し?そば?」
「あー」
「なに?不満?」
「いや、そんでいいや」
ズルズルと麺をすする音だけが響いた。
改元って瞬間。
画面の翔さんを見ていたら、グループメールがブイブイと鳴りだした。
「改元おめでとーう!!」
「翔ちゃんお疲れ様ー!
改元おめでとー!!!」
「あ、翔さんお疲れ様」
潤くんも、相葉さんも楽しそう。
俺と智もメールを送って、それからチュッとキスをして「令和もよろしく」って言い合った。
画面の花火も綺麗で、俺たちはまだ丼に残ってる麺をすすった。
おしまい( * ॑꒳ ॑*)