朝から海で遊んで、あっという間に帰る時間が迫ってきた。
シャワーを浴びて、近くのお土産屋さんへ寄ってから帰ろうってお父さんが言って。
車を海の家の駐車場に停めたままで、海沿いに並ぶお土産屋さんを見て回ってた。
お昼前の真夏の太陽はジリジリと肌を焦がすように暑くて、僕は少しボーッとしてたんだ。
お土産屋さんの古いクーラーは少し騒がしい音を立てて風を吹き出して、僕はその前で目をつむった。
汗をかいた身体がスーッと冷えて気持ちいい。
少しスッキリした頭で目を開けると、すぐ隣にいたはずの姉ちゃんが居なくて、向こうの棚を見てたお父さんとお母さんも居なくなってた。
あれ?どっかほかの棚見てるのかな?
そう思ってお店の中をくるっと回ったけど、その小さなお店の中のどこにも両親も姉ちゃんもいなかった。
僕は慌ててお店の外に出て、いくつも並ぶお土産屋さんの、さっき見てきた方とは逆のまだ見ていないお店に飛びこんだ。
キョロキョロとお店の中を見回すけど、お父さんもお母さんも姉ちゃんもいなくて。
声を出すことは出来なかった。
迷子だって思われちゃうし、恥ずかしいしって、そう思って。
僕は並んでるたくさんのお土産屋さんを、次々と覗いてキョロキョロした。
とうとう一番端っこのお店まで来てしまったけど、お父さんもお母さんも姉ちゃんもいなかった。
どうしたら良いのかもう分かんなくて、でも、もしかしてさっきいたお店にやっぱりいたのかもって思って、戻ろうと思ったんだけど…もうどのお店がそのお店なのかわかんなくなってた。
どうしよう。
僕、このままずっとお母さん達に会えなかったら…そしたらどうやって生きてくんだろう。
ご飯とか寝るところとか、どうすればいいの?
どんどん不安になってきて、ちょっと泣きそうで。
だけど泣いたら現実になってしまう気がして、店先で地面を睨んでた。
ドンッ
突然、何かが僕の背中にぶつかってきて、よろけて転けそうになった。
転びそうになった僕の腕をぎゅっと捕まえた暑い手。
「わりぃ。大丈夫か?」
俯く僕の顔を覗き込んだのは、真っ黒に日焼けした綺麗な目の男の子だった。