散々泣いて、ようやく泣き止んだ俺を優しく包むように抱きしめてくれてるさとし。
泣いてる間、ずっと髪や俺の腕を撫でて、手を握ってキスをして、俺をあやしてくれた。
「ごめん....」
「鼻、赤くなってんな」
「え?マジ....」
妙に気恥ずかしくて誤魔化すようにごめんって言ったら、俺の顔をマジマジと見つめるから余計恥ずかしくなる。
赤いって言われた鼻を隠すように、グーにした手を鼻の頭に置いたら、クスッとさとしが笑う。
なんか悔しくなって俯いたまま睨んだら、今度は少し呆れたような顔で俺を見る。
「お前は本当にさぁ....」
って、小さくため息をついたさとし。
なんなのって思ってじっと顔を見つめてたら、ダメだって小さく呟いたさとしの唇が俺のに重なった。
柔らかく押し当てられて、温かい舌が忍び込む。
抱き寄せられた腕に身体を任せると、ぎゅっと強く抱きしめられた。
こんなに安心するキスも、こんなに気持ちいいキスもこの人だから。
「お前、本当に気をつけろよ」
長いキスの後に、なぜか拗ねたような顔で文句を言うのは、俺のさとし。
まだ入籍もしてないし、メンバーにも事務所にも報告しなきゃだし、ファンのみんなにだってちゃんと報告しなきゃいけないけど。
それでも、今日からこの人が俺の旦那さんだ。
俺の、さとしだ。
俺が欲しいって、俺がいいんだって言ってくれたこの人の手を取って、ずっとこの人を愛していく勇気がやっと持てたから。
本当はずっと怖かった。
この人を手に入れることが、怖かった。
この優しい人は、きっと俺を全力で愛してくれるから、俺は弱くなってしまうんじゃないかって思ってて。
だから俺たちのためにも、嵐のためにも、二人になっちゃイケナイってずっとずっと罪悪感があった。
ちっちゃい頃からさとしが好きで、そばに居たくて、ずっと付き合ってきたけど、それでも消えない罪悪感は、いつも俺の心を凍りつかせた。
いつかこの手を放すから、それまであと少しそばにいさせてくださいって、言い訳しながらそばに居た。
でも、違うんだね。
あんたが愛してくれる分、ううん、それ以上にきっと俺もあんたを愛するから、2人で強くなれるんだね。
そんな単純な事に、やっと気づいた。
素直じゃない俺は、たぶんこれからもこの人を困らせたりするだろう。
だけどこの人を愛することだけは諦めないって誓う。
俺には、この人しかいないって分かったから。
この人にも、俺だけだって分かったから。
「今日からよろしく。旦那さま♡」
「ぶほっ」
コーヒーを飲んでるさとしに、目一杯可愛い顔して言ってみた。
吹き出したコーヒーで慌ててるさとしが、可愛くておかしくてケラケラ笑ってたら、後ろから抱きつかれてそこら中をくすぐってくる。
バタバタ暴れながら転がって、疲れた俺たちは床の上で大の字になった。
「ずっと、こうしてような」
自然に重なった手をぎゅっと握られて。
うんって答えて俺からも握りかえした。
おしまい