智が用意してくれたお風呂に入って、その後ゆっくりゆっくり愛されて目覚めた朝。
温かい腕の中でふと思った。
この人、もう少しゆっくりしてくるって言ってたんじゃなかった?
あー、俺のこと心配で早めに帰ってきてくれたんだって気づいて、ついでに思い出すのはたぶんひとりで翔さんが帰ってくるのを待ってる相葉さんのこと。
どうしようかなぁって思ってたら、いつの間にか目を覚ましてた智が、俺の顔をじーっと見てる。
「おはよ.....」
「ん」
いつも眠そうなのに、今日はちょっと違う。
「ちょっと翔くんに電話してみるか」
「へ?」
スマホを手に取るとサッと操作して耳にあてた。
「おー、ちょっと聞きたいんだけど、翔くんいつまでそっち?」
「うん。.....そっか。いや、別に。.....うん、かずの家....うん。........じゃあな。ゆっくり休んでな」
翔さんの声は全然聞こえないけど、なんか優しい顔して話してた。
耳からスマホを離すと、スッと綺麗な指先で画面を撫でて通話が終了する。
ずっと俺の顔を見たまま話してた智が
「翔くん、明日帰って来るらしいぞ」
「え?なんで?」
「お前、それが知りたかったんだろ?」
「うん」
俺のことなんか、俺よりよくわかってる智。
やっぱり今日もお見通しで、俺の知りたかったことを教えてくれる。
「で?相葉ちゃんとこ行くのか?」
「来てもらってもいい?」
「ここにか」
「......ん」
「じゃあ俺は部屋で新しいリールの手入れするかな」
「智、ありがと」
「また明日来るからな」
「ん。......待ってる」
くしゃっと頭を撫でられて、相葉さんと同じ癖だなんて思ってたら、チュッとキスされて。
2人で遅めの朝ごはんを食べて、智はタクシーで帰っていった。
相葉さんに飯行こって電話したら、たまってる録画見るから忙しいとか言ってるけど、迎えにいくからって言って一方的に電話をきった。
優しい相葉さんはきっと今頃何だよって、ブツブツ文句を言いながら準備してるんだ。
ふふって笑いながら車のキーを持って、サッと玄関を出た。
相葉さんのマンションの手前の角を曲がると、ちょうどマンションの入口に相葉さんが現れる。
ん、さすが。
カーステレオからは相葉さんの好きな曲。
「泣くなよ」って言ったらくすんと鼻をすする音がした。
「てかさ、35の大人が他人の家来る時にコレ、持ってきます?」
「いーじゃん、いーじゃん!たまにはさぁ、こういうレトロなゲームで遊ぶのも大事だって!画面ばっか見てないでさ!」
本当に何考えてんだろね。この人は。
「かず」
「なに?」
白い骨のかたちの棒を取ってると相葉さんが話しかけてくる。
かずって、なんだよ。
一緒にいてくれてありがとうなんて、今更なんだよ。
当たり前じゃん。
「......ずっと一緒だろ?」
まーくんって、声に出さずに心の中でつけ足す。
『ワンワンワンワンワンッッ!!!』
「うひゃあああああっ!!!」
「わあああっっ!!!」
失敗した相葉さんと一緒に驚いて悪態をつく俺に、大好きって言ってもたれてくるまーくん。
「知ってるよ。ばーか」
って、答えたら
「ばかって言う人がばかなんですー」
ってプリプリ怒ったふりでくすぐってくる。
ぎゃあぎゃあ言いながら床を転がって、笑い疲れて大の字になって並ぶ。
あー、なんかこれユニット曲のアレみたいって思った。
「よし!今度はカルタしよ!俺が読み手ね」
「は?2人でカルタは無理だろ?」
「大丈夫!俺が読んで、取るから」
どや!って顔してるまーくんは子供の頃のまんまで。
おかしいだろって思ったけど、んじゃやるかって2人でカルタ。
案の定相葉さんの1人勝ち状態で、なんか俺たちらし過ぎて楽しかった。
ね、相葉さん。
いつだってさ、隣どうしだよね。