~風見鶏~
「あ.....」
「どうしました?大野さん」
「...ん、何でもね」
ロケで行った工房の帰り道、ちっちゃな洋館の屋根に風見鶏がゆらゆら揺れてた。
久しぶりに見たなぁって思ったら、昔かずと見たのを思い出した。
あれはまだ俺たちがデビューして間もない頃。
早めにダンスレッスンが終わった日。
合宿所に帰るもんだと思ってたかずが、今日は実家に帰るって言い出して、なんとなくついてっていいか?って聞いたんだ。
ちょっと寂しそうな横顔が見えて、放っておいちゃダメな気がした。
「なんにも面白いことないよ?」
「いいよ」
「変なの」
「なにが?」
「おーちゃん、俺のことそんなに好きなの?」
「おー、好きだぞ」
「おーちゃんのバカ...」
かずの町まで、乗った電車。
いつもと違う景色が見えた。
駅からまっすぐ家まで帰ると思ったら、かずは散歩しよって言い出して、川沿いの土手の上を2人でゆっくり歩いてる。
綺麗な横顔に見とれてたら、ポーンと靴を飛ばしたかず。
飛んでく靴の向こうに、風見鶏が見えた。
ちょっと寂しそうな横顔が見えて、放っておいちゃダメな気がした。
「なんにも面白いことないよ?」
「いいよ」
「変なの」
「なにが?」
「おーちゃん、俺のことそんなに好きなの?」
「おー、好きだぞ」
「おーちゃんのバカ...」
かずの町まで、乗った電車。
いつもと違う景色が見えた。
駅からまっすぐ家まで帰ると思ったら、かずは散歩しよって言い出して、川沿いの土手の上を2人でゆっくり歩いてる。
綺麗な横顔に見とれてたら、ポーンと靴を飛ばしたかず。
飛んでく靴の向こうに、風見鶏が見えた。
何してんだ?って思った時にはケンケンしながら靴を取りに行こうとしてて、途中でズルっと転んだ。
「かずっ!」
「いったぁ」
「どっか怪我してないか?」
「うー、どうだろ?わかんない」
手や足を持って、傷が無いか確かめてた俺に
「ね、おーちゃん。俺の靴取ってきて?」
可愛く小首をかしげて甘えてくる。
本当にコイツは.....。
「仕方ねぇな」
口ではそう言ったけど、こうやって甘えられるのは好きだった。
コイツは誰にでも距離が近いけど、あんまり甘えたりはしない。
たまに他の奴に甘えてるのを見ると、何故かムカムカしてその後かずを俺の隣に座らせてた。
「ほい」
「ありがと」
靴を履かせてやって、手を取って立たせた。
こんな時かずはされるがままで、それがやっぱり俺を少しイライラさせる。
俺以外のヤツにも足とか触らせてんのか?
そう考えて自分の思考がおかしい事に気づく。
ありがとって笑ったかずが、この町の景色に溶けて、俺の知らない色になる。
俺が出会う前のかずはどんな少年だったんだろ?
どんな風に笑って
どんな風に泣いて
どんな風に過ごしてきた?
夏の夕焼けはキレイな茜色で
かずの瞳はキャラメルみたいで
俺はかずが好きで
なぁ、お前は?
俺のこと好きだよな?
土手に咲く花を見ながら階段を降りて、かずの通った中学校にコソッと入る。
校庭の隅っこにある鉄棒は少し低いような気がするけど、ぼそぼそ話すかずの中学生活が目の前に流れるような。
「かず、キスしていい?」
「なんで」
「好きだから」
パッと耳まで赤くなったかずが可愛くて、返事を聞かずにそっとキスをした。
「おーちゃんのこと...好きだよ」
ふわりと笑って空を見上げた。
やっぱり俺の知らないかずになった。
切なくて愛しくて
初めての本気の恋は、夏の風になった。
あの時、風見鶏の揺れるのが俺みたいだって思ったんだ。
懐かしくて、校庭の鉄棒の錆びた匂いを思い出す。
「かず、今から行っていいか?」
おしまい♡