甘い香りのココアをずずっと飲んだら、鼻に甘い香りが抜けてなんかほっとした。
温かいココアが身体を温めてくれる。
いつもかずと2人で飲んだよなって思って、もう一回あんな風に穏やかな気持ちでココア飲めるんかなって不安になる。
かずはどういうつもりなのか、俺のことをまるっと無視してる。
姿も声も届いていないような態度。
合わない目線。
わざと.....じゃないよな?
いや、もしかして..........。
俺があんなだったから、信じてくれてない?
それどころか、もしかして俺のこと試してる?
そんなこと考えちゃダメだって思うのに、悪い方にばっか考えてしまう。
飲み終わったココアのコップを洗って水切りカゴに伏せたら、ご飯の炊き上がる音が炊飯器から聞こえた。
相葉さんがいろいろ出してくれた具や海苔。
相葉さんと並んで黙々とおにぎりを作った。
かずは何の具が好きなんだろう?
俺の握ったおにぎりでも食ってくれるんかな?
相葉さんの作ったのしか食べないとか、言うんじゃないかって、ネガティブにも程がある想像が胸をつく。
俺、そんなん言われたらさすがに笑えない気がする。
嫌な考えを振り払うようにひたすらおにぎりを握った。
山盛りになったおにぎりは、あの日の櫻井さんのおにぎりよりずっと綺麗だったけど、かずの目に美味しそうに見えるかなって思った。
もっと.....愛情込めて握れば良かったな。
余計なこと考えずに、かずが美味しく食べれるようにとか、幸せな気持ちになったらいいなとかそういう気持ちで握れば良かった。
出来上がったおにぎりを見てたら、かずが風呂から出てきた。
何も言わず腕を伸ばして、相葉さんにしがみつくみたいに抱きついた。
なんだよ。
やっぱり俺は無視かよ.....。
一瞬、イラッとした。
そう言えば、出てくるの遅かったよな。
俺、自分の気持ちばっかりでかずのこと見えてなかった。
ダメだ.......落ち込む。
髪の毛やって
まーくんかわかして
甘えるかずの声。
子どもみたいに、母親に甘えるみたいに相葉さんにぴったりくっついてる。
俺にやってもらえって言われても駄々をこねるように、相葉さんにしがみついてる。
「おにぎりちゃんと食べて。食べないともう作ってあげないよ?」
相葉さん.....その言い方はって思ったけど、相葉さんの顔色も良くない。
そういやまだ、怪我治りきってないんだったって思い出す。
少しは相葉さんも休みたいのかもしれないって思って、勇気を振り絞ってかずに声をかけた。
「かず、ほら一緒におにぎり食おう。腹減っただろ?うまいぞ。相葉さんは顔色悪いから、休ませてあげないと。な?」
「………」
カチンと固まったように動かなくなったかず。
やっぱり、俺のこと信用してないのか?
それでも必死で笑顔を作ってかずに笑いかける。
そんな俺に相葉さんはお願いねって言って、階段をのぼっていった。
かずはまた、人形みたいに無表情でふらっと揺れていた。