馴染んだかずの部屋。
物が少なくて、ちょっと寂しい部屋。
使い込んだタンスから、かずのパジャマ代わりの部屋着と下着を取り出す。
そんなことも迷いなく出来るくらい、お前と俺はそばに居たよな?
なのに、この距離はなんなんだろう?
かずは俺を必要としてないんじゃないかって何度も思っては、いや、そんな訳ないって思い直す。
そんなに?
そんなに不安にさせてたのか?
あの時、かずは確かに不安定だったし、ちょっと様子もおかしかったけど、俺の言葉に頷いてたし、笑ってたから大丈夫だと思ったんだよ。
待ってるって、言ったじゃん。
俺のこと待っててくれると思ってたよ。
なのになんで?
俺って透明人間なのか?って、バカなこと思うくらいお前の目には俺なんて写ってないみたいで、すげえ怖いしムカつく。
勝手だけど、自分にもお前にも。
いつの間にかぎゅっと握りしめてたかずの服を持って、部屋を出た。
じっとしてたら、余計なことばっかり考えちゃいそうで怖かった。
コンコン
「かずー?入るぞ、着替え持ってきたから.....」
ノックに返事がないから、もう風呂に入ったんか?って思ったけど、一応声をかけてドアを開けた。
風呂の扉の前。
上半身裸のかずがボーッと立っていた。
「あっ!うわ、ごめん」
慌てて背中を向けて、かずのハダカを見ないようにする。
かずからの返事は無いけど、なんか必死で言い訳をした。
「あの....その...ほら、相葉さん。相葉さんがかずの着替えとタオル用意してって言ったから。だから、その.....見るつもりじゃなかったんだよ....」
聞いてるのか聞いてないのか、やっぱり返事は無くて。
妙にがっくりした時、後ろでごそごそ動く気配とバサッと布が床に落ちる音がした。
マジかよ。
かずの裸なんか見るわけにいかねぇって、慌てて着替え置いて、ドアを開ける。
一瞬だけ肩ごしに振り返ったら、お風呂のドアの前で真っ裸のかずと目が合った。
カッと頭に血が上りそうになって慌てて目を逸らす。
心臓バクバクしてて、マジで勘弁して欲しい。
かずにはなんの表情も見えなくて、それが小さい棘みたいに心に刺さった。
真っ赤になって照れたり怒ったりするかずに会いたい。
強烈にそう思った。
おにぎり作るんだよなって思いながら、台所に戻った。
本当は相葉さんの顔なんて見たくないけど、それは八つ当たりだってわかってる。
俺ってマジでちっせぇ。
落ち込みながら台所に足を踏み入れたその時、俺にもわかるくらい相葉さんの背中がビクッと揺れる。
自分を守るみたいに抱きしめた姿勢で振り向いた相葉さんの顔は真っ青で、思わず俯いてしまってぼそっとごめんって謝った。
「………ご飯今炊いてるから、もう少し待ってて」
「………うん」
顔色の悪い相葉さんに、イラついてた気持ちが少し落ち着く。
何考えてるのかさっぱり分かんない相葉さんがココアを作ってくれる。
「………ごめんね」
「………え?」
突然謝られて、何のことか分からなかった。
何が?
なんで?
わかんなさすぎて、混乱する。
それを見透かしたようにココア飲もうかって、相葉さんが言った。