嬉しそうに唇を触りながらテーブルの上の食べ物を見て、それからおいらを見て
「ありがとう。本当に嬉しい。これ、作り方調べたの?」
「いや、船長から教えてもらった」
「そっか。じゃあ、きっと美味しいね」
「なんだよ、じゃあって」
「だって、船長から教えてもらったもの、いつも美味しいじゃないですか」
「あー、まぁそうだけど」
「ふふ。拗ねてんの?」
「拗ねてないわ」
「そう。俺、手洗ってきます」
クスクス笑いながら、ご機嫌なかずは洗面所のある方に消えていった。
おいらは冷蔵庫からビールを出して椅子に座る。
ほとんど同時にかずがリビングに戻ってきて、いつものようにおいらの左側に座った。
向かい合わせに座ったこともあったけど、寂しがり屋のかずは、触れられないことが寂しかったみたいで、気づいたら隣で並んで食べるようになってた。
おいらも、かずに触れられることが当たり前になり過ぎてて隣にいないとちょっと変な感じがするし、スカスカするから並んで食べる方がいい。
なんとなくかずの太ももに左手を置いて、過ごしてるから、ご飯の時も同じようにしてる。
たまに、かずが手を繋ぎたい時があるらしくて、そんな時はおいらの左手とかずの右手を繋いでる。
かずのふわふわの手がおいらの手をぎゅっとすると、胸をキュッと掴まれるような気がする。
柔らかくて、温かくて、包み込まれるようで、それはかずそのもののような。
愛しくて抱きしめたくてしかたなくなるんだ。
そんなかずと一緒に『いただきます』をして、ご飯を食べ始める。
「さとし、コレ美味しい」
「お?マジ?」
鯵をパクッと齧ってもぐもぐして、それから目を真ん丸くしたかずがおいらに話しかける。
隣からおいらの方を見て、くるくるの目で話してる。
おいらも鯵に箸を伸ばしてパクッと食べたら、唐揚げみたいなカリッとしたところと、ネギの甘酸っぱいソースで少し柔らかいところがあって、ちょうど良い味。
「上手いな。コレずっと食ってられるかも」
「ね。美味しい」
嬉しそうに笑うかず。
食べることへの熱が極端に低いかずが、珍しく美味しそうにパクパク隣で食べてる。
あー、幸せだなぁって、顔がにやけてくのを抑えることなんて出来なかった。