さかのぼること15分前、家に帰ってきた私を待ち構えてたのは、玄関に仁王立ちのそらだった。
玄関に入った私を見るなり大声で叫び出したそら。
「あーーーーー!」
「そら、うるさい」
「お前えええええええ!」
「もー、なによ」
「ぶあっかやろおおおお!!」
「なっ!バカヤロウってなによ!」
「バカだから、バカって言ってんだよ!」
「なによ!バカって言う人がバカなんだからね!」
玄関で、いきなり怒鳴られてバカヤロウってなんなのよ。
怒るとは思ってたけど、ここまでとは思わなかった。
「お前っ、その髪っ....なんで」
「あー、この金髪?良いでしょ、似合ってるってみんな褒めてくれたし」
「みんなって誰だよ」
「カメラマンさんとか、編集さんとか」
「は?」
一瞬で空気が変わった。
そらが私のこと睨んでる。
「もういいでしょ。中入らせてよ」
「今、なんつった?」
「だから、中入らせて」
「違う!その前!」
「あー、カメラマンさん?」
「なんだよ、カメラマンって」
「読者モデル始めたの。まりんに誘われて」
「は?聞いてない」
「言ってないもん」
「お前、バカなのか?」
「はあ?」
「何なんだよ!どうゆうつもりなんだよ!」
「そっちこそなんなの!」
「いい加減にしろよ!」
手首を掴まれて、壁に押しつけられる。
さっきからずっと怒鳴ってるそら。
そらの目が怒りに染まって、力の込められた手首がジンジン痛む。
「痛い。放して!」
「嫌だ。モデル辞めるなら放す」
「嫌!辞めない」
「辞めろ!」
「いや!」
「お前!何のつもりだよ!」
「うるさい!そらには関係ない!」
「関係ないわけあるか!」
「もう!私のことなんてほっといて!」
ほっといてって言葉に、一瞬緩んだそらの手を振り払って、自分の部屋に逃げ込んだ。
傷ついた目をしたそらが私のこと見てたけど、なんにも言えなかった。
ごめんね、そら。
少しだけ時間が欲しいの。
傷つけるつもりじゃないんだよ。
少しだけ、少しだけだから。
待ってて、そら。