落ち着き始めた潤くんは、少しずつ色んなことを話してくれるようになった。
昔みたいに笑うようになって、飲んだりしながら話したり、うちに泊まりに来たりするようになって、いつしか一緒に眠るようになった。
手を繋ぐ時はあった。
寂しそうな潤くんに抱きしめられて、ひとつのベッドで眠る日もあった。
優しい腕の中で、頬に優しくキスされることも。
でも、それだけ。
若い頃特有のどうしようもない葛藤を、苛立ちを抱えて苦しんでた潤くんに寄り添っていただけなんだ。
少しずつ明るくなって、ギラギラしてても人を傷つけることで、自分を切りつけるような、そんな潤くんじゃなくなっていった。
それでも潤くんは俺の家に泊まりに来ていたし、俺も潤くんの家に行ったりしてた。
そしたら、潤くんがうちに頻繁に泊まってることを聞いた智が
「潤だけずるい」
とか言い出して、俺が潤くんと約束してない日には、智が泊まりに来るようになった。
「ねえ、なんでうちに泊まりに来んの?」
「え?やなの?」
「嫌じゃないけど、なんでかなあって」
「潤は?なんで泊まってんの?」
「は?」
「潤が泊まってるなら、俺が泊まってもいいだろ」
「いいけど.....」
「いいけど、なんだよ?」
「べつに、なんでもない...」
いつもこんな感じで、ちゃんとした理由は聞けたことがなかった。
それだけじゃなく、俺の家に自分の着替えを置いてくようになって、本当に何のつもりなんだろうって思ってた。
その関係が変わったのは、潤くんのドラマが始まって、視聴率がどんどん上がって行ったあの頃だった。
いつもは、毎週くらい泊まりに来てた潤くんが、そんな時間も取れないくらい忙しくなって、ドラマに打ち込んでる姿は本当にかっこよくて、俺、本当に嬉しかったんだ。
潤くんのモヤモヤも、少しはれるかなって。
悩んでる潤くんが、沢山の人の中でキラキラ輝いてたから。
とても光っていたから。
あの日、楽屋でぐうぜん二人きりになって、忙しすぎる潤くんはウトウト眠ってしまった。
風邪をひきやすい潤くんに、置いてあった薄い毛布を掛けてあげたら、聞こえてきた寝言。
「ず....かず.....好きだ.....」
ドキッとした。
心臓がバクバクして、かあーっと顔が赤くなるのがわかった。