「智くんが、気にいってくれてよかった」
「うん。すげえ綺麗だった」
「ニノちゃんも、楽しかったみたいだね」
「はい、楽しかったです。すごく綺麗で、1秒ごとに変わっていく空の色も太陽の光の筋も、本当にすごかった」
「和、口開いてたもんな」
「もー。いいでしょそれは」
「よくない。めっちゃいい顔してたもん。おいら、アレで1枚描ける」
「智くん、マジで?」
「マジマジ。超いい顔してたからさあ、絶対描きたいんだ」
初日の出の感想とか話してたら、いつの間にかさとしの絵の話になっていってて、車の中は俄に賑やかになった。
『あーーー、寒いっ』
って言った相葉さんの声を合図に車に戻った俺たちは、持ってきたお弁当をみんなで食べ始めた。
相葉さんと翔さんの車は、後ろの座席が新幹線みたいに向き合うようになってて、4人で向き合ってお弁当を広げた。
相葉さんのお弁当は、さすがパン屋さんって感じのローストビーフを挟んだサンドイッチと、保温ジャーに入ったクラムチャウダーのスープ。それから、一口サイズのアップルパイ。
俺の作ってきた弁当と、1人分ずつ交換して分け合って食べた。
さとしも翔さんも旨いって、パクパク食べてくれて、作ってきたかいがあったなあって思った。
さとしは、絵の構想が幾つか浮かんでるみたいでご機嫌だし、来て良かったな。いや、連れてきてもらえて良かった。
翔さんと絵の話をしてるさとしを見ながら、あの日の出を思い浮かべた。
太陽が生まれてくるみたいな神秘的な光景。
暗闇に、少しずつ色が付いていくその景色は、きっとずっと忘れられないだろうな。
「ねえねえ、初日の出にお願い事した?」
相葉さんが嬉しそうに話してる。
「雅紀は?何お願いしたの?」
「内緒ー。言ったら叶わなくなるんだよー」
「なのに、智くんに聞いたの?」
「ん?あ、そっか。ごめーん」
「ふふふ」
昨日からの疲れはやっぱり残ってたみたいで、お腹がいっぱいになったら、あっという間に睡魔が襲ってきた。
みんなの話す声を聞きながら、隣に座るさとしの肩にもたれ掛かったら、そのまま夢の中に引き込まれた。