俺を引っぱったのはヒナで。
さとしはヨコに捕まってる。
「ほんま、頼むわ。うちでチューはやめてくれ」
「そうやで、どんな顔しとったらええのかわからんわ」
「ごめん」
「うるせえな」
心底困った顔のヨコと、俺を羽交い絞めにしてるヒナの困った時の声に、なんとなく申し訳なくなって謝ったら、俺の向かい側でヨコに捕まってるさとしがムッとしてる。
「さとし?」
「あー!もう、ニノはほんまにおーちゃん好きやなあ」
「なっ!何言ってんの!」
「お前が1番に気にすんのは、いっつもおーちゃんのことやないか」
「そっ、そんなことっ」
「あるやろ?」
「.............」
「ニノ~。素直に言いや」
羽交い締めの姿勢から、後ろから抱きしめられるみたいな姿勢で、顔を覗き込まれてなんか恥ずかしくて困る。
さとしのこと、好きなのなんて俺にとっては当たり前のことだし、いつだってさとしが1番なのもやっぱり当たり前で。
だけど、それをこうやって言われると、俺がさとしにベタ惚れって言われてるみたいで、すごい恥ずかしい。
あーもう、耳が赤くなってるのが自分でもわかる。恥ずいー!
堪らなくなって、俯いたらさとしの低い声が聞こえた。
「ヒナ.....お前、誰のモン触ってんだ」
「へ?」
「それは、俺の。触っていいのも、抱きしめていいのも、俺だけだから」
「おーちゃん.....」
「そいつ、放せよ」
笑ってるのに、低くて本気の声。
ヒナが困惑しながらも、ちょっとだけ怯えてるのがわかる。
それでも俺を放す前
「ニノは、そんでええんか?幸せなん?」
優しい声で、小さい頃から知ってる声で言ってくれるから、たまにはちゃんと答えるよ。
「ありがとな、ヒナ。俺は、ずっとさとしのなんだよ。それが俺の幸せで、1番欲しい物だから大丈夫」
「そっか、ほんならええわ」
スッと放された腕。
振り返って、ほっぺにチュッてした。
「かずっ!!」
怒ったさとしにグイッと抱きしめられたけど、いいでしょ?たまにはね?
だって、ヒナも大事な幼なじみだから。