何?その顔。
なんでそんな顔して、撮られてんの?
あんたがそんな顔するなんて、おかしいでしょう?
さっきまでは、ニコニコ笑ってたのに、スタジオに入る前に、俺のマネージャーが言った一言にひっかかって、あんたの機嫌は急降下。
昨日は二人で過ごして、今朝からラブラブビームが凄くて、嬉しかったのに。
迎えに来た俺のマネージャーは、スタジオにもうすぐ着くってタイミングで、新しい仕事のことを話し出した。
「二宮さんに、ドラマのオファーが来てます。原作のあるもので、とても人気の作家さんのお話です。広報課のカメラ担当者が、同僚に惹かれて、困難を乗り越えて結婚するって話なんですけど、お受けする方向で良いでしょうか?」
「あー、ちょっと考えさせて。」
「了解しました。お返事、2~3日中にお願いします」
「はーい。了解です。」
その、俺の返事に、この人はひっかかって、今あんな顔してる。
すぐに断らなかったから?
ちょっと考えるのも、気に入らない?
恋人が居るだけじゃなくて、結婚までする役だから?
そんなの!
あんた人のこと言えんのかよ。
あんたが出る新しいドラマは、初めてのラブ要素が売りで。
ドラマが終わって、すぐに撮影が始まる映画の、あんたの役は、
奥さんの尻に敷かれる凄腕忍者。
奥さんが居るだけじゃなくて、尻に敷かれるってなんだよ!
どうゆうつもりって......聞きたい
けど、聞けるわけないだろ?
あんたが、良いって判断して受けた仕事に、俺がごちゃごちゃ言える訳ない。
俺が、そんなこと聞いたら、あんた気にするだろう?
嫌なんかなって、断ろうかなって、そんなこと出来るわけないのに、なのに悩むでしょうよ。
そんなのは、俺は嫌なの。
あんたの邪魔はしたくない。
あんたにいつも笑っててほしい。
なのに!
なのに!
なのに......あんたは
そんな顔して.......ずるいよ。
俺はいつも、あんたを受け入れる。
俺のなかに。
俺が、堪らなくあんたを欲しい日に、あんたがそんな気無さそうで、機嫌悪そうなら、俺はあんたに寄り添って、あんたの望む俺になる。
ひとりのベッドで、燻る身体を、自分で抱きしめて眠ることになったとしても。
それでも...
俺は、あんたを好きで、あんた以外は要らなくて。
ふにゃんと笑ってる、あんたの顔を見たいって思うんだ。
好きだよ。
おーのさん。