日本版EUA制度法案・イベルメクチン等既存薬緊急使用許可制度の必要性 | 中島 かつひとのブログ

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日本版EUA(Emergency Use Authorization)制度法案:コロナ感染症に対するイベルメクチン等既存薬緊急使用許可制度・正式名:新型インフルエンザ等治療用医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案について、その背景、事実関係、内容についてご説明致します。

 

この立法は実態として厚生労働省の「COVID19診療の手引き」に「適応外使用」として掲載された薬剤(事実上厚生労働省は緊急使用許可している)について、その供給を確保し、万が一の副作用健康被害を患者と医師の自己責任とはせず、給付の対象として救済しようとするものです。

米国には、国家安全保障の観点から、連邦食品医薬品化粧品法(FDCA)の第564条(セクション564)に基づき、米食品医薬品局(FDA)が緊急時に未承認薬などの使用を許可したり、既承認薬の適応を拡大したりする制度があります。米国EUA制度を参考に、通称:日本版EUA制度法案と致しました。



 

イベルメクチンで例えるなら、「COVID19診療の手引き」に記載されながら、供給が制限されており、現場の医師が使用したくてもイベルメクチンを調達できない状況が続いています。

また、万が一の副作用発生時に現行の副作用健康被害救済制度の対象にならないと厚生労働省は答弁しています(過去例外あるにもかかわらず)

加えて薬事承認の起点は製薬企業の申請であり、イベルメクチンの販売元である世界的大手製薬企業・メルク(MSD)が新薬開発にメリットを有し、既存薬の申請に製薬メーカーとしてのメリットを有さない現状では、イベルメクチン(商品名・ストロメクトール)は承認へのスキームにすら乗り得ない状況にあります。

製薬企業主導の薬事承認システムでは、既存薬はどんなに効果がある薬であろうと研究機関だけの治験では、いつまでたっても承認に至りません。

緊急時・非常時にこのような状況では、救える命も救えません。

救急時・非常時には製薬企業の申請起点ではなく、国が起点となり、特に既存薬に関して、緊急使用許可を認めることで、目の前の患者を救う選択肢を広げ、また研究機関による治験・臨床研究を後押しし、承認への道筋を作り上げることが必要となります。

また、万が一の副作用発生時には、国が健康被害救済を行うことも必要です。

(現状の副作用健康被害救済制度は製薬企業の搬出金により成り立っている)

 

イベルメクチンは40年前から毎年世界各国約3億人の人々に投与され、我が国においては疥癬症、腸管糞線虫症で保険適応になっている薬剤であり、副作用は広知で、安全性は確立されています。

厚生労働省はイベルメクチン等の既存薬を「COVID19診療の手引き」で記載した以上、現場の判断に放り投げず、記載した責務を果たすべきです。

 

以下、薬事承認の課題、立法趣旨等についてご説明いたします。

 

1)    立法の必要性・現状の課題

《医薬品の安全性・有効性の確認》

現行の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の下では、ある薬剤を特定の疾病の「医薬品」として製造・販売するには、薬事承認を得る必要があります。

薬事承認を得るには、その薬剤が疾病の「医薬品」として安全性・有効性を有していなければなりません。

安全性・有効性を確認する手続きが治験、臨床試験であり、通常は第1相から第3相の三段階で確認することになります。

 

《早期の承認手続き》

三段階の手続きを経るためには、通常は長い時間がかかります。

一方で今般の新型コロナウィルス感染症パンデミックのように、人の生命・健康を守るためには、長い時間を待っていられない場合もあります。

現行の薬機法には、海外で実用化された医薬品を早期に承認する手続き(今般の新型コロナワクチン等)「特例承認」や重篤な疾病について明らかに優れた有用性のある医薬品を優先する手続き「優先審査」、また世界に先駆けて日本で開発され、治験の早い段階で明らかな有効性が見込まれる革新的な医薬品を早期に承認する手続き「先駆け審査指定制度」、重篤で有効な治療方法が乏しい疾病だが稀な疾病のために十分な被験者を確保できない場合の手続き「条件付早期承認」などが設けられています。

 

《薬事承認手続きの課題》

薬機法にはこれらの承認のための手続きが設けられていますが、いずれの手続きも、全て製薬早期企業が申請しなければ承認への道は開かれません。

つまり、製薬企業に承認を申請するメリット(医薬品販売による利益)がなければどんなに優れた薬剤であっても薬事承認は得られません。

製薬企業にとって既存薬を申請するメリットは新薬申請に比較してかなり限定的となるものです。

 

2)    立法の内容

《「緊急指定医薬品」指定制度の導入》

国内や海外での研究の結果から治療薬として有望でありながら、製薬企業が熱心に取り組まない薬剤も「医薬品」として使用できるようにするために、厚生労働省のイニシアティブによる「緊急指定医薬品」指定制度を導入することとしています。

厚生労働省が示している「COVID19診療の手引きに」(現在は第5版)には「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」10種類が記載されており、適応外使用で保険給付の対象となることも通知をしており、実質上、厚生労働省が緊急使用を認めているものです。

 

《「緊急指定医薬品」指定の効果と候補》

「緊急指定医薬品」として指定された薬剤は、保険適応や万が一の副作用による健康被害への給付の対象となることとしています。

なお、「緊急指定医薬品」の指定は、あくまで緊急時のものであり、その薬剤が薬事承認を得るには、別途、薬機法に基づく薬事承認手続きを経る必要があります。

現時点で「緊急指定医薬品」として指定する薬剤は「COVID19診療の手引き」に記載されている薬剤を想定しています。

 

《有望な薬剤の調査研究》

また、厚生労働大臣による指定の前提として「緊急指定医薬品」として指定できる薬剤に関する情報の収集・整理・分析・提供を厚生労働大臣に義務付けております。国内外の研究で有望な薬剤が示された場合には、早急に「緊急指定医薬品」として使用可能となることを検討できることとしています。

 

《期間限定・迅速な指定停止》

この「緊急指定医薬品」は薬機法に基づく薬事承認とは異なる緊急時の指定制度であることから、使用出来る期間を限定しています。

また万が一の副作用が発生した場合の迅速な指定停止の仕組みを設けてあります。

 

《需要ひっ迫時の増産要請と生産体制整備支援》

さらに、緊急時には「緊急指定医薬品」の需要がひっ迫することも予想されることから、製薬企業には「緊急指定医薬品」の増産要請や生産体制整備への支援措置を定めることとしています。

 

3)    立法の効果

現行の制度下でも「適応外使用」という形で、新型コロナウィルス感染症の患者に対して医師の判断で薬剤を使用することは可能です。

この立法による実働的な効果は、副作用健康被害発生時の救済の仕組み整備と需要ひっ迫時の厚生労働大臣よる要請や医薬品生産体制整備支援に法的根拠を与えるものです。

 

国内外での研究結果から「COVID19診療の手引き」に掲載されるに至った薬剤は、新型コロナウィルス感染症患者、特に自宅や宿泊施設で療養されている方々に提供される医療の選択肢を増やすために活用されるべきであるという考え方から立法の提案に至りました。

 

国会は会期末を迎えますが、新型コロナウィルス感染症収束の見通しは未だ予断を許さない状況であり、国会は延長し、日本版EUA制度法案の審議を行うことを政府・与党には強く求めます。