先週月曜日Hackney Picturehouseでアレックス・ガーランド監督『Civil War / シビル・ウォー』(2024)を最大スクリーンで観た。どうしても大画面で見なければならない映画があるが、この映画もその一つ。戦争映画は席が揺れるような爆音で仮想の戦場に没入できるから。チケット購買時に席を選んでいるとき「この映画すっごくいいよ」と(ちょっとティモシー・シャラメ似の)映画館の人に勧められたし。ともかくアレックス・ガーランド作品は見るようにしている。ダニー・ボイル監督、レオナルド・ディカプリオ主演『ザ・ビーチ』では原作者、『28日後…』(2002)の脚本、カズオ・イシグロ原作『わたしを離さないで』(2010)では脚本、初監督作品『エクス・マキナ』(2015)、『アナイアレイション 全滅領域』(2018)監督、TVシリーズ『Devs』監督など。今回『シビル・ウォー』の内容がアメリカの内戦と知り、イギリス人が描く突き放したアメリカ像はアメリカ人が描くそれとは違うので、余計興味が増した。さて、あらすじは…

 

 権威主義的な米国政府と地域派閥の間で内戦が勃発。 3期目を務める大統領は、勝利は目前に迫っていると主張する。 著名な戦争写真家のリー・スミス (キルスティン・ダンスト) は、ブルックリンで自爆テロからジャーナリスト志望のジェシー・カレン (ケイリー・スピーニー)を救う。 リーと同僚ジョエル (ヴァグネル・モウラ)は、ワシントンD.C.が陥落する前に大統領にインタビューし、写真撮影するためにワシントンD.C.に旅する計画を立てる。 昔リーの指導者だったサミー (スティーヴン・ヘンダーソン) は、テキサスとカリフォルニアの西部軍(WF)が集結しているシャーロッツビルまで同行してくれと頼む。 リーはためらいながらも結局は同意する。 リーには内密でジェシーも自分を連れて行くようジョエルを説得する。(英語版Wikipediaより翻訳)

 

Picturehouse小冊子の映画評は…

 想像したまえ、もし米国が自国に反旗を翻し国民に内戦を宣言したらどうなるか。戒厳令が布告され、邪魔するものは国家の敵と見做される。民間人やジャーナリストも批判や攻撃のかっこうの標的となる。この恐ろしい提案は突飛な話に聞こえるかもしれないけれど、世界中で起きた最近の出来事や、アメリカが1860年代に内戦を経験したことを考慮すれば、可能性の範囲を超えたものではないだろう(少なくとも高評価の英映画監督アレックス・ガーランドの頭の中では)。アクション・スリラー『シビル・ウォー』は脚本家兼監督ガーランドにとって最も野心的な映画である。

 

 もしトラが起こった場合アメリカがどこへ行ってしまうのかわからない以上、この映画が提示するディストピアはあり得ない話ではない。感度の高いクリエイターはかなり正確に未来予知もしてみせるし。映画の中では出身地を正直に答えると下手をすれば殺されてしまう緊張感。「香港出身」と答えたジョエルの友人記者は「中国人か!」と言われ即射殺。実際香港出身の同僚などは中国と混同されると激怒するんだけど、そんなことはお構いなし。地面に掘った巨大な穴の中に死体が折り重なる様はホロコースト映画で既視感があり、もしかすると世の中はこのままこういうディストピアに突入して行ってしまうのかもしれない…という恐怖に震えた。


アメリカ人の感覚では州がヨーロッパにおける国に近いらしいので、”What kind of American are you?"という質問はあり得る感じ