Netflix制作のミニシリーズ(全8話)でアレックス・ガーランド監督の『Devs』(2020) をBBC iPlayerで観た。どうしてBBCがNetflixの番組を放映しているのかよくわからないけれど、3月半ばからオンエアされていたらしい。アレックス・ガーランドは初めは小説家として『The Beach』でデビュー、本作は『トレインスポッティング』や『スラムドック・ミリオネア』で有名なダニー・ボイル監督が映画化し、主演は若きレオナルド・ディカプリオだった。個人的にはストーリーが面白いし、オルタナティブ・コミュニティの描写がちゃんとできている、ユートピア転じてディストピアなど内容が濃いので評価しているけれど、ディカプリオのアイドル映画扱いで一般的には評価は高くない。その後、ガーランドは映画監督に転じて『エクス・マキナ』『アナイアレーション-全滅領域』などSF話題作(問題作?)を連発している。何れもストーリー展開から目が離せない、結末を見た後でモヤモヤして考え込んでしまう映画。で、今回のミニシリーズもやはり見終わったあとに、「この結末って何だかな」と思ってしまった。あらすじは…

 香港出身のコンピューター・エンジニアのリリー・チャン(ソノヤ・ミズノ)はロシア人の恋人セルゲイと同棲中で、二人はAMAYAという名のハイテク企業に勤めている。ある日セルゲイはAMAYAの最先端研究所であるDevsの研究員に抜擢される。だが、その初日にスクリーンに映るコードを目にして驚愕し、時計型のメモリーでその情報を盗み出すが、それは後の悪夢への扉を開く行為だった…

 哲学や物理学に詳しくないので、解釈が間違っているかもしれないけれど、要は自由意志と決定論という哲学的なテーマを基にしている。過去も未来もすべて決定していて、コンピューターで解析すれば過去も未来を見ることができるようDevsを開発したAMAYAのCEOフォレストと研究員ケイティに対し、自由意志を駆使して状況を打開しようとするリリーという対立構造の中で物語は展開していく。決定論に伴い多世界解釈をするエンジニアたちはこの世界で死ねば他の自分が生きている世界に移れると信じる。ほとんど、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のよう。

 撮影で使われた街の背景や建物も注目に値する。撮影はほとんどサンフランシスコ内だとか。Amaya本社ビルの撮影はカリフォルニア大学サンタクルス校のマッケンリー図書館(1968)で設計は地元建築家のJohn Carl Warnecke。緑あふれるキャンパスはさすがアメリカの大学。因みにDevs研究所ビルは VFX(視覚効果)で、インテリアは英マンチェスターで造られたセット、設計は映画やTV番組のデザインを手掛けるSpace Studios Manchester*。素人目には何故Devsキューブの中に入るのに、わざわざ電磁フィールドで浮く橋というか箱で移動するのか疑問。日本的感覚からすると、地震時にもしも電源が切れたら箱が落ちてしまうから安全設計上あり得ないと思うけど…重力の克服は建築のテーマとして重要なので気になった。

*出典:https://www.broadcastnow.co.uk/drama/devs-the-making-of-bbc2s-fx-drama/5149028.article

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