BBC iPlayerでヤン・ゴズラン監督・脚本のフランス映画『Black Box / ブラックボックス:音声分析捜査』(2021)を観た。IMDb評価も7.2と高いし、主演は『婚約者の友人』でミステリアスだが上品で魅力的なフランス男を演じたピエール・ニネ。今回は打って変わって、航空機事故のブラックボックスの音声分析を担当するコンピューターオタクっぽい役。でも、頼りなさげでちょっと可愛い年下夫の設定がやけに似合っている。さて、あらすじは…

 

 マチュー(ピエール・ニネ)は若く才能あるブラックボックス音声分析官。失踪した上司の代理で新型航空機の致命的な墜落事故の背後にある原因を解決する使命を担っている。事件は当局によって終了されるが、マチューは証拠に何か問題があると感じている。録音テープをもう一度聞くと、いくつかの不穏な詳細に気づき始める。テープが改造された可能性があるのだろうか?上司の命令に反して、マチューは独自の不正捜査を開始。真実を求めるマチューの強迫的かつ危険な捜査は、すぐに彼のキャリアをはるかに超える脅威となっていくのだった…(IMDbより翻訳)

 

 昨年9月に旅行で行って以来、アナトミー・オブ・ア・フォール』をはじめとしてアルプス関連の映画が気になる。行きの飛行機がアルプスの山々の間を抜けて着陸するとき、山に墜落するのでは…と不安だったことを思い出した。この映画では新型航空機がアルプスに墜落。国家機関のフランス航空事故調査局BEAが協力しているとあって飛行機好きにはたまらない映画かも。航空機事故のたびに回収されるブラックボックスの梱包を解く場面や音声分析場面などリアリティ溢れる映像も、サスペンス映画のストーリーの展開も共に成功している。しかも配役も良く、主役のピエール・レネは勿論のこと、航空業界で高い地位を得たばかりのマチューの妻ノエミ役ルー・ドゥ・ラージュもどこか仏大女優ジャンヌ・モローを彷彿とさせる。主人公マチューは本当はパイロットになりたくて、航空会社に就職したのに視力が悪いために断念し、BEA音声分析官になったという設定。実際、人の聴力には随分と差があるらしい、とシェアハウスに住んでみて初めて気づいた。乱暴にドアを開閉すると聴力が優れる人にとっては、大きな衝撃で飛び上がってしまうらしい。あの時自分は目が良いけれどに耳は全然良くないのだ、と初めて知った。建築的には失踪した上司の家であるパリ郊外の民家(元農家か?)の描写が珍しく興味深かった。

 

 フランス映画らしいストーリー展開で観客ウケ重視のハリウッド映画と一味違う点もこの映画の魅力となっていて、オススメ。